リーグ戦全勝の加藤女流三段が11連覇中の里見女流名人に挑む!<br>第47期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負展望

リーグ戦全勝の加藤女流三段が11連覇中の里見女流名人に挑む!
第47期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負展望

ライター: 宮本橘  更新: 2021年01月15日

第47期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負が1月17日(日)に開幕する。

今期五番勝負の日程は以下の通り。

第1局 1月17日(日)岡田美術館 開化亭(神奈川県箱根町)
第2局 1月24日(日)出雲文化伝承館 松籟亭(島根県出雲市)
第3局 2月7日(日)関根名人記念館(千葉県野田市)
第4局 2月15日(月)東京・将棋会館(東京都渋谷区)
第5局 3月8日(月)関西将棋会館(大阪府大阪市)

【リーグ全勝の挑戦者、今期3度目のタイトル挑戦】

今期の挑戦者は、トップ女流棋士10人が総当たりで争う女流名人リーグを9戦全勝の完全試合で制した加藤桃子女流三段だ。

加藤は奨励会在籍中の2011年に、女性奨励会員に出場資格があるリコー杯女流王座戦(第1期)に出場。五番勝負進出を果たすと、16歳にして女流王座を獲得した。その後は、同じく女性奨励会員に出場資格のあるマイナビ女子オープンのタイトル(女王)も獲得し、通算で女王4期、女流王座4期の8期を獲得している。タイトル戦登場回数は15回。現在25歳。1月12日現在の成績は19勝11敗(勝率 0.633)。紛れもないトップ女流棋士の一人だ。

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第31期女流王位戦五番勝負第2局での加藤女流三段

加藤は2018年にタイトルを失い、翌年に奨励会を退会。一時期は調子を落としていたようにも見えたが、女流棋士1年目の2019年度は勝率8割を記録し、変わらぬ存在感を示している。そして今期は、春にマイナビ女子オープンの挑戦者となり、西山朋佳女王を相手に第3局を終えて2勝1敗とリードするも、そこから2連敗で惜敗した。その直後の6月には、女流王位戦で挑戦者となり、里見と五番勝負を戦ったが、こちらは3連敗で敗れている。

結果は残せなかったものの、2度のタイトル挑戦は好調の証。今期3度目となるタイトル戦で最後の勝負を懸ける。棋風は居飛車党。切れ味鋭い攻め将棋だ。

【タイトル獲得数歴代最多タイ記録が懸かる女流名人】

迎え撃つのは現在28歳の里見香奈女流名人。清麗、女流王位、倉敷藤花と併せて四冠を保持する女流棋界の頂点に立つ存在だ。昨年度の女流名人の防衛では、女流棋戦の同一棋戦連覇記録を更新する11連覇を達成した。タイトル戦の登場回数は51回。獲得は42期。タイトル獲得数の歴代最多記録は清水市代女流七段の持つ43期。つまり、今期の女流名人を防衛すれば歴代最多記録に並ぶことになる。

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第46期女流名人戦五番勝負第3局で防衛した直後の里見女流名人

1月12日現在の里見の成績は22勝7敗(勝率 0.7586)。今期は6月に女流王位を防衛、8月に清麗を防衛、11月に倉敷藤花を防衛した。また、10月から12月にかけて女流王座に挑戦したが、西山朋佳女流王座を相手に五番勝負の第5局までもつれる激闘の末、惜敗している。棋風は振り飛車党。「出雲のイナズマ」の愛称で知られる通り、終盤力に定評がある。近年は受けも強さを増し、高いバランス力も評価されている。

【里見の振り飛車、加藤の居飛車の対抗形が予想される】

里見と加藤は、これまでに24回の対戦があり、里見が18勝、加藤が6勝となっている。このうち、実に21回がタイトル戦の番勝負での対戦だ。両者が激突した6回の番勝負を振り返ってみる。

第3期リコー杯女流王座戦(2013年)3勝1敗で里見が奪取
第7期マイナビ女子オープン(2014年)3勝1敗で加藤が奪取
第6期リコー杯女流王座戦(2016年)3連勝で里見が奪取
第7期リコー杯女流王座戦(2017年)3勝2敗で里見が防衛
第40期女流王将戦(2018年)2連勝で里見が防衛
第31期女流王位戦(2020年)3連勝で里見が防衛

6回の番勝負の戦績は里見が5勝、加藤が1勝。女流棋界の頂点に立つ里見が圧倒している。とはいえ、そもそもが番勝負で里見に勝った女流棋士は数えるほどしかいない。そうなると、1回でも勝った経験がある加藤にかかる期待値は高い。

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加藤は昨年度の五番勝負第1局で大盤解説会の聞き手を務めた

両者の棋風は、里見が振り飛車党、加藤が居飛車党ではっきりしている。戦型は、里見の中飛車に加藤が穴熊か左美濃で対抗する展開が予想されるところ。ただ、加藤は昨年6月の女流王位戦五番勝負で、3局とも居飛車穴熊で戦って3連敗している。それでも意地の穴熊で勝負するのか、新たな作戦に挑戦するのか、このあたりが見どころだ。

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第46期女流名人戦五番勝負第3局、感想戦での里見女流名人

両者ともに高い終盤力を持っているので、僅差で終盤に入れば大熱戦は必至。加藤が怒涛の攻めで寄せ切るか、里見が一瞬のスキをついてイナズマの寄せで切り返すか、手に汗握る攻防に期待したい。

宮本橘

ライター宮本橘

1990年から印刷プロダクションでライター兼デザイナーに従事。2009年に独立してフリーライターとなる。2010年、日本将棋連盟のネット中継記者(ペンネームは八雲)を担当。2016年より棋王戦の新聞観戦記を執筆。ほか、マイナビニュースで電王戦関連の記事を執筆

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