女流三冠・西山女王に、女王の最多記録保持者・加藤女流三段が挑戦。第13期マイナビ女子オープン五番勝負の展望は?

女流三冠・西山女王に、女王の最多記録保持者・加藤女流三段が挑戦。第13期マイナビ女子オープン五番勝負の展望は?

ライター: 上田初美女流四段  更新: 2020年04月06日

将棋界は年度区切りが通例となっており、4月は新年度の始まりの月になる。

毎年公式戦は名人戦、女流棋戦はマイナビ女子オープンの番勝負がそれぞれ開幕を告げる。今期の第13期マイナビ女子オープンは、3月6日に清水市代女流六段(当時)と加藤桃子女流三段による挑戦者決定戦が行われた。
相掛かりの出だしから早々に定跡形を外れ、互いの構想力を問われる展開となった。先にリードを奪ったのは加藤。決め手を与えないよう辛抱する清水に対し、慌てずにじりじりと差を広げる指し回しが光り、快勝で西山朋佳女王への挑戦権を獲得した。

4月7日から始まる第13期マイナビ女子オープン五番勝負の展望を予想する。

女王の最多記録保持者 加藤桃子女流三段

加藤は昨年度奨励会を退会し、女流棋士に転向した。奨励会在籍時に残したタイトル獲得8期には女王4連覇が含まれる(他は女流王座4期)。これは女王保持の現在の最多記録となっている。

女流三段として新たなスタートを切った昨年度は24勝6敗(0.800)で、女流棋士の年度最高勝率をマークした。マイナビ女子オープン挑戦者決定戦の4日前には女流王位戦でも挑戦権を獲得している。

パワフルで思い切った攻めを持ち味とした居飛車党。一方で相手の攻めが細い時には徹底的に受け潰す一面もあり、勝ちパターンを複数持っている女流棋士の一人だ。

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第11期マイナビ女子オープン第2局の加藤

第1図は挑戦者決定戦の清水戦の中盤(71手目)。桂得の上に△7六歩の拠点が大きく既に後手が優勢。しかし角が働いていないため、直接勝ちに行くのは難しい局面だ。

 【第1図は▲6六歩まで】

第1図以下の指し手
△3五歩▲5四歩△同飛▲4五金△7四飛▲5四歩△5六桂▲6七金△4四銀▲5六金△4五銀▲同金△7七歩成▲3四桂△6六角

△3五歩は相手からの攻めが無いことを読み切った上で次の△2四歩を見せ、焦らせることにより無理に動いてもらおうという意図。自分の読みに自信を持っていないと指せない一手である。止むを得ず動いていく清水の手に乗って△4四銀と捌き、更に△6六角と懸念材料の角を世に出すことに成功し、先手勝勢となった。

女流三冠 西山朋佳女王

その加藤を迎えるのは西山朋佳女王。昨年度の女流棋戦では里見香奈女流四冠(当時)の挑戦を退け、女王を防衛。その後女流王将戦、女流王座戦と連続で里見と対戦し、どちらも奪取。女流三冠となった。

またご存知の通り西山は同時に奨励会員として三段リーグを戦っている。前期三段リーグでは14勝4敗と好成績をあげ、次点を獲得した。女流棋戦のみならず、参加している公式戦でも気持ちのいい勝ちっぷりを見せてくれる、今将棋界で最も注目されている女性だろう。

力戦形を主戦場とする振り飛車党で、その凄まじいパンチ力はまさに剛腕と言わざるを得ない。タイトル戦歴の浅い時期はまだ戸惑いなども見られたが、近年は盤上にその力を存分に発揮しており、特に最近では対局姿から第一人者としての風格が感じられる。

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第12期マイナビ女子オープン第4局の西山

第2図は竜王戦ランキング戦6組1回戦の小林宏七段との一戦(30手目)。まだ序盤でこれから駒組が続くかと思いきや、早速西山がパンチを繰り出した。

【第2図は△1二香まで】

第2図以降の指し手
▲3三飛成△同金▲7一角△5二飛▲3五角成△1一玉▲4五馬△6二飛▲5五銀△5三銀▲5四銀

いきなり飛角交換をして▲7一角~3五角成が好判断。角成が一瞬甘いので読みの盲点になりやすいが、先手玉は低い構えのため飛車を持たれても響きが薄い。▲5五銀~5四銀の進軍も力強く、形勢を一気に引き寄せた。以下も寄せ合いを正確に読み切り1回戦突破。なお竜王戦ではこの後も勝ちを重ねて現在ベスト4まで勝ち進んでいる。

両者のこれまでの対戦成績は西山の5勝、加藤の4勝。番勝負では平成26年の女流王座戦(3連勝で加藤防衛)、平成30年のマイナビ女子オープン(3勝1敗で西山奪取)の2度顔を合わせており、結果は1勝1敗の五分となっている。最初に加藤が4連勝しているため、現在は西山の5連勝中。そういった意味でも加藤としては早い段階でまず1勝をして、番勝負特有の「流れ」を味方につけたいところだろう。

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第11期マイナビ女子オープン第2局の前日の様子

戦型は西山の振り飛車、加藤の居飛車になる可能性が極めて高い。加藤の序盤研究には定評があるが、前述の通り西山の振り飛車は力戦形が多く、的を絞るのは難しい。中盤の力勝負が大きなカギを握ることだろう。パワーとパワーが正面からぶつかるのか、それとも全く違った展開を目指すのか。いずれにしろ熱い戦いになることを期待している。

第13期マイナビ女子オープン五番勝負は4月7日、神奈川県「元湯 陣屋」にて開幕する。

画像はすべて 撮影:常盤秀樹

上田初美女流四段

ライター上田初美女流四段

1988年11月16日生まれ。東京都小平市出身。伊藤果八段門下。第31期女流王将戦でタイトル初挑戦。第4期マイナビ女子オープンで初タイトルを奪取。2015年11月から2016年3月まで産休の為休場していたが、復帰後の第43期岡田美術館杯女流名人戦、第11期マイナビ女子オープンを一児のママとしてタイトル戦に挑戦した。

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