フルセットになったリコー杯女流王座戦五番勝負など12月上旬の注目対局を格言で振り返る

フルセットになったリコー杯女流王座戦五番勝負など12月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年01月25日

竜王戦は豊島将之竜王が4勝1敗で防衛。初のタイトル防衛を果たしました。また、フルセットとなった女流王座戦は最後の2局を逆転で西山女流王座が制しました。注目の銀河戦は藤井聡太王位・棋聖が初優勝を飾っています。

第33期竜王戦七番勝負第5局

【第1図は▲7九金まで】

第1図は第33期竜王戦七番勝負第5局(▲羽生善治九段△豊島将之竜王)。先手良しの将棋でしたが、逆転して後手の勝ち筋に入っています。△8八銀が「寄せは俗手で」の確実な攻めで先手の投了となりました。2枚のと金で挟撃態勢を築かれて先手は受けがありません。

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写真:日本将棋連盟

第10期リコー杯女流王座戦五番勝負第3局

【第2図は△7四歩まで】

第2図は第10期リコー杯女流王座戦五番勝負第3局(▲里見香奈女流四冠△西山朋佳女流王座)。相振り飛車の戦いです。「飛車先交換3つの得あり」で、▲8五桂の攻めを決行できます。歩を手持ちにしていることと、歩がいないので攻め駒を進めやすくなっています。以下△5四歩に▲9五歩△同歩▲9三歩と先攻することができました。形勢は難解ながら、先手が居玉のまま攻め切っています。

第10期リコー杯女流王座戦五番勝負第4局

【第3図は▲8六角まで】

第3図は第10期リコー杯女流王座戦五番勝負第4局(▲西山女流王座△里見女流四冠)。相振り飛車から後手がペースをつかみました。△7三金が「金は引く手に好手あり」の落ち着いた受けで、▲7五銀△5三銀と丁寧に指していきます。形勢は後手良しでしたが先手の勝負手が実り、結果は先手の逆転勝ちに終わっています。

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写真:常盤秀樹

第10期リコー杯女流王座戦五番勝負第5局

【第4図は▲2一飛まで】

第4図は第10期リコー杯女流王座戦五番勝負第5局(▲里見女流四冠△西山女流王座)。相振り飛車から先手優勢の終盤戦です。ここから△4一歩が「大駒は近付けて受けよ」の粘り。▲同飛成なら△5二銀と竜取りで受けることができます。△4一歩に▲7五桂と迫ってきましたが△7四銀が「桂頭の銀定跡なり」の受けで、必死のしのぎです。後手にとって苦しい時間の長い将棋となりましたが、最後は大逆転で西山女流王座の防衛となっています。

第28期銀河戦決勝

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写真:渡部壮大

【第5図は△2二同飛まで】

第5図は第28期銀河戦決勝(▲藤井聡太王位・棋聖△糸谷哲郎八段)。先手にもう一押しあればはっきり良くなりますが、具体的にどこに手を求めるか。実戦の▲4五歩が「角筋は受けにくし」の好手で、▲4四歩と突ければ1六の角が働いて攻めが切れる心配はなくなります。実戦は△7四歩▲8六角に△4五飛と取りましたが、▲3四銀△4四飛▲4五歩が「一歩千金」の攻めで、先手優勢です。以下は押し切って藤井王位・棋聖が銀河戦で初優勝です。

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写真:渡部壮大

第46期棋王戦挑戦者決定トーナメント

【第6図は△6七馬まで】

第6図は第46期棋王戦挑戦者決定トーナメント(▲糸谷哲郎八段△永瀬拓矢王座)。図は6八の馬を△6七馬と引いて好防に利かせたところ。本当なら△7九飛と打ちたいところですが、▲2四角△3三桂▲3一銀で詰んでしまいます。「歩のない将棋は負け将棋」で、歩があれば△3三歩の合駒が利くのですが。実戦は▲3九玉が「玉の早逃げ八手の得」で先手玉は安全になりました。糸谷八段が快勝で敗者復活戦を勝ち上がり挑戦者決定二番勝負へ。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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