ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2020年03月31日
大阪王将杯王将戦、棋王戦とダブル防衛戦を戦っていた渡辺明三冠ですが、底力を見せて三冠を堅持しました。また、王位リーグも佳境に入っています。
【第1図は△3六馬まで】
第1図は第69期大阪王将杯王将戦七番勝負第7局(▲渡辺明王将△広瀬章人八段)。フルセットとなったシリーズ最終局は矢倉に後手が急戦を目指しました。図から▲7九玉が「玉の早逃げ8手の得」で、先手玉の安全度がさらに高まりました。これで攻めに専念することができます。以下△4七と▲5六銀△4六とに▲3一飛成から攻めて先手優勢です。以下後手も粘りを見せて大熱戦となりましたが、最後は渡辺王将が押し切って4勝3敗で防衛となりました。
王将戦中継ブログより
【第2図は△3九角まで】
第2図は第45期棋王戦五番勝負第4局(▲本田奎五段△渡辺明棋王)。後手が△3九角と打ち込んで馬作りを狙ってきたところです。居飛車にはこの筋があるので「角交換には5筋を突くな」の格言があります。▲3八飛や▲2六飛では△7五角成で後手十分ですが、▲6六角△2八角成▲同銀が「序盤は飛車よりも角」です。駒組みがあまり進んでいないため、先手陣には飛車を打ち込むスキがなく形勢のバランスは取れています。以下は手将棋となりましたが、9筋から手を作った渡辺棋王が制勝し、3勝1敗で防衛を果たしています。
棋王戦中継ブログより
【第3図は△6一玉まで】
第3図は第69回NHK杯将棋トーナメント決勝(▲深浦康市九段△稲葉陽八段)。どちらが勝っても初優勝の一戦です。先手がうまく戦機をとらえ優位に立ちました。図から▲8一飛成△7一飛▲7三桂△同金▲5二歩成△同玉▲7一竜と「寄せは俗手で」攻めて先手勝勢です。後手は合駒が悪いため、平凡な▲8一飛成が厳しくなっています。以下は飛車を奪いながらの寄せで間違いはなく、先手玉は安全なので逆転の余地がありません。快勝で深浦九段が久しぶりの棋戦優勝です。
【第4図は△5二銀まで】
第4図は第61期王位戦挑戦者決定リーグ紅組(▲佐々木大地五段△永瀬拓矢二冠)。2連勝同士でリーグ優勝争いに影響する一番です。先手はどのような方針で指すか難しいところですが、▲8七玉△8四飛▲9六玉が「中段玉寄せにくし」です。手順に拠点の歩も払い、先手玉は安全になりました。以下△2六香から後手も上部開拓の準備をし、大熱戦の末に持将棋となりました。指し直し局は永瀬二冠が制し、リーグ優勝に大きく近付いています。
【第5図は△7四同玉まで】
第5図は第61期王位戦挑戦者決定リーグ白組(▲藤井聡太七段△稲葉陽八段)。後手優勢の局面が続いていましたが、一瞬の切れ味を見せて逆転した局面です。ここから▲6六桂△7三玉▲6四銀△6二玉▲5四桂△同馬▲6三銀打から後手玉は詰んでいます。「金はトドメに残せ」です。これで藤井七段も3連勝となり、こちらもリーグ優勝に前進しています。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段