大阪王将杯王将戦は広瀬八段が勝ち1勝1敗に、里見女流名人が2連勝、叡王戦は豊島VS渡辺の戦いに。1月下旬の注目対局を格言で振り返る

大阪王将杯王将戦は広瀬八段が勝ち1勝1敗に、里見女流名人が2連勝、叡王戦は豊島VS渡辺の戦いに。1月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2020年02月03日

A級順位戦は競争相手が敗れ渡辺明三冠の名人初挑戦が決まりました。豊島将之名人とのシリーズは激戦の予感です。

第69期大阪王将杯王将戦七番勝負第2局

【第1図は△2四歩まで】

第1図は第69期大阪王将杯王将戦七番勝負第2局(▲広瀬章人八段△渡辺明王将)。いま△2四歩と飛車を取られたところです。先手の持駒は豊富ですが、後手玉は広いので逃げられてはいけません。▲6二銀が「玉は包むように寄せよ」です。金取りと▲5三金からの詰めろで、△6三金にも▲5一銀打から▲3三香成の寄せがあります。実戦は△5三銀▲7三銀成△5五馬▲6六銀△7三馬と頑張りましたが、▲3三香成△同桂▲3四銀から寄せきりました。広瀬八段が1勝を返しシリーズは面白くなりました。

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王将戦中継ブログより

第46期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第1局

【第2図は▲3八玉まで】

第2図は第46期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第1局(▲谷口由紀女流三段△里見香奈女流名人)。女流棋界の新記録となる11連覇を目指す里見女流名人と、初タイトルを目指す谷口女流三段のシリーズが開幕しました。うまく立ち回り歩得の後手が作戦勝ちです。あとは具体的にどう良くするかという局面で、△1三桂▲5七金直△2五桂が「遊び駒は活用せよ」です。「攻めは飛角銀桂」にも則っています。以下は一方的に攻め潰して後手の快勝となっています。

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勝った里見女流名人 岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより

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谷口女流三段 岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより

第46期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第2局

【第3図は△5七銀まで】

第3図は女流名人戦の第2局です(▲里見女流名人△谷口女流三段)。本局は里見女流名人が居飛車を選び、谷口女流三段の振り飛車を迎え撃ちました。堅陣からうまくさばいて先手優勢です。飛車取りですが、「終盤は駒の損得より速度」でもちろん飛車は逃げません。▲8五歩△6七桂▲6九金△6八歩▲8四歩△6九歩成▲8三金から一気に寄せきりました。第1局に続く快勝で、防衛まであと1勝です。

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岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより

第5期叡王戦本戦トーナメント

【第4図は▲6九飛まで】

第4図は第5期叡王戦本戦(▲青嶋未来五段△渡辺明三冠)。次に▲6五歩があるので、ここは後手も動きどころです。△8六歩が「開戦は歩の突き捨てから」で飛車をさばく居飛車の必修手筋です。以下▲同歩△4五歩▲3七桂△5五銀▲4五桂△5六銀と大決戦になりました。結果は渡辺三冠が貫録を見せ、挑戦者決定三番勝負に進出しています。

第5期叡王戦本戦トーナメント

【第5図は▲8四歩まで】

続いて第5図も叡王戦本戦(▲佐々木大地五段△豊島将之竜王・名人)。図で△7八とと取ってしまうと寄せるのが難しくなります。△6六桂が基本の寄せ。▲8七金には△7八金があります。「金は斜めに誘え」の応用と言えるでしょう。
準決勝の2局はどちらもタイトルホルダーが制し、永瀬拓矢叡王にとってはどちらが来ても最強の挑戦者です。

棋士編入試験 五番勝負第3局

【第6図は▲5三銀まで】

第6図は折田翔吾アマの棋士編入試験五番勝負第3局(▲山本博志四段△折田翔吾アマ)。三間飛車から長い戦いとなりましたが、図ははっきり後手が優勢となっています。手段は色々ありますが、△5五歩が「馬は自陣に引け」を目指した手堅い手。以下手数は掛かったものの、折田アマが盤石の指し回しで勝ちきっています。これで2勝1敗とプロ棋士まであと1勝となりましたが、次の相手は棋王戦に挑戦中の俊英本田奎五段です。夢をつかむことができるでしょうか。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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