「四段昇段の記」藤井聡太七段、佐々木勇気七段

「四段昇段の記」藤井聡太七段、佐々木勇気七段

ライター: 将棋情報局(マイナビ出版)  更新: 2020年01月14日

「将棋世界」に掲載された人気連載「四段昇段の記」から、佐々木勇気七段藤井聡太七段のコラムをお届けします。

『スタートライン』佐々木勇気(2010年11月号掲載)

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生年月日 1994年8月5日
出身地 埼玉県三郷市
師匠 石田和雄九段
昇段履歴 2004年9月:6級(10歳)
2008年4月:三段(13歳)
2010年10月:四段(16歳)
2014年3月:五段(19歳)
2017年7月:六段(22歳)
2018年11月:七段(24歳)
三段リーグ成績 【第44回(08年後期)】12勝6敗
【第45回(09年前期)】9勝9敗
【第46回(09年後期)】13勝5敗
【第47期(10年前期)】14勝4敗
同時昇段 船江恒平

この原稿を書きながら少しずつプロになったという実感が湧いてきました。

思い起こせば、小学4年生のときに奨励会に入会しました。当時は定跡も何も知らず勢いだけで勝っていた気がします。そして中学2年生の秋に三段リーグに入りました。

1期目は勢いがあり、実力以上の将棋が指せて12勝できましたが、2期目は9勝と実力不足を感じました。この2期目はライバルを昇段させてしまい、また新人王戦にも一歩及ばず出場できないという悔しい体験をしました。このときに人一倍努力しないといけないと思い、序盤を研究するようになりました。しかし、3期目も勝負どころでライバルに負けてしまい、三段リーグの厳しさを痛感しました。そしてライバルがプロとして活躍している様子を見て、うらやましい思いと同時に焦りも感じていました。

4期目の今期は山場と思っていた斎藤戦で完敗してしまい、流れをつかめないまま6勝4敗という絶望的な状況になってしまいました。しかし、ここで諦めずに最後まで頑張ろうと決めたことが、昇段につながったと思います。

【図は▲6二金まで】

図は荒木戦の終盤の局面。この直前に勝負手を指され、一分将棋の中で動揺していました。ここで☗7一銀と王手しました。読みきれていませんでしたが、詰みが見えたときの興奮は忘れられません。

自分はやっとスタートラインに立てたと思います。道のりは厳しいと思いますが、一歩一歩駆け上がっていきたいです。また、自分の力がどれほど通用するのか楽しみです。三段時代に積み重ねてきた経験や研究を発揮したいと思います。

最後になりましたが、応援してくださったすべての方々、教えてくださった先生方に感謝の気持ちで一杯です。これからも一局一局、全力で戦っていきたいと思います。

『師匠の言葉』藤井聡太(2016年11月号掲載)

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生年月日 2002年7月19日
出身地 愛知県瀬戸市
師匠 杉本昌隆八段
昇段履歴 2012年9月:6級(10歳)
2016年4月:三段(13歳)
2016年10月:四段(14歳)
2018年2月:五段(15歳)
2018年2月:六段(15歳)
2018年5月:七段(15歳)
三段リーグ成績 【第59回(16年前期)】13勝5敗
同時昇段 大橋貴洸

正直負けないと思っていた。

平成27年8月第一例会、ぼくは編入試験者のSさんと当たった。相手の先手で、変則的な矢倉戦。中盤の早い段階で双方持ち時間を使いきって、その後は延々と一分将棋が続いた。迫りくる秒読みの音、慌てた様子で着手するSさん。一方ぼくは、57秒のあたりでそれなりに余裕をもって着手していた。傍目からはぼくが勝っているようにも見えただろう。だが、二転三転の末、最後に間違えたのはぼくだった。対局開始から4時間半、ぼくの玉は敵陣の一段目で詰まされていた。

3月に二段に上がったとき、師匠からは「10月の三段リーグまでに上がるように」と激励していただいた。実際ぼくは、6月からほぼ負けなしの8勝1敗、昇段はもうすぐそこというところまできていた。そんな状況で迎えたのが前述の一戦だ。結局その日は連敗。三段に上がったのはリーグ開始にぎりぎり間に合わない10月18日だった。

そして今期、初参加だが、実質2期目だと思って、最初から昇段を目指そうと思っていた。しかし、気合を入れて挑んだ初日は1勝1敗。内容も悪く、三段リーグの厳しさを思い知らされた。リーグは長丁場で、序盤に負けが込むと昇段争いに絡むことが難しくなってしまう。そのことを意識しすぎて、少し硬くなっていたのかもしれない。そこで、「勝敗は指し手についてくるもの。対局中は最善手を探すことに集中しよう」と決めた。

それがよかったのか、それから星が伸び出した。その後、何度かつまずいたが、最終日は自力で迎えることができた。その数日前、師匠にお会いしたとき、「心配はしてないから」と言われた。師匠はぼくを信じてくれている、その信頼に応えたいと強く思った。

1局目は敗れてしまったが、幸い自力の目が残って迎えた大一番。ぼくは師匠の言葉を思い出し、落ち着いて指すことができた。昇段が決まったときは、ほっとした。しかし半年間の遅れを取り戻すつもりで気を引き締めて進んでいきたい。

最後に、どんなときも温かく見守ってくれた家族、子ども教室の文本先生、奨励会に入る前から面倒を見てくださった稲葉聡さん、師匠の杉本先生。本当にお世話になりました。そして支えてくださったすべての方々。これからも日々精進していきます。ありがとうございました。

※本誌掲載時より一部編集

「四段昇段の記」シリーズ

(1)【久保利明九段、渡辺明三冠、窪田義行七段】編
(2)【野月浩貴八段、木村一基王位、三浦弘行九段】編
(3)【山崎隆之八段、稲葉陽八段、佐藤天彦九段】編
(4)【藤井聡太七段、佐々木勇気七段】編

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