ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2020年05月15日
緊急事態宣言の延長により、今月も対局が少ない状況が続いています。そんな中でもマイナビ女子オープン第3局や竜王戦1組決勝など、注目の対局が行われているので振り返っていきましょう。
【第1図は△6二玉まで】
第1図は第13期マイナビ女子オープン五番勝負第3局(▲加藤桃子女流三段△西山朋佳女王)。三間飛車に加藤女流三段が珍しい仕掛けを見せました。玉もほとんど動いていませんが▲4五歩と動きます。最近では珍しくなった「振り飛車には角交換を狙え」です。以下△4五同歩▲3三角成△同銀▲6五角からうまく攻めをつなぎ、先手の快勝となっています。加藤女流三段が2勝1敗とリードし、復位まであと1勝です。
【第2図は▲8八飛まで】
第2図は第33期竜王戦ランキング戦1組決勝(▲佐藤和俊七段△羽生善治九段)。先手は▲8五歩からの逆襲が分かりやすく、後手は何か動く必要のある局面です。△4四角▲6七金△3五歩が「不利な時は戦線拡大」です。▲8五歩△3六歩▲8四歩△3三銀右と桂の利きに銀を上がり、▲8三歩成に△3二飛の転回を用意しました。以下はうまく玉頭から手にした後手が、最後は大差で制しています。羽生九段が1組優勝でスーパーシードです。
【第3図は△3三桂まで】
第3図は第33期竜王戦1組出場者決定戦(▲久保利明九段△稲葉陽八段)。振り飛車から相銀冠の中盤戦です。▲4八飛が「戦いの起こった筋に飛車を振れ」の基本手筋です。後手は△8六歩▲同歩と突き捨ててから△4三金直で4筋に備えましたが、今度は▲8八飛と振り直します。以下は▲6八角~▲4七金引から▲2五歩の攻めを実現させ、先手が制勝しています。久保九段は1組3位で決勝トーナメント進出。
【第4図は▲2八金打まで】
第4図は第68期王座戦挑戦者決定トーナメント(▲増田康宏六段△渡辺明三冠)。激戦の終盤戦です。「終盤は駒の損得より速度」で当然馬は逃げません。実戦は△7六香▲2九金△7八香成と攻め合います。そこで▲3五桂も攻防手でギリギリの寄せ合いですが、最後は後手が長手数の即詰みに討ち取っています。渡辺三冠が決勝トーナメントの開幕戦を制しました。
【第5図は▲6一飛まで】
第5図は第3回AbemaTVトーナメント予選Bリーグ(▲渡辺明三冠△佐藤天彦九段)。持将棋の大熱戦もあって盛り上がった三番勝負の最終局です。ここから△7三銀打▲7八玉△8八馬▲同銀△5二金と空中要塞を築き「中段玉寄せにくし」です。これで後手玉が一気に見えなくなりました。攻めも細くなりましたが▲5七角に△3三桂と遊び駒を活用し、4枚の桂で手を作った後手が制しています。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段