初防衛か、タイトル100期か? 第33期竜王戦七番勝負展望

初防衛か、タイトル100期か? 第33期竜王戦七番勝負展望

ライター: 飛龍  更新: 2020年10月08日

第33期竜王戦七番勝負は豊島将之竜王(叡王)への挑戦者が羽生善治九段に決まった。30歳の豊島竜王は竜王に限らない初のタイトル防衛が、50歳の羽生九段には通算100期目のタイトル獲得がそれぞれ懸かり、注目される。10月9日(金)から始まる七番勝負を展望してみよう。

対戦成績は拮抗

両者の戦いを占ううえで、対戦成績は1つの指標となる。昨年10月の第69期大阪王将杯王将戦挑戦者決定リーグ戦以来の対戦となり、その将棋に勝った羽生九段が17勝16敗と1つだけ白星を先行させた。拮抗しており、その点では今回の七番勝負も勝ったり負けたりが期待できようか。

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撮影:常盤秀樹

4度目のタイトル戦

両者がタイトルを争うのは、2014年の第62期王座戦(羽生王座が3勝2敗で防衛)、2015年の第86期棋聖戦(羽生棋聖が3勝1敗で防衛)、2018年の第89期ヒューリック杯棋聖戦(豊島八段が3勝2敗で奪取)に続いて4度目(肩書はすべて当時)。これまではいずれも五番勝負であり、2日制の将棋や七番勝負での対戦、豊島竜王のタイトルに羽生九段が挑戦するのはそれぞれ初となる。直近の両者のタイトル戦は豊島竜王が6度目のタイトル挑戦にして初めて戴冠したシリーズだったが、同時に羽生九段には今回と同様にタイトル100期が懸かるシリーズでもあった。豊島竜王はそれまで無冠のプレッシャーがありながら、世間の注目が羽生九段の記録に集まった点に気楽さを覚えたという。とはいえ、無冠は返上したもののタイトル防衛はまだ経験していない。自身、4度目の防衛戦となる今回、そろそろの期待も集まるだろう。

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2014年王座戦 撮影:牛蒡

羽生九段は未知数

豊島竜王は初戴冠以降、トップ棋士らしく一定の期間ごとに新たなタイトルに次々と挑戦し、獲得してきた。前期竜王戦のあとも叡王を奪取している。一方で羽生九段のタイトル戦登場は、2期前に失冠した竜王戦以来の2年ぶりとなった。これまでのキャリアを見ても、初のタイトル戦を除いてこれほどの期間を空けてのタイトル戦登場はなく、久々の大舞台でどのようなパフォーマンスを見せるのか。予想は難しいといえよう。前々期の竜王失冠から年が明けて決着したA級順位戦こそ豊島竜王に次いで2位の成績だったが、ほかにタイトル挑戦に近づいたのは今期竜王戦までない。その間、棋戦優勝は昨年のNHK杯将棋トーナメントの1回。その放映からは1半以上が過ぎた。コロナ禍の影響で対局中もマスク着用が予想され、羽生九段はそうした環境のタイトル戦も、50代に突入してからのタイトル戦も初となる。

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撮影:常盤秀樹

相居飛車のシリーズになるか

ともに矢倉、角換わり、横歩取り、相掛かりから定跡の枠にとらわれない力戦形まで、相居飛車全般を何でも指す。羽生九段の場合は振り飛車もレパートリーに含まれるが、両者の対戦で居飛車対振り飛車の対抗形に進んだ将棋は3局しかない。居飛車の流行の先端を試すシリーズになるか、温故知新となる形が持ち出されてくるか。直近の7局はすべて後手が勝っているのも興味深い。その点が戦型選択に何らか影響を与えるかどうか。

いまやタイトル戦が日常の豊島竜王と久々の羽生九段、ともに記録の懸かるシリーズに注目したい。

飛龍

ライター飛龍

日本将棋連盟のネット中継記者として関西将棋会館を中心に2013年11月から活動している。一般社団法人日本フォトロゲイニング協会登録監修者。

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