師弟戦も実現。フルセットで波乱の大将戦へ ~予選Cリーグ1回戦・チーム康光VSチーム糸谷戦の振り返り~

師弟戦も実現。フルセットで波乱の大将戦へ ~予選Cリーグ1回戦・チーム康光VSチーム糸谷戦の振り返り~

ライター: 紋蛇  更新: 2020年05月25日

*前回の記事:予選Cリーグ1回戦・チーム康光VSチーム糸谷戦 事前特集

Cリーグのチーム康光「Legend」とチーム糸谷「フォーカス+1」の対戦。「Legend」の名のとおり、チーム康光は実績がずば抜けている。「フォーカス+1」の名は、高見と都成がNHK「将棋フォーカス」のMCを務めており、そこに糸谷が加わったことから命名された。
オーダーは以下の通り。

先鋒 谷川浩司九段-都成竜馬六段
中堅 森内俊之九段-高見泰地七段
大将 佐藤康光九段-糸谷哲郎八段

先鋒戦で師弟戦が実現した。チーム康光のオーダーは佐藤が決めたそうで、師弟戦は「そうなればいいと思って、谷川先生を先鋒に持ってきました」とのこと。中堅戦は両対局者の地元が共に神奈川対決、大将戦はリーダー同士の真っ向勝負となった。

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チーム康光「Legend」

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チーム糸谷「フォーカス+1」

先鋒戦 谷川九段VS都成六段 

谷川と都成は2017年から谷川の自宅で研究会を行っており、互いの将棋を知り尽くしている。第1局は谷川が決断のよく仕掛けて優勢に。終盤で必勝形になったが、「光速流」で詰ましにいったが、落とし穴があり、都成が辛勝した。第2局は谷川が中盤で優勢になり、そのまま押し切る。第3局は谷川の先手で、後手の都成がダイレクト向かい飛車に構えた。

【第1図は▲5七桂まで】

第1図は▲5七桂と打ったところ。△3四銀なら▲4六桂で銀を捕獲できる。だが、都成の△3七歩▲同金△5六桂が好手だった。以下▲5八玉は△7八角▲8八飛△4八桂成から崩壊する。本譜は▲5六同銀△同銀▲同金△5五歩▲同金に△5二飛がぴったり。▲5六歩は△5五飛▲同歩△5六歩と攻めればよく、本譜の▲6七桂には△5六歩から桂損を取り返せる。先手は銀取りに打った桂が目標になってしまい、玉が薄いので粘りにくい。

三番勝負は都成の2勝1敗。後に控室に戻った谷川は「本当は2連勝して終わってなきゃいけない」と苦笑いした。

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先鋒戦 都成六段VS谷川九段の師弟戦

中堅戦 森内九段VS高見七段 

森内と高見は公式戦で対戦がないものの、研究会で将棋を指したことがあるそうだ。三番勝負は第1局を高見、第2局を森内が制す。第3局の戦型は3連続となる矢倉。意地の張り合いとなったが、第2局と似た展開から森内が積極的な指し回しでリードを奪う。

【第2図は△5五同歩まで】

第2図で▲4五桂打△同金▲5四銀が豪快で、△同金は▲6三角があり、本譜の△4二玉にに▲7二角△8二飛▲5三銀成△同玉▲4五桂できれいに決まった。

高見が投了を告げると、チーム康光の控室ではため息が漏れた。

「強いですよねぇ。素晴らしい」(佐藤)
「私のミスを帳消しにしてくれましたですよ」(谷川)
「いやー、プレッシャー......(笑)」(佐藤)
「ふっふっふ」(谷川)

ポイントは両チームともにゼロになり、決着は大将戦に持ち込まれた。控室に戻ってきた森内に、谷川と佐藤はわざわざ立ち上がって「お疲れさまでした。ありがとうございました」「素晴らしい指し回しでした」と褒めちぎった。

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中堅戦 森内九段VS高見七段

大将戦 佐藤九段VS糸谷八段 

いよいよ大将戦。第1局は佐藤が優勢になるも王手成銀取りをうっかりし、糸谷が得意の入玉を目指して激戦が続いた。

【第3図は▲6四同飛まで】

第3図は△5五角のラインなどもあって何か技が決まりそうなところ。ここで佐藤の△7二銀▲7一飛成△6三香が飛車を取る好手で、以下▲7二竜△6四香▲6五歩に△8四金と打ち、入玉を阻止。このあともねじり合いが続くも、最後は佐藤が糸谷の猛追をしのいで勝ち切った。

第2局は持将棋模様の千日手が成立し、指し直し局は糸谷が勝った。だが、第3局は佐藤が攻めまくって快勝。中堅戦に続いて大将戦をチーム康光が制し、1ポイントを獲得。チーム糸谷はマイナス1ポイントでのスタートになった。

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大将戦 糸谷八段VS佐藤九段

筆者が印象に残ったのは、チーム「Legend」が和やかに検討し、勝利を讃え合う光景。タイトル戦でしのぎを削った大棋士が、チームメイトとして純粋に将棋を楽しんでいるかのように見えた。

***

■ABEMAプレミアムで公開中 予選の動画一覧はこちら>>

予選Cリーグ:
待望のレジェンドチーム登場!予選Cリーグ 第一試合<チーム康光 VS チーム糸谷>

予選Aリーグ:
予選Aリーグ第一試合<チーム豊島 VS チーム久保>
予選Aリーグ第二試合<チーム豊島 VS チーム三浦>
予選Aリーグ第三試合<チーム久保 VS チーム三浦>

予選Bリーグ:
予選Bリーグ 第一試合<チーム天彦 VS チーム稲葉>
予選Bリーグ 第二試合<チーム渡辺 VS チーム天彦>
予選Bリーグ 第三試合<チーム渡辺 VS チーム稲葉>

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紋蛇

ライター紋蛇

2012年より、ネット中継に携わる。担当局で一番長い中継が2013年3月の第71期順位戦C級1組の森けい二九段-近藤正和六段戦で、持将棋の末指し直しとなり、終局時刻は翌日の朝5時40分。「中継は体力だ」と痛感している。

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