第3回AbemaTVトーナメント ~4月11日放送、予選Aリーグ1回戦・チーム豊島VSチーム久保振り返り~

第3回AbemaTVトーナメント ~4月11日放送、予選Aリーグ1回戦・チーム豊島VSチーム久保振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2020年04月17日

*前回の記事:史上初のドラフト団体戦、第3回AbemaTVトーナメントのルールは? ~4月11日放送、予選Aリーグ1回戦・チーム豊島VSチーム久保 事前特集~

4月11日に放映された第3回AbemaTVトーナメントの予選Aリーグ1回戦、チーム豊島対チーム久保の団体戦の模様をお送りする。

まずは「goodboys」と名付けられたチーム豊島が入場。引き続いて「チーム振り飛車」こと、チーム久保も姿を現す。

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チーム豊島の「goodboys」は、昨年の竜王戦七番勝負第6局予定地であった鹿児島県指宿市にて、チームメンバーが「badboys」と言われた(竜王戦中継ブログ参照)ことに由来があるが、「badじゃなくてgoodでありたいね」と佐々木勇気七段の願いから、その名前となった。
対する「チーム振り飛車」については今更言うまでもないだろう。「トーナメント全局、振り飛車で行く」とはリーダーの久保利明九段の宣言だ。

そして先鋒、中堅、大将が発表される。それぞれ以下の通りだ。

先鋒 斎藤明日斗四段―今泉健司四段
中堅 豊島将之竜王・名人―久保利明九段
大将 佐々木勇気七段―菅井竜也八段

奇しくも、両チームともリーダーを中堅に持ってきた。編成について豊島は「直前になって決めましたが、斎藤四段が先鋒で切り込み、そのあと二人で頑張っていきたい。大将は佐々木七段に任せたいと思いました」。久保は「年齢順になっているんですけど、長男・次男・三男(笑)。みんなで決めました」とそれぞれ語った。

対局に先立って行われる作戦会議で、チーム振り飛車は大きな作戦として「振り飛車で勝つのが大前提」と。そして「玉を固めやすい三間飛車か四間飛車で戦いたい」と今泉。

goodboysは「チーム振り飛車の穴熊が怖い」と、穴熊対策に重きを置くが、基本的に「堅い囲いを目指す」と。こうなると相穴熊になる可能性が高そうだが。「実戦的な指し方をしたいということだよね」と佐々木。

先鋒戦 斎藤四段VS今泉四段

振り駒の結果、先鋒戦の第1局は斎藤の先手となり、今泉が三間に飛車を振った。序盤は斎藤が急戦と持久戦の両狙いのような形に組む。「急戦を見せることで穴熊を牽制しているんですね」とは解説の藤井猛九段。

その作戦が生きたか、序盤で斎藤が形勢をリードして迎えたのが第1図。

【第1図は△4六銀まで】

ここで斎藤は手堅く▲4七歩と打ったが、これがまずかった。以下△5五銀▲2二飛に△6六歩が激痛なのだ。銀を引かせたことでこの歩が生じてしまった。対して▲6六同歩は△同銀で、次の△5五角が厳しい。△6六同銀に▲6七歩は△7七銀成▲同玉△6五桂で後手の攻めが続く。

「この形で6筋に歩が立つのは珍しいから、うっかりしやすい」と藤井九段。

斎藤は△6六歩に▲8八玉とかわしたが、△6七歩成▲同金△4五角▲6八歩△6六歩▲5六金△同銀▲同歩△同角▲7八銀打△同角成▲同玉△5五桂と進み、後手の攻めが止まらない。戻って、第1図では▲4一飛ならば先手が優位を維持できていた。

開幕局は今泉が攻め倒しての快勝でスタートを飾った。だが斎藤も先後を入れ替えた第2局で一矢報い、タイに戻す。そして再度の振り駒が行われた第3局は後手の今泉が制し、まずはチーム振り飛車が1ポイントを獲得した。

勝利した今泉は、初のフィッシャールールに関して「時間がありそうでなく、なさそうであるという感じですね。アマ棋戦での時計のたたき合いに近く、当時の経験が生きたなと思います」と語った。

