右銀を先に上がった場合、角頭を攻められたらどうするの?「カニカニ銀」に組む際の注意点と発展形をご紹介

右銀を先に上がった場合、角頭を攻められたらどうするの?「カニカニ銀」に組む際の注意点と発展形をご紹介

ライター: 一瀬浩司  更新: 2019年12月16日

前回のコラムでは、破壊力抜群の戦法「カニカニ銀」の組み方を見ていきました。今回は、カニカニ銀に組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。それでは、まずは囲いの組むまでの手順の復習です。 初手から、▲7六歩、▲6八銀、▲7七銀、▲5六歩、▲4八銀、▲2六歩、▲2五歩、▲5七銀、▲4六銀、▲9六歩、▲9七角、▲5八飛、▲6六銀、▲7七桂(第1図)。

【第1図は▲7七桂まで】

それでは、組む際の注意点を見ていきましょう。
組む際の注意点:最初は矢倉の出だしですが、初手から▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩に▲6六歩と突いてしまうと、歩がいるために6六へ銀を出ることができず、カニカニ銀に組めなくなってしまいます。必ず5手目は▲7七銀としましょう。 また、前回は組むまでの手順で、右銀から上がっていきましたよね。これを左銀から上がるとどうでしょう? 一例として第2図をご覧ください。

【第2図は▲7七桂まで】

ここから、▲5七銀上~▲4六銀~▲5八飛~▲5五歩とあと四手させればよいのですが、現状は後手番です。△9五歩と突かれると、▲同歩は△同香で困りますし、また、放っておいても△9六歩~△8六歩と攻め込まれてしまいます。8筋を受ける駒が角で、端に上がるので、常に角頭を攻められることに警戒しておかなければなりません。

では、右銀を先に上がった場合でも角頭を攻められたらどうするの? と思われるかもしれません。

【第3図は△9五歩まで】

第3図は角頭を攻められてきたところです。先手の対策は二通りありますが、ひとつは素直に▲9五同歩と取ってしまいます。△同香で困らないの? と思われるでしょうが、ばっさり▲5三角成と切ってしまい、△同金に▲9五香と取れば角と銀香の二枚換えになったうえに、次の▲5五歩からの攻めが厳しく残って先手有利です。また、△8六歩と突かれても▲8五香の切り返しがあります。

二つ目は▲5五歩△同歩▲6五桂と攻める順です。以下△6四銀は▲5五銀右で支えきれないので、後手は△4二銀右と引いてきますが、▲5五銀右△9六歩に▲5四銀(第4図)と突進すれば△9七歩成は▲4三銀成ですし、△5四同金▲同飛△5二歩も▲5三歩と打てば先手の攻めを止めることができなくなります。

【第4図は▲5四銀まで】

このように、左銀を出る手を後回しにすれば、後手の角頭攻めが間に合わなくなることもあります。ただし、早めに△6四歩などと突かれてきたときは、角を切ることができなくなるので、注意が必要です。次に、囲いの発展形を見ていきましょう。

囲いの発展形:基本的に居玉で戦う戦法なので、発展させるということはありません。しかし、相手が5筋を突いてこなかった場合はどうするの? というところもあります。第5図をご覧ください。

【第5図は△4四歩まで】

平成12年2月17日、第26期棋王戦予選、▲児玉孝一七段ー△木下晃六段戦(肩書は当時)です。後手は5筋を突かない工夫をしてきました。これでは▲5八飛~▲6六銀などとしても5五で歩がぶつからないので威力が出ませんよね。そこで、児玉八段は▲7九角△4三金右▲3五歩と3筋から仕掛けていきました。こうなると、もし後手がのちに△3一角と引いてきても、5三の歩がジャマですぐ△6四角と反撃に出れませんよね。この場合は二枚目(7七の銀)の銀は繰り出さないことになる場合もありますが、カニカニ銀を指すうえでは、別バージョンということで押さえておきたい指し方です。

玉の囲い方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。
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