第3回AbemaTVトーナメント ~5月2日放送、予選Bリーグ1回戦・チーム天彦VSチーム稲葉戦の振り返り~

第3回AbemaTVトーナメント ~5月2日放送、予選Bリーグ1回戦・チーム天彦VSチーム稲葉戦の振り返り~

ライター: 紋蛇  更新: 2020年05月04日

*前回の記事:5月2日放送、AbemaTVトーナメント(チーム天彦 対 チーム稲葉)予選リーグ 事前特集~

2020年5月2日(土)にチーム天彦「まったり」とチーム稲葉「Invictus」の団体戦がAbemaTV将棋チャンネルで放映された。 チーム名「まったり」が、佐藤いわく「マイペースなメンバーかなと思いましたので、シビアにというよりは楽しくやろうよという意味を込めました」のに対し、チーム稲葉のInvictus(ラテン語で「負けざるものたち、不屈」の意味)と闘志を露わにした。

オーダーは以下の通り。

先鋒 阿部光瑠六段―佐々木大地五段
中堅 斎藤慎太郎八段―山崎隆之八段
大将 佐藤天彦九段―稲葉陽八段

先鋒に若手、大将にチームリーダーを据える、ともにオーソドックスな組み合わせ。「こういうのを予想されているだろうなと思いつつ、まあいいかと(笑)。大らかにいこうかなと」と佐藤。チーム稲葉は予想通りの当たりだった。後に稲葉の発案で「阿部さんのことはよく知っているから」と、阿部の研究会仲間の佐々木を先鋒にしたことを明かしている。

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先鋒戦 阿部六段VS佐々木五段

対局直前の作戦会議。双方のチームで話題に上がったのが、振り飛車だった。オールラウンダーの阿部は「彼(佐々木)は居飛車の戦型にどれも対応するので、自分は飛車を振ろうかなと」と語ったが、実はこれもチーム稲葉の読み筋で、阿部の振り飛車にどう応じるかが話し合われた。佐々木は対振り飛車に急戦を得意にしているが、山崎は「急戦でやっていたら、相当によくても、よい勝負」と話せば、稲葉も「一発を食らいやすい」と、フィッシャールールでは美濃囲いの堅さがやっかいなことに同調している。

第1局は後手の阿部が三間飛車。佐々木は勧められた持久戦を選び、天守閣美濃で対抗した。解説で佐々木の師匠、深浦康市九段は「天守閣美濃、佐々木はあまりないんじゃないですかね」と不思議そうな声を上げる。中盤戦でリードを奪ったのは阿部で、佐々木は深浦九段に「誰に似たんでしょうか。すごい粘りですね」といわせる指し回しを見せるも、阿部が押し切った

続く第2局も、阿部は三間飛車を採用。佐々木は得意の作戦、右四間飛車とエルモ囲いから仕掛けた。第1図は終盤戦。

【第1図は△2六角成まで】

△2六角成と上部を開拓されたのに対し、▲1三桂成と捨てたのが決め手だった。△1三同香なら▲1二角△2四玉▲2三飛から馬を取ればよい。実戦の△1三同玉には▲1四飛△2二玉▲2三歩が分かりやすく、先手は左辺の逃げ道が広いので攻めさえつながればいい。阿部が2連勝で好スタート。深浦九段は「ちょっと説教ですね」と笑った。

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チーム天彦の作戦会議の様子

中堅戦 斎藤八段VS山崎八段

中堅戦は斎藤と山崎の関西勢対決。ポイントは山崎の戦型選択で、斎藤は「対戦していても、手の内が分からない」と話す。一方の山崎は、斎藤が先手のときは矢倉を予想。「意表をついて、じっくり指す」と作戦を練った。
第1局は斎藤の先手になり、山崎の予想したとおり矢倉に進む。山崎はジャブを放ってから持久戦にする、独特な構想で勝負。中盤は斎藤が攻めて優勢になるも、山崎が怪しい勝負術から逆転に成功した。
第2図を迎え、▲4二銀は詰めろ。先手玉が詰むかどうかの勝負で、残り時間は▲斎藤9秒、△山崎7秒と切迫している。

【第2図は▲五七同金まで】

山崎は4秒の考慮で△6六銀と出て、以下▲同金△5七金▲7六玉△7九飛成▲7七歩△8六飛▲7五玉と進行した。飛車と竜を連係させるのが迫力あるようでも、先手玉は上部に逃げれば広いので詰まない。▲7五玉に王手は続くも斎藤は正確にしのぎ、最後に山崎は顔をしかめてから投了を告げ、「バカすぎる」とぼやいた。第2図では勝ち筋がいくつかあり、△7六金や△7七金▲5六玉△5五金から角を取りにいくのがまさった。

第2局は山崎が得意の相掛かり。激戦になるも、秒読みのなかで斎藤が華麗に詰まして勝利。中堅戦もチーム天彦が連勝した。

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チーム稲葉の作戦会議の様子

大将戦 佐藤九段VS稲葉八段

いよいよ大将戦。佐藤と稲葉はともに1988年生まれで、2017年に名人戦七番勝負で戦った。佐藤は自身初のタイトル防衛戦を4勝2敗で制している。開始前、稲葉は「名人戦で負けた佐藤九段を倒したい」と語った。

第1局は稲葉の先手で角換わりになり、流行の相早繰り銀へ。ともに居飛車の最新形が主戦場なので、予想された戦型のひとつだ。

【第3図は▲4八桂まで】

第3図で深浦九段は「稲葉さんがよさそうですけど」と解説したが、△7九とが勝負手。▲同金は△6七桂があるため▲8八金と辛抱したが△7七歩成で食いつかれている。山崎は「嫌な手だ。すさまじく嫌な手だ」、関係者の控室で見守っていた西尾明七段は「事件でしょ、事件発生したでしょ」と叫んだ。
稲葉は△7七歩成に▲5二銀△同飛▲同と△同玉▲7七金と飛車を取ってから受けに回ったが、△7六歩▲6七金に△7八銀が詰めろ。角が質駒なので。先手は受けにくい。佐藤が逆転勝ちを収め、続く第2局も相掛かりの二転三転する戦いを佐藤が制した

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チーム天彦は全面勝利で6ポイントを獲得し、本戦進出に大きく近づいた。チーム稲葉はマイナス6ポイントと苦しいスタート。だが、秒読みの泥仕合もあり、意外なほど差が開いたといえる。チーム稲葉はチーム渡辺との戦いを残しており、まだ予選を抜けられる可能性はある。最後に意気込みを聞かれた稲葉は「チームとして気持ちを切り替えていきたいと思っています」と語った。

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おしゃれチームVSインビクタス!予選Bリーグ 第一試合<チーム天彦 VS チーム稲葉>
予選Aリーグ第一試合<チーム豊島 VS チーム久保>
予選Aリーグ第二試合<チーム豊島 VS チーム三浦>
予選Aリーグ第三試合<チーム久保 VS チーム三浦>
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AbemaTVトーナメント

紋蛇

ライター紋蛇

2012年より、ネット中継に携わる。担当局で一番長い中継が2013年3月の第71期順位戦C級1組の森けい二九段-近藤正和六段戦で、持将棋の末指し直しとなり、終局時刻は翌日の朝5時40分。「中継は体力だ」と痛感している。

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