広瀬八段がタイトル獲得に王手の3勝目 第69期大阪王将杯王将戦七番勝負第5局をダイジェストで振り返る

広瀬八段がタイトル獲得に王手の3勝目 第69期大阪王将杯王将戦七番勝負第5局をダイジェストで振り返る

ライター:   更新: 2020年03月13日

渡辺明王将に広瀬章人八段が挑戦する第69期大阪王将杯王将戦七番勝負、第5局が3月5・6日に大阪府大阪市「KKRホテル大阪」で行われました。

渡辺王将は前期に王将に返り咲いての防衛戦、広瀬八段は初の挑戦となる大阪王将杯王将戦。第1局・第3局は渡辺王将が勝ち、第2局・第4局は広瀬八段が勝って、2勝2敗のタイで迎えた第5局をダイジェストで振り返ります。

*第1局ダイジェスト
*第2局ダイジェスト
*第3局ダイジェスト
*第4局ダイジェスト
(参考:王将戦中継ブログ)

対局開始 戦型は相矢倉に

第5局の先手番は渡辺王将、立会人は東和男八段です。
定刻の9時に開始され、相矢倉の出だしとなりました。

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先手・渡辺王将の初手は▲7六歩

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後手・広瀬八段は△8四歩と飛車先の歩を突いた

広瀬八段の長考から封じ手へ

下図の局面で、広瀬八段が1時間半の長考に沈みます。

【図は51手目▲2五歩まで】

広瀬八段は、52手目△2五同歩と自然に応じました。

数手進んだ下図の局面で広瀬八段が57分を使い、次の一手を封じました。
一日目の消費時間は▲渡辺3時間7分、△広瀬4時間26分でした。

【図は59手目▲4一角まで】

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封じ手が入った封筒が立会人の東八段に渡された

封じ手開封から意外な展開へ

封じ手封筒が開封され、対局が再開しました。広瀬八段の封じ手は△8六歩でした。

【図は60手目△8六歩まで】

61手目▲8六同銀、62手目△1四歩と指されたのち、渡辺王将は1時間10分の長考で、下図の通り▲63手目1四同香と、取られそうな香を差し出す代わりに1歩を入手しました。

