いよいよ開幕。永瀬叡王VS豊島竜王・名人による第5期叡王戦七番勝負の展望は?

いよいよ開幕。永瀬叡王VS豊島竜王・名人による第5期叡王戦七番勝負の展望は?

ライター: 生姜  更新: 2020年06月19日

 6月21日、いよいよ待ちに待った第5期叡王戦七番勝負が開幕する。今期はぜひとも注目するべき点がある。第3局と第4局が同日に開催されるのだ。タイトル戦での連戦は千日手を含めない限り例がない。1日に2局戦う体力、精神力が問われるシリーズとなる。もしこの日に千日手、あるいは持将棋になったらと想像すると楽しみが止まらない。

 永瀬拓矢叡王に挑戦するのは豊島将之竜王・名人。両者がタイトル戦で顔を合わせるのは初めて。対戦成績は永瀬叡王の3勝、豊島竜王・名人の2勝。これまですべて先手番になった側が勝利している。東西の複数冠保持者の対戦とあって、最高峰の戦いが繰り広げられることは間違いない。

挑戦者 豊島将之

 では挑戦者となった豊島竜王・名人から紹介しよう。
2019年度は39勝19敗(0.672)の成績を挙げ、全棋士中の対局数3位、勝数4位の活躍を見せた。序盤の研究に定評があり、研究範囲と見られる局面まで早指しで飛ばすことが多い。2月24日に行われた第5期叡王戦本戦挑戦者決定戦第3局の模様を取り上げる。

【第1図は▲7八歩まで】

第1図は中盤戦。豊島竜王・名人が▲7八歩と受けたところ。持ち時間がチェスクロックの3時間で、ここまでわずか23分しか使っていない。以下△7七歩成▲同歩△7六歩▲同歩△同飛▲7七歩△9五角に▲7九玉がうまい受けで、リードを奪ったあとはしっかりと勝ちきった。
序盤・中盤・終盤の隙のなさは周知のことだろう。自身初となる3冠を狙う。

叡王 永瀬拓矢

 永瀬叡王も2019年度は飛躍の年であった。39勝14敗(0.736)は豊島竜王・名人を上回る勝率。持ち前の強靭で負けにくい棋風は年々磨きがかかっている。
3月17日に行われた第91期ヒューリック杯棋聖戦決勝トーナメント1回戦で両者がぶつかった将棋を紹介する。

【第2図は▲6六金まで】

第2図の先手玉は中段に追いやられて不安定だが、ここで▲6六金が決め手の金打ち。打たれてみると後手は攻めの手段が難しい。豊島竜王・名人は6分考えてそのまま投了した。 直近の対局では永瀬叡王が力を見せている。これは七番勝負を迎えるうえでいい材料といえるだろう。自身初となる防衛なるか。

 戦型は相居飛車が濃厚だ。最近は棋界全体で矢倉が増えてきており、今期七番勝負でも現れる可能性が高い。他には相掛かり、角換わりが有力だ。序盤の研究範囲を抜けた先ではねじり合いになることが予想される。永瀬叡王の受け、豊島竜王・名人の攻めといった構図になるのではないか。

これまでの叡王戦のタイトル戦はすべてストレートで決着している。今期はどうだろうか。筆者は第3局を終えたあとのスコアに注目したい。もし一方が3勝0敗となったときに、同日にカド番を迎える側はどう立ち振る舞うのか。これまでのタイトル戦とはひと味違う戦いが見られそうだ。

生姜

ライター生姜

1993年生まれ。将棋連盟モバイルを中心に活動する中継記者。2018年現在は最年少の記者。棋士の食事注文に肉生姜焼き定食があると反応する。

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