そして惜敗の斎藤は「申し訳ない気持ちでいっぱいですけど、二人を信じて応援したいと思います」とコメント。

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中堅戦 豊島竜王・名人VS久保九段

続いて中堅戦の豊島―久保戦。やはり久保が振り飛車を作戦に選ぶ。1局目は久保先手の中飛車となり「苦しい将棋で、最後に何かあるかと思ったがなかった(久保)」という展開で豊島が先勝。だが2局目は「比較的うまく指せた」という言葉通りに、後手番で四間飛車を採用した久保が追い付いてタイに戻す。

3局目は再び先手を引いた久保が向飛車に進める。第2図はその中盤だが、ここからの▲4六歩△同歩▲9四歩△同歩▲同香△同香▲4四歩という進行を、「3局を通して最も印象に残った順」と久保は振り返った。

【第2図は△3二金まで】

「攻めとしては細いが、銀を取ることが出来たのでまずまず」という。4六に残った拠点も大きいが、以下は久保が細そうな攻めをつないで勝ち切り、1ポイントをゲット。

熱戦を制した久保は「さすがにホッとしました。1局でも消耗するので、3局指し切れたのはよかった。フィッシャールールで炎の十番勝負対菅井戦をやっておいてよかった、経験が生きたと思います」と振り返る。

また豊島は「全体的に押されていました。3局目で仕掛けを与えたのがうっかりで、ペースをつかまれてしまいました。自分がポイントを稼ぎたかったのですが、佐々木君に期待したいですね」と語った。

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大将戦 佐々木七段VS菅井八段

大将戦は佐々木―菅井。先鋒戦、中堅戦と制したチーム振り飛車は、通常の団体戦なら勝利が決まっているが、今回のルールでは大将戦で佐々木が2連勝すると、ともにポイントがゼロに戻るので、タイに持ち込める。

果たして、第1局は先手番の佐々木が菅井の四間飛車を破った。こうなると第2局の結果の比重が大きくなる。その一局は最終盤でドラマが待っていた。

詰むや詰まざるやの第3図。

【第3図は▲3九同玉まで】

佐々木は△3八歩▲2八玉△3九角▲1九玉△2八金▲同銀△同角成▲同玉△3九銀と迫ったが、▲3八玉△3七歩▲4七玉△4八飛▲5六玉と進み、先手玉が逃げ切った。「すごい将棋だった」「いい将棋でしたね」とは双方のチームメイト。

実は第3図で△6九飛ならば先手玉が詰んでいた。以下▲4九歩には△2九金▲3八玉△4七銀▲2九玉△4九飛成▲2八玉△3九角▲1九玉△4八角成▲2九金△同竜▲同玉△3八金▲1九玉△3七馬という順が一例である。

あるいは実戦手順の▲1九玉に△2八金ではなく△5七角成ならば、この手が詰めろ逃れの詰めろとなり、やはり後手勝ち筋だったのだが、時間がない最終盤で△5七角成と下駄を預けるのは指せなくとも致し方ないだろう。

最終第3局は菅井の先手に。3局とも菅井四間飛車の相穴熊となったのは、両者の意地だろう。第4図は後手が4七の銀で先手の3六銀を取った局面だが、ここでの▲6三角がプロなら第一感とはいえ、好手である。飛車を逃げれば▲3六角成の形が手厚く、先手必勝ともいえる局面だ。

【第4図は△3六銀不成】

佐々木は残り1秒の瞬間に△2五銀と指し、▲5二角成に△4七歩成と、このと金に命運を託したが、以下▲5六馬△4六歩▲8二飛△4三金寄▲8一飛成△4二金引▲同馬△同金上▲4三歩と進み、やはり先手優勢。なんといっても駒の損得が大きい。

以下も菅井が押し切り、制勝。「先輩二人が勝ってくれたので、自分一人が負けるわけにはいかないと思っていました」と菅井はホッとした表情を見せる。

対して佐々木は「AbemaTVトーナメントで負けると悔しいのは第1回から変わりませんが、強くなろうと改めて思う機会でした」と語った。

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予選Aリーグ1回戦の結果、チーム久保が3ポイント獲得の好スタート。対してチーム豊島はマイナス3ポイントと苦しい出だし。「開幕で不慣れな部分もあったが、結果が残せてよかった」と久保リーダー。事前の宣言通り、全局振り飛車で通せたことにも安堵していた。対する豊島リーダーは「振り飛車チームの経験値の高さを感じました」と振り返った。

次回は4月18日に予選Aリーグ2回戦、チーム豊島対チーム三浦戦が放映される予定である。

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AbemaTV将棋チャンネル 第3回AbemaTVトーナメント

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相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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