羽生、谷川、森内に次ぐ、史上4人目の「竜王・名人」の誕生。豊島名人が逆転で制した竜王戦第5局をダイジェストで振り返る。

羽生、谷川、森内に次ぐ、史上4人目の「竜王・名人」の誕生。豊島名人が逆転で制した竜王戦第5局をダイジェストで振り返る。

ライター:   更新: 2019年12月11日

広瀬章人竜王に豊島将之名人が挑戦する第32期竜王戦七番勝負第5局が12月6・7日に島根県鹿足郡津和野町「藩校 養老館」で行われました。
豊島名人が開幕3連勝、その後第4局で広瀬竜王が勝利し、1勝を返しました。広瀬竜王がさらにしのいで第6局へと繋げるか、豊島名人がここで決着をつけるか、竜王VS名人による注目の頂上決戦の第5局をダイジェストで振り返ります。

参考:竜王戦中継ブログ
◆第1局ダイジェスト
◆第2局ダイジェスト
◆第3局ダイジェスト
◆第4局ダイジェスト

対局開始、戦型は角換わりに

第4局の先手番は豊島名人、立会人は小林健二九段です。

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豊島名人はすぐに初手▲2六歩を着手

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広瀬竜王は1分使って、2手目に飛車先を突き返した

戦型は大方の予想通り角換わりとなりました。ただし先手は2六歩型で、飛車先保留の形を用いています。

【図は14手目△6二銀まで】

広瀬竜王の大長考

図の局面で広瀬竜王が考えています。桂を取れるものの、自陣のスキをどう消すかが悩ましいようです。

【図は47手目▲5六銀まで】

昼食休憩をはさみ、2時間の大長考で、△2三金と指しました。
48手目までの消費時間は▲豊島28分、△広瀬2時間39分で、消費時間に2時間11分の差がつきました。

【図は48手目△2三金まで】

封じ手へ

図の局面で豊島名人が45分考え、封じ手となりました。

【図は54手目△2五歩まで】

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封じ手の入った封筒を立会人の小林九段に渡す豊島名人

控室では「難しい将棋」と話されています。

「すごい将棋ですね。こんなに難しい将棋は見たことがない。お互いに駒得、手得よりも陣形のバランス重視ということなんでしょうけど、それが主流というのは驚きです」(鈴木大介九段)

「私にとって、興味がある将棋になりました。飛車先保留が生きるかどうか難しいとされているなかで、豊島名人がどう生かすかが注目されるテーマです。歩得と桂得の実利、どちらが生きるかがポイントでしょう」(糸谷哲郎八段)

封じ手開封から、千日手の可能性へ

封じ手が開封され、二日目の対局が始まりました。封じ手は、本命視されていた▲6五歩でした。

【図は55手目▲6五歩まで】

図は、豊島名人が▲7四歩と突いた局面。
控室では悲鳴に近い声が上がりました。図から△7四同飛▲7六歩△7五歩