【図は63手目▲1四同香まで】

69手目、銀に当てて角を成った渡辺王将。

【図は69手目▲6三角成まで】

これに対し、広瀬八段が70手目△7三銀と指すと、検討室では「そちらに、なぜ...」と、意表を突かれた声が上がりました。

両者引かず、終盤戦へ

【図は97手目▲2六銀まで】

控室では△2五香から後手玉の上部開拓をする変化が調べられていましたが、実戦は98手目△7六歩と攻め合いました。

このあと、両者の持ち時間は1時間を切りました。

本局の戦法は、相矢倉の主要変化のひとつ、先後同型の「脇システム」。その生みの親である脇謙二八段が控室を訪れ、検討に加わっています。

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脇八段

盲点の受け方

【図は120手目△2二香まで】

広瀬八段は、王手で先手に形を決めさせてから受けに回りました。

「この手は調べられていませんでしたね。手順の組み合わせが難しいところでしたが、香打ちの受け自体が挙がっていなかったと思います」と脇八段。

広瀬八段が難解な局面に持ち込んだか、それとも渡辺王将の読みの内か。形勢判断が難しい状況が続いています。

両者1分将棋へ

最終盤、詰むや詰まざるや含みの局面で、互いに1分将棋に入りました。継ぎ盤では明快な手段は示されておらず、白熱の戦いとなっています。

154手目△2七同玉で、ついに後手玉が先手陣に入りました。正しく逃げきれるのでしょうか。155手目▲2八歩に続いて、下図の通り広瀬八段は玉をかわします。

【図は156手目△3八玉まで】

第5局は広瀬八段が制す

162手までで渡辺王将が投了しました。

勝った広瀬八段はシリーズ成績を3勝2敗とし、タイトル奪取まであと1勝となりました。

【投了図は162手目△2六玉まで】

終局後インタビュー

勝った広瀬八段へのインタビュー

―― 封じ手以降は受けの展開が多かったようですが、形勢はどう見ていましたか。

駒得という感じには見えなくて、しばらく進むと形勢が悪くなってしまったように思います。元々悪かったのかどうかは分からなかったです。

―― 最終盤、勝ちを意識した局面はどこあたりでしたか。

最後は詰んでいた可能性もあったのですが、最後の最後で156手目△3八玉でギリギリ詰まないように思いました。

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3勝目で自身初の王将に王手をかけた広瀬八段

渡辺王将へのインタビュー

―― 対局一日目を振り返っていかがでしたか。

封じ手のところは互角だと思っていました。駒割りも互角なので。62手目△1四歩で先に香を取られてからは苦戦を意識していました。

―― 69手目▲6三角成のあたりは神経を使う手が続きました。

あのあたりは香損なので、仕掛けたわりにはイマイチといった感じでした。やはり香損してからは苦しかったと思います。

―― 97手目▲2六銀で挟撃態勢を築きました。

あのときは好転したと思ったのですが、そのあとの寄せ方が......何だか方針がちぐはぐだったのか、受けるなら受ける、攻めるなら攻めるとするところで、中途半端な指し方をしてしまいましたね。

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渡辺王将

第6局は3月13・14日(金・土)、佐賀県三養基郡「大幸園」で行われます。

大阪王将杯王将戦七番勝負 中継情報

第69期大阪王将杯王将戦七番勝負の模様は下記メディアで中継されます。

◆毎日新聞ニュースサイト
◆将棋プレミアム(※要会員登録・有料)
◆王将戦中継ブログ
◆将棋連盟ライブ中継アプリ

今回の将棋飯まとめ

【一日目】

午前のおやつ

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渡辺王将:苺のショートケーキとコーヒー

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広瀬八段:ぜんざいとわらびもちのセット

昼食

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渡辺王将:「復刻王将定食」と「復刻創業餃子」

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広瀬八段:「五目炒飯」と「復刻創業餃子」

昼食は第1局と同じく、大阪王将が将棋メシを提供。大阪王将のキッチンカーで調理されました。

午後のおやつ

渡辺王将はホットコーヒー、広瀬八段はフルーツ盛り合わせとホットレモンティーをオーダー。

【二日目】

午前のおやつ

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渡辺王将の苺のショートケーキ、広瀬八段はフルーツの盛り合わせ。飲み物は両対局者ともホットコーヒーをオーダーしました。

昼食

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渡辺王将:きつねうどん

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広瀬八段:ブラックカレー

午後のおやつ

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渡辺王将:チョコレートケーキとホットコーヒー

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広瀬八段:フルーツの盛り合わせとホットレモンティー

七番勝負日程

  対局日 対局場 立会
1 1月12、13日(日、月祝) 静岡県掛川市
「掛川城 二の丸茶室」
立会:中村修九段
副立会:神谷広志八段
2 1月25、26日(土、日) 大阪府高槻市「山水館」 立会:桐山清澄九段
副立会:稲葉陽八段
3 2月8、9日(土、日) 栃木県大田原市「ホテル花月」 立会:青野照市九段
副立会:中座真七段
4 2月20、21日(木、金) 神奈川県足柄下郡「ホテル花月園」 立会:深浦康市九段
副立会:中田宏樹八段
5 3月5、6日(木、金) 大阪府大阪市「KKRホテル大阪」 立会:東和男八段
副立会:大石直嗣七段
6 3月13、14日(金、土) 佐賀県三養基郡「大幸園」 立会:福崎文吾九段
副立会:糸谷哲郎八段
7 3月25、26日(水、木) 新潟県佐渡市
「佐渡グリーンホテルきらく」
立会:佐藤義則九段
副立会:

王将戦ダイジェスト

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