チーム糸谷勝利なるか?~予選Cリーグ第2試合・チーム木村VSチーム糸谷戦の振り返り~

チーム糸谷勝利なるか?~予選Cリーグ第2試合・チーム木村VSチーム糸谷戦の振り返り~

ライター: 紋蛇  更新: 2020年06月01日

*前回の記事:予選Cリーグ2回戦・チーム木村VSチーム糸谷 事前特集

 Cリーグのチーム木村「酔象」とチーム糸谷「フォーカス+1」の対戦。「酔象」のチーム名は行方九段の発案で、由来については「このメンバーならお酒を絡めた名前で。醉象は中将棋などでいちばん強い駒なので」とのことだ。

 オーダーは以下の通り。チーム糸谷は対チーム康光戦から大幅に変えた。チーム木村はリーダーが先鋒に登場。木村は「チームの士気にかかわる大事な一局になるので、できれば勝ちたい」と気合十分だった。

先鋒 木村一基王位-高見泰地七段
中堅 行方尚史九段-糸谷哲郎八段
大将 野月浩貴八段-都成竜馬六段

【先鋒戦】木村王位VS高見七段

 第1局は木村の先手から相掛かり。高見は2年前まで後手で横歩取りを主軸にしていたため、相掛かりの経験は少ない。じっくりした駒組みから高見が端攻めで動き、受けの木村が強く反発した。

【第1図は△6三飛まで】

 第1図は▲9三角成に8三の飛車を6三に逃げたところ。▲8二とは△9三飛があり、▲9四馬は△8三金から馬と玉を目標に攻められる。実戦は木村の▲8五香が好手。8筋の制空権を握る一手で、△8三金を消しながら上部を開拓すれば入玉しやすい。高見は残り時間2分36秒のうち1分33秒も考えて△3一玉と逃げたが、ここで攻めがないようでは後手がつらい。△3一玉以下▲9四馬△6二金▲8三香成と進み、成駒をたくさん作った木村の勝ち。

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先鋒戦 木村一基王位VS高見泰地七段

 行方は「完璧な指し回しだねぇ。木村ワールド!」と絶賛し、控室のモニタで見守っていたチーム木村のメンバー全員が驚いていた。 続く第2局は矢倉模様からの乱戦を高見が制す。第3局は矢倉模様で先手の高見が積極的に動いたが、木村が独特の受けで跳ね返して快勝した。チーム木村は1ポイント獲得、チーム糸谷はマイナス2ポイントと苦しくなった。

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先鋒戦を終えて笑顔の木村王位

【中堅戦】行方九段VS糸谷八段

 局前、行方は「糸谷さんは全棋士中で(フィッシャールールに)いちばん向いていると思うので、胸を借りる気持ちで」とコメントしていた。糸谷は「泥沼に引き込んで曲線的な戦いを目指して戦いたいと思います」と抱負を述べたが、筋のよい指し回しを見せる。 第1局は後手の行方が角換わりを拒否し、糸谷が右四間飛車から攻める展開に。

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中堅戦 糸谷哲郎八段VS行方尚史九段

【第2図は△8六同歩まで】

 第2図は▲8六歩と桂を取った手に△同歩と応じたところ。8筋突破が見えているが、▲3三桂△3一玉▲4四歩が鋭い攻め。△同金は▲5五銀が決め手になり、△5五同金は▲4一飛成で詰んでしまう。▲4四歩に行方は△8七歩成から攻め合ったが、それでも▲5五銀が▲4三歩成を見て厳しく、後手は支えきれない。 第2局は糸谷が得意の一手損角換わりに出た。ねじり合いが続いたが、糸谷が勝ってポイントをゼロに戻す。チーム木村はマイナス1ポイントになり、控室に戻った行方は「面目ない」と肩を落とした。

【大将戦】野月八段VS都成六段

 野月と都成は公式戦での対戦がないものの、都成が奨励会に入会した直後ぐらいに指したことがあるそうだ。 第1局は後手の野月が雁木を採用して千日手になり、指し直し局は都成のダイレクト向かい飛車に野月が粘り強い指し回しで逆転勝ちを収めた。 第2局は野月の居飛車穴熊に、都成が四間飛車からトーチカ囲いで対抗する。二転三転の戦いが続き、第3図は△7五桂の王手に▲7六玉と逃げたところ。

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大将戦 野月浩貴八段VS都成竜馬六段

【第3図は▲7六玉まで】

 後手玉は▲8二銀打からの詰みがあるので、△8八竜と香車を取っている余裕はない。都成がひねり出した勝負手は△7九竜!▲同馬に△6七銀から追い詰めて、最後に△7三金と銀を取る手が詰めろになれば勝ちになる。実戦は△6七銀に▲6六玉△6五歩▲5五玉△5四金打▲4六玉△4五金打▲5七玉△5六金▲4八玉に、△7三金が△3七銀以下の詰めろになって後手勝勢になった。途中の▲5七玉では▲4七玉なら後手が追い詰めるのは難しかったようだが、フィッシャールールの秒読みで正確に対応するのは容易ではない。

 第3局は、野月の横歩取りを都成が破る。三番勝負は都成の2勝1敗で、ポイントをプラス1にして予選突破を決めた。チーム木村はマイナス2ポイントで、1ポイントを獲得しているチーム康光と対戦する。抱負を聞かれた木村は「どういう状況であろうとも最善を尽くすのがプロですので、三人一丸となって頑張れるようにしたいですね」とコメントした。

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予選Cリーグ:
待望のレジェンドチーム登場!予選Cリーグ 第一試合<チーム康光 VS チーム糸谷>
予選Cリーグ 第二試合<チーム木村 VS チーム糸谷>

予選Aリーグ:
予選Aリーグ第一試合<チーム豊島 VS チーム久保>
予選Aリーグ第二試合<チーム豊島 VS チーム三浦>
予選Aリーグ第三試合<チーム久保 VS チーム三浦>

予選Bリーグ:
予選Bリーグ 第一試合<チーム天彦 VS チーム稲葉>
予選Bリーグ 第二試合<チーム渡辺 VS チーム天彦>
予選Bリーグ 第三試合<チーム渡辺 VS チーム稲葉>

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紋蛇

ライター紋蛇

2012年より、ネット中継に携わる。担当局で一番長い中継が2013年3月の第71期順位戦C級1組の森けい二九段-近藤正和六段戦で、持将棋の末指し直しとなり、終局時刻は翌日の朝5時40分。「中継は体力だ」と痛感している。

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