十段戦挑戦者決定リーグ米長VS森安戦でも使われた「対右玉地下鉄飛車」の組み方とは?

十段戦挑戦者決定リーグ米長VS森安戦でも使われた「対右玉地下鉄飛車」の組み方とは?

ライター: 一瀬浩司  更新: 2020年01月19日

今回のコラムでは「地下鉄飛車」をご紹介します。え? 地下鉄飛車? 前にやったよね? と思われるかもしれません。ですが、以前ご紹介した地下鉄飛車は、対振り飛車でのものでした。今回は相居飛車戦での地下鉄飛車となり、形も違います。では、さっそくどういう囲いなのかを見ていきましょう。

囲いの特徴:第1図をご覧ください。

【第1図は△6二玉まで】

昭和53年5月11日、第17期十段戦挑戦者決定リーグ、▲米長邦雄八段ー△森安秀光七段戦(肩書は当時)です。なんの変哲もない角換わり右玉の序盤戦に見えますが、ここから米長永世棋聖は▲6七金左! としました。現在流行している土居矢倉のようですが、狙いはまったく違います。以下、△7二玉▲7八玉△5四歩▲2九飛△6二金▲8八銀△4四銀▲5六歩△3五歩▲同歩△同銀▲3六歩△4四銀▲7七桂△3三桂▲9八香△5五歩▲9九飛(第2図)と進みました。

【第2図は▲9九飛まで】

せっかく8筋の歩交換を防いでいた7七の銀を、8八に引いた局面ではまだ狙いがわからなかった方も多かったかもしれません。ですが、第2図まで進んでみると、右玉の薄い端にぐるりと飛車を転回し、地下鉄飛車が完成しました。

第2図から、森安九段は△8四角と打って端を守り、▲5七金上△5四銀▲1八角! から本格的な戦いが始まりました。角を投入して端を守られたため、▲9五歩の端攻めは実現しませんでしたが、角を手放させることができ、のちに▲8五桂(△同桂は▲8六歩)の強手も飛び出して、米長永世棋聖が勝利しました。

今回の地下鉄飛車は、右玉の薄い端を狙った囲い方でした。プロの実戦では、手数がかかるため、なかなか▲9五歩と端から仕掛けるところまではいきませんが、端攻めを見せて、右玉側を焦らせるという狙いもあります。右玉は、後手番では千日手辞さずの戦法でもありますので、じっとしていたら端から攻めるよ、とプレッシャーをかけて動きを催促しているのです。それでは、いつも通り先手側の駒だけを配置して、囲いに組むまでの手順を見ていきましょう。

囲いを組むまでの手順:初手から、▲7六歩、▲2六歩、▲7七角、▲6八銀、▲7八金、(△7七角成)▲同銀、▲4八銀、▲6八玉、▲4六歩、▲4七銀(第3図)。

【第3図は▲4七銀まで】

近年は▲2六歩~▲2五歩と相掛かりの出だしから角換わりになることが多いですが、今回は以前圧倒的に多かった▲7六歩スタートで見ていきます。第3図から、▲9六歩、▲1六歩、▲3六歩、▲5八金、▲2五歩、▲6六歩(第4図)。

【第4図は▲6六歩まで】

現代調に▲4八金と上がる手も考えられますが、やはり玉が薄いのが気になりますので、5八のほうがよいでしょう。第4図から、▲6七金左、▲7八玉、▲3七桂、▲2九飛、▲5六歩、▲8八銀、▲7七桂、▲9八香、▲9九飛(第5図)。

【第5図は▲9九飛まで】

長手数になりましたが、第5図で地下鉄飛車の完成です。次回は組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。

玉の囲い方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。
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