白熱の大将戦。第3回AbemaTVトーナメント ~5月9日放送、予選Bリーグ2回戦・チーム渡辺VSチーム天彦戦の振り返り~

白熱の大将戦。第3回AbemaTVトーナメント ~5月9日放送、予選Bリーグ2回戦・チーム渡辺VSチーム天彦戦の振り返り~

ライター: 紋蛇  更新: 2020年05月11日

*前回の記事:5月9日放送、AbemaTVトーナメント(チーム渡辺VSチーム天彦)予選リーグ 事前特集~

2020年5月9日(土)に放映された第3回AbemaTVトーナメント、チーム渡辺「所司一門」チーム天彦「まったり」。オーダーは以下の通りになった。

先鋒 近藤誠也七段-阿部光瑠六段
中堅 石井健太郎五段-斎藤慎太郎八段
大将 渡辺明三冠-佐藤天彦九段

チーム天彦は稲葉戦とまったく同じオーダー。対局前の控室で、渡辺は「早指しだと、振り飛車が有利。自分の玉を見なくていいですからね。オールラウンダーなら振り飛車がいいですよ」と話している。先鋒戦と中堅戦は、振り飛車も指しこなす棋士が居飛車党にぶつかったため、対抗型が期待された。大将戦はタイトル戦でぶつかったことのある渡辺―佐藤戦。トップ棋士同士の戦いは、3局で終わらなかった。

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チーム渡辺 写真左から:石井五段、渡辺三冠、近藤七段

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チーム天彦 写真左から:阿部六段、佐藤九段、斎藤八段

先鋒戦 近藤七段VS阿部六段

第1局は先手の阿部が三間飛車。チーム稲葉の佐々木大地五段に2連勝した戦法だ。しかし、近藤は居飛車穴熊に組み、万全の態勢から仕掛けて快勝した。第2局は角換わり。お互いにツノ銀模様の中住まいから阿部が動く。薄い玉の攻め合いになり、近藤が先にはがすことに成功した。第1図は△2四角と打ったところ。

【第1図は△2四角まで】

近藤は▲7三歩成△同玉▲6八銀と応じた。後手玉を引きずり出してから自陣に手を戻したのが冷静で、次の▲5二角から着実に寄せればよい。実戦も▲5二角が実現し、近藤が勝勢になった。

実はこのあと近藤に3手詰めを逃すハプニング? があるも、大勢に影響はなく2連勝。近藤勝利を見届けたチーム渡辺、「お見事」(渡辺)「お見事。3手詰み......(笑)」(石井)と余裕の表情を浮かべる。控室に戻った近藤は渡辺、石井の順にハイタッチした。
渡辺チームは2ポイントを獲得してのスタート。6ポイントだった天彦チームはマイナス2ポイントで、4ポイントになった。

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渡辺三冠とハイタッチする近藤七段

中堅戦 石井五段VS斎藤八段

石井と斎藤は初手合いだが、年は石井が斎藤よりひとつ上で、三段リーグでも対戦したことがある。「三段リーグ時代に2局指したんですけども、両方とも私の完敗だったので、当たってリベンジできればいいなと思います」と石井。当然ながら、王座1期獲得、A級に昇級した斎藤の壁は厚い。対局前の作戦会議で、渡辺はリラックスさせるためか「相手が格上だから、1局勝てれば成功」と話していたが、石井が力強い指し回しを見せた。

第1局は矢倉模様から斎藤が急戦に出たが、石井がリードを奪う。

【第2図は△4七歩まで】

第2図から▲1五角△3三香▲5五歩と進んだ。残り時間が1分50秒近くあるにもかかわらず、▲1五角と▲5五歩は文字通りのノータイム。石井の指がしなり、「おおー、何でそんないい手つきなんだ(笑)。いいと思ってるのかな」と渡辺。実際に斎藤は困っていた。▲5五歩に残り時間29秒から9秒まで考えて△6四金と逃げたが、▲5六桂の追い打ちが厳しい。金を引けば▲6四歩や▲4五香、▲6五銀と指したい手が山のようにある。▲5五歩の前に▲1五角を利かしたのがポイントで、単に▲5五歩は△4八角から食いつかれる。第1局を石井は141手で押し切る。

第2局は石井の三間飛車に斎藤が居飛車穴熊で対抗し、斎藤勝ち。

最終局は角換わりになり、後手の石井が右玉に出て130手で制す。石井らしく手厚い・丁寧・胆が据わった指し回しで強豪に勝ち越しを決めた。

チーム渡辺は1ポイント追加で3ポイント、チーム天彦はマイナス1で3ポイントと五分の戦いに。石井が控室に戻ってくると、チーム渡辺はまたもハイタッチで喜びを露わにした。

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斎藤八段VS石井五段戦に備えた、天彦チームの作戦会議の様子

大将戦 渡辺三冠VS佐藤天九段

大将戦の渡辺と佐藤。対戦成績は渡辺が6連勝中と波に乗っている。しかし、そこは現実主義の渡辺。作戦会議で「プランとしては2連敗を避けたい。弟弟子が頑張ってくれたのにね。ということは先手番を勝つこと」と抱負を述べた。

第1局は渡辺の先手。対局開始からいきなり超特急で指し進め、チェスクロックを叩く音が「パンパンパン」と鳴り響く。これには解説陣や双方の控室も「早い」「ガチ」とびっくり。激戦が予想されたが、なんと248手で持将棋成立。指し直し局は▲天彦21秒△渡辺11秒で開始され、佐藤が139手で勝利。第2局は140手で後手の渡辺勝ち。決着は第3局にもつれ込んだ。

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渡辺三冠VS天彦九段 持将棋成立直後の様子

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渡辺三冠VS天彦九段の超早指しに盛り上がる控室

第3局は改めて振り駒が行われ、先手が渡辺。佐藤玉は攻められて、第3図のように不安定になった。しかし、秒読みのなかで佐藤がうまく補強する。

【第3図は▲6一飛まで】

△7三銀打▲7八玉△8八馬▲同銀△5二金が粘り強い。まず▲6二角成を受ける△7三銀打は当然の手。続く▲7八玉は飛車の横利きを通して馬取りだが、切ってからすぐに金を埋めるのが鍛えの入った受け。△5二金に代えて、△8四銀は▲6二角があった。渡辺は▲5七角と撤退したが、ゆうゆうと△3三桂の活用が王道の指し回し。△4五桂が角に当たるし、△6六桂打から両取りをかければ攻めが切れない。何より、後手玉の空中要塞は鉄壁だ。134手で佐藤が制し、結果は2勝1敗1持将棋。チーム天彦は1ポイントを獲得し、予選を4ポイントで終えて決勝トーナメント進出を決めた。チーム渡辺は2ポイントで、チーム稲葉戦を迎える。

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ついに最強の渡辺三冠登場! 予選Bリーグ 第二試合<チーム渡辺 VS チーム天彦>
予選Aリーグ第一試合<チーム豊島 VS チーム久保>
予選Aリーグ第二試合<チーム豊島 VS チーム三浦>
予選Aリーグ第三試合<チーム久保 VS チーム三浦>
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AbemaTVトーナメント

紋蛇

ライター紋蛇

2012年より、ネット中継に携わる。担当局で一番長い中継が2013年3月の第71期順位戦C級1組の森けい二九段-近藤正和六段戦で、持将棋の末指し直しとなり、終局時刻は翌日の朝5時40分。「中継は体力だ」と痛感している。

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