100期への挑戦 9月下旬の注目対局を格言で振り返る

100期への挑戦 9月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2020年10月23日

 千日手、持将棋を含め10局に及ぶ叡王戦七番勝負を制したのは豊島将之竜王。竜王と合わせ二冠に復帰しました。そして竜王に挑戦するのは100期目のタイトルを狙う羽生善治九段です。

第5期叡王戦七番勝負第9局

【第1図は△5九角まで】

 第1図は第5期叡王戦七番勝負第9局(▲豊島将之竜王△永瀬拓矢叡王)。角換わり腰掛け銀から華々しい攻め合いとなりました。図で▲3八飛と受けるようでは元気がありません。
▲2五桂の空跳ねが好手。△同歩に▲6二と△3七角成▲6三角△2三金▲4四歩が好手。△同歩なら▲2五飛が「飛車は十字に使え」で2三の金と8五の桂を狙った十字飛車になります。実戦は▲4四歩に△2八馬と取りましたが、▲4三歩成△2二玉▲8一角成と飛車を取り合って、と金の存在が絶大です。以下も押し切って挑戦者が叡王を奪取しました。

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撮影:日本将棋連盟

第68期王座戦五番勝負第3局

【第2図は△4四角まで】

 第2図は第68期王座戦五番勝負第3局(▲永瀬拓矢王座△久保利明九段)。三間飛車対居飛車穴熊の戦いで、振り飛車がミレニアム囲いにしているのが最新形です。
ここで▲6四歩には△6六歩▲6八金引△7六歩でいけません。▲5五歩が「大駒は近付けて受けよ」の手筋。△同角と取らせてから▲6四歩とすれば、△6六歩に▲5六金と角当たりで金をかわすことができます。

第33期竜王戦挑戦者決定三番勝負第3局

【第3図は△2五歩まで】
 

 第3図は第33期竜王戦挑戦者決定三番勝負第3局(▲羽生善治九段△丸山忠久九段)。一手損角換わり対急戦の終盤戦です。先手玉は遠く馬が利いており、まだ余裕があります。
ここから▲2五同角△4三歩▲2一飛△5二金打▲4四桂が「要の金を狙え」の寄せです。金に狙いを付けることで、▲6三銀の寄せが生じています。▲4四桂がこじ開けにいく好手で、後手玉は受けがなくなり、羽生九段が挑戦権を手にしました。

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撮影:日本将棋連盟

第79期順位戦A級

【第4図は△7三同銀まで】

 第4図は第79期順位戦A級(▲斎藤慎太郎八段△菅井竜也八段)。新A級同士の一戦です。先手が快調に進め、どう決めるかという局面です。▲6五桂が寄せを見ながら自玉も安全にした「敵の打ちたいところへ打て」です。
以下△6七金▲同金△同歩成と進みましたが、6五に桂を置いてあることによって△6六歩から△6五香のような寄せが消えています。斎藤八段は3連勝と好調です。

第70期王将戦挑戦者決定リーグ

【第5図は△2三金まで】
 

 第5図は第70期王将戦挑戦者決定リーグ(▲藤井聡太二冠△羽生善治九段)。豪華メンバーのリーグ戦は、開幕戦からスーパースター同士が激突しました。横歩取りの戦いでまだ序盤ですが、▲3三飛成と飛車角交換に踏み込みます。「序盤は飛車よりも角」「一段金に飛車捨てあり」で、低い先手陣はすぐに飛車を打ち込まれる心配がありません。
以下△3三同桂▲6六角△6四歩▲7七桂△3二玉▲5六角でじっくりとした進行です。終盤は際どい寄せ合いとなりましたが、羽生九段が制勝し、好スタートを切りました。

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撮影:日本将棋連盟

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渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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