叡王戦七番勝負は開幕から千日手、藤井聡太七段がダブルタイトル挑戦など、6月下旬の注目対局を格言で振り返る

叡王戦七番勝負は開幕から千日手、藤井聡太七段がダブルタイトル挑戦など、6月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2020年07月22日

 名人戦に続き、叡王戦七番勝負も開幕してタイトル戦が目白押しです。そして、注目の藤井聡太七段は王位戦でも挑戦を決め、ダブルタイトル戦に挑むことになりました。

第78期名人戦七番勝負第2局

【第1図は▲4五桂まで】

 第1図は第78期名人戦七番勝負第2局(▲渡辺明三冠△豊島将之名人)。後手が優勢でしたが、▲6五桂~▲4五桂が厳しい攻めで先手が猛追しています。△4三金とかわすと▲5三銀△4一玉▲2六飛が厳しく、下段に落とされると簡単に寄せられます。△4三玉が「中段玉寄せにくし」の受け。▲5三桂右成と金をタダで取られましたが、△3三玉と広い方に逃げて簡単には寄りません。以下も激戦が続きましたが、最後は後手が制しました。これで七番勝負は1勝1敗です。


「名人戦棋譜速報」より

第78期名人戦七番勝負第3局

【第2図は△2二玉まで】

 第2図は名人戦第3局(▲豊島名人△渡辺三冠)。雁木模様の出だしから機敏に動いた先手がリード。ここで▲6六角が絶好の位置で「角筋は受けにくし」です。次の▲3四歩が厳しく、何か手を入れても▲2四飛、▲3四銀、▲2五歩など攻め筋が多く、とても後手は支え切れません。実戦は△8六歩▲8三歩△5七歩と暴れて一時は逆転をも思わせる熱戦となりましたが、最後は先手が制しました。シリーズを2勝1敗として豊島名人がリードしています。


「名人戦棋譜速報」より

第5期叡王戦七番勝負第1局

【第3図は△6一歩まで】

 第3図は第5期叡王戦七番勝負第1局(▲豊島将之竜王名人△永瀬拓矢叡王)。開幕局から千日手となりました。図は指し直し局の終盤戦で、後手玉を追い詰めて先手勝勢です。後はどう決めるかの局面ですが、▲3五桂△同歩▲4四飛がさわやかな寄せで後手の投了となりました。以下は△4四同金に▲5二歩が「一歩千金」で詰みとなります。


「叡王戦中継ブログ」より

第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局

【第4図は▲8六同歩まで】

 第4図は第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局(▲渡辺明棋聖△藤井聡太七段)。 先手の急戦矢倉を強く迎え撃ち、後手が形勢をリード。ここから△8七歩▲9六歩△7五歩▲8七金△7六歩▲8八玉△7五桂▲7六金△4七歩成と「金は斜めに誘え」の手筋連発で一気に勝勢に持ち込みました。最後の△4七歩成に▲同飛は△6九角、▲同金は△5八角▲4八飛△6九角成が激痛で、上ずった金がまったく守りに働いていません。藤井七段が圧勝で2連勝。史上最年少タイトルまであと1勝としました。


「ヒューリック杯棋聖戦中継ブログ」より

第61期王位戦挑戦者決定戦

【第5図は△9七角成まで】

 第5図は第61期王位戦挑戦者決定戦(▲藤井聡太七段△永瀬拓矢二冠)。難解な戦いが続いていましたが、図の直前に先手が抜け出しています。ここから▲6八玉△7二歩▲5七玉が「玉の早逃げ八手の得」です。横から王手で飛車を打たれる筋さえ消してしまえば、先手玉は寄りません。自玉を安全にしてから寄せに出て、棋聖戦に続く挑戦となりました。


「王位戦中継ブログ」より

第31期女流王位戦五番勝負第3局

【第6図は△3三金打まで】

 第6図は第31期女流王位戦五番勝負第3局(▲里見香奈女流王位△加藤桃子女流三段)。3局続けての中飛車対居飛車穴熊となったシリーズ。▲3一角が「要の金を狙え」の基本の寄せ。次に▲1四歩のような寄せがあります。以下も難しいところはありましたが先手が押し切りました。里見女流王位がストレートで勝利し、通算40期目のタイトル獲得となりました。


「女流王位戦中継ブログ」より

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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