木村王位・豊島名人・初代清麗誕生、永瀬二冠の初タイトルと連勝賞など 2019年度に生まれた記録を振り返る【上半期】

木村王位・豊島名人・初代清麗誕生、永瀬二冠の初タイトルと連勝賞など 2019年度に生まれた記録を振り返る【上半期】

ライター: 渡部壮大  更新: 2020年05月13日

2019年度も将棋界は様々な記録が生まれた。上半期と下半期に分けて、振り返っていこう。今回は4~9月の上半期を振り返っていく。

木村一基王位誕生

まず2019年度で最も将棋ファンの記憶に残ったのは木村一基王位誕生だろう。史上最年長46歳の初戴冠で、長く残りそうな記録だ。木村は今回が7度目のタイトル挑戦で、これまではあと1勝が届かず涙を呑んでいた。このシリーズは出だし2連敗で今回も厳しいかと思わせたが、そこから巻き返して最終局までもつれこんだ。

【第1図は▲7二成銀まで】

【9月】王位戦七番勝負第7局 ▲豊島将之王位△木村一基九段

後手玉は効果的な詰めろが掛からず、うまく攻めれば後手が勝てる局面だ。△3六金が確実な攻め。先手は歩があれば▲2三歩の攻めや▲3八歩の受けが利くのだが、あいにく歩切れ。次の△3七金や△2七角と言った攻めが受けにくい。以下もピッタリの手が続き、後手が押し切った。

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王位戦中継ブログより

豊島将之名人誕生

名人戦は挑戦者が奪取。豊島将之名人が誕生した。第1局にいきなり千日手が現れ、指し直しは一日制で行われる珍しい展開となった。

【第2図は△2六歩まで】

【4月】名人戦七番勝負第1局 ▲豊島将之二冠△佐藤天彦名人

次に△2七歩成から△3七とが間に合うと大変だが、この瞬間は先手のチャンス。▲6五桂△6四角▲3五角△同竜▲同歩△4四歩▲2四飛とラッシュを掛け、2六に残っている歩の裏を突いた攻めが決まった。これで勢いに乗った豊島が4連勝で名人を奪取。

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名人戦棋譜速報より

永瀬拓矢二冠誕生

2019年に叡王、王座を獲得した永瀬拓矢二冠。満を持しての初タイトルとなったのは叡王戦だ。初防衛を目指した高見泰地叡王に対し、3連勝で一気に追い詰める。

【第3図は▲5三成香まで】

【5月】叡王戦七番勝負第4局 ▲高見泰地叡王△永瀬拓矢七段

すでに後手勝勢だが、▲7一竜以下の詰めろが掛かっている。△6一香が手堅い受けで、これで後手に効果的な攻めがない。1七の馬もよく利いている。以下▲同と△同金▲6三成香のタイミングで△6八銀と寄せに出て、4連勝で奪取を決めた。

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叡王戦中継ブログより

初代清麗決定

2019年に始まった清麗戦。記念すべき五番勝負は里見香奈女流五冠(当時)─甲斐智美女流五段戦となった。

【第4図は▲7七銀まで】

【8月】ヒューリック杯清麗戦五番勝負第1局 ▲甲斐智美女流五段△里見香奈女流五冠

▲7三歩が間に合うと事件のため、後手も忙しい局面だ。しかし△6七角が派手な一手で、先手玉は寄っている。第1局を制した里見がそのまま3連勝で初代清麗に輝いた。

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ヒューリック杯清麗戦中継ブログより

連勝賞

2019年度の連勝賞は15連勝を達成した永瀬が受賞。図は4月に行われた15連勝目の羽生善治九段戦だ。

【第5図は△3一角まで】

【4月】竜王戦1組 ▲永瀬拓矢七段△羽生善治九段

▲2二歩△同金寄と壁を作ってから▲6五歩と伸ばして攻めになっている。以下△8六歩に▲6四歩△同銀▲8三歩△同銀▲6四銀成△同角▲7二銀と進み、2二を埋めた効果で攻め合い勝ちだ。
次の本田奎五段に敗れて連勝がストップしたものの、年度末まで抜かれることはなくそのまま最多連勝となった。

*2019年度に生まれた記録を振り返る【下半期】はこちら

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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