ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2020年11月24日
西山朋佳女流王将に室谷由紀女流三段が挑戦した第42期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負。地元も同じ、幼馴染同士の対戦がタイトル戦で実現した。
まずは挑戦者決定戦から。女流五冠復位を目指す里見香奈女流四冠と室谷の対戦は相振り飛車に。
【第1図は▲2八玉まで】
激戦の終盤戦。後手玉にも危険は迫っているが、冷静に△2一香と数を足し、△3九銀や△2七香成からの詰めろを見せて先手玉は受けなしだ。以下▲8三歩成△同銀▲同飛成△同玉▲7四銀と迫ったが、△8四玉で一枚足りない格好で後手の勝ちとなった。難敵を下し、室谷は初の女流王将挑戦権を手にした。
将棋プレミアムより
第1局はおなじみとなっている宮崎県都城市「霧島創業記念館 吉助」にて。相振り飛車から先手の西山が強く踏み込んでリードを奪った。
【第2図は△4二同金まで】
駒得で手番を握っている先手が勝勢だ。あとは飛車や金を渡さないように攻めれば良い。実戦は▲6四歩△6二銀▲5一角と派手に決めにいった。以下△同銀▲6三金まで後手投了。△6一玉に▲8二飛と打って受けなしだ。西山がパンチを決めて先勝。
将棋プレミアムより
第2局は東京「将棋会館」にて。相振り飛車から今度は室谷がペースをつかむ。
【第3図は△7七歩成まで】
ここで▲6四歩が堅陣を生かした強い踏み込み。△6七と▲6三歩成△同銀に▲6四歩△同銀▲4五銀△1四飛▲2三銀と飛車を追い掛け、手がつながった。以下も△5八とに▲1四銀不成と強く踏み込み、そのまま攻め切って快勝。室谷が1勝を返し、決着は最終局へ。
撮影:日本将棋連盟
第3局も東京「将棋会館」にて。西山が先手となり、3局続けての相振り飛車になった。徐々に手厚い形を作り上げ、室谷が形勢をリードしていく。
【第4図は▲6六飛まで】
形勢は後手が大優勢。ここで△7六歩と打ち、△8五玉から入玉の姿勢を見せれば負けのない将棋だっただろう。実戦は△9七角▲8六銀△8八角成がつまずきの始まり。以下▲3三桂成に△同銀▲同馬△5四桂に▲1一馬が激痛。詰めろ飛車取りで急転直下の逆転となった。途中も後手の指し方は色々あったが、最も危険な順に突っ込んでしまった形で先手の逆転勝ちに終わった。
土壇場の大逆転で西山が防衛。室谷にとっては手中に収め掛かっていた初タイトルを逃す悔しい結果となってしまった。
撮影:日本将棋連盟
ライター渡部壮大