2020年最後の挑戦者決定戦は?12月下旬の注目対局を格言で振り返る

2020年最後の挑戦者決定戦は?12月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年01月26日

 コロナ禍にみまわれた2020年も終わりました。最後の大勝負となった棋王戦の挑戦者決定戦は第2局にもつれ込み、敗者復活戦から勝ち上がった糸谷哲郎八段が棋王戦では初の挑戦権を手にしています。

第46期棋王戦挑戦者決定戦第1局

【第1図は△2八とまで】

 第1図は第46期棋王戦挑戦者決定戦第1局(▲糸谷哲郎八段△広瀬章人八段)。角換わりから難解な戦いが続いていましたが、図の少し前に先手が抜け出して勝ち筋に入っています。▲4六銀が「玉は包むように寄せよ」の寄せで、後手玉の上部脱出さえ阻止すれば局面が分かりやすくなります。以下△4七飛に▲5三角成から即詰みに打ち取り、第2局へと持ち込みました。

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写真:睡蓮

第46期棋王戦挑戦者決定戦第2局

【第2図は△7七角まで】

 第2図は第46期棋王戦挑戦者決定戦第2局(▲糸谷哲郎八段△広瀬章人八段)。角換わり相早繰り銀から猛烈な勢いで終盤戦に突入しました。うまく局面をまとめ上げた先手が優勢で、▲6四桂が「要の金を狙え」の寄せ。以下△6六角成▲同銀右△4六銀に▲8五角とさらに数を足して、駒が入れば詰む形を作ることができました。以下も押し切って、2016年の第64期王座戦以来のタイトル戦登場を決めました。

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写真:生姜

第79期A級順位戦6回戦 三浦弘行九段VS斎藤慎太郎八段

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写真:虹

【第3図は▲2四歩まで】

 第3図は第79期A級順位戦6回戦(▲三浦弘行九段△斎藤慎太郎八段)。相掛かりからうまく立ち回った後手が優勢です。ここで△3一香が「下段の香に力あり」の厳しい一着。▲4四飛△同歩▲同角は仕方ありませんが、△3六歩と伸ばして3一香の威力を発揮することができます。以下▲3八歩△2八飛まで先手の投了となり、斎藤八段が5勝1敗で首位を守っています。

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写真:虹

第79期順位戦B級1組10回戦 永瀬拓矢王座VS山崎隆之八段

【第4図は▲4七金まで】

 第4図は第79期順位戦B級1組10回戦(▲永瀬拓矢王座△山崎隆之八段)。流行の兆しを見せる△3三金型早繰り銀からねじり合となりました。先手の攻めを受け止めて後手優勢です。△2四玉が「中段玉寄せにくし」の手堅い勝ち方で、入玉の含みも見せています。以下▲3六歩に△3二香とで確実に受け、後手玉は寄らない形です。昇級を争っている難敵を下し、山崎八段が悲願のA級に近付いています。

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写真:牛蒡

第79期順位戦B級2組8回戦 藤井聡太王位・棋聖VS野月浩貴八段

【第5図は△8四飛まで】

 第5図は第79期順位戦B級2組8回戦(▲藤井聡太王位・棋聖△野月浩貴八段)。雁木対急戦のねじり合いです。ここから▲8七銀△6四歩▲7六銀が「銀は千鳥に使え」の好着想。以下この銀は6五~5六と移動して中央を制圧する要の駒となりました。本局を制した藤井二冠は2度目の順位戦18連勝で、今期も7連勝と昇級目前です。

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写真:康太

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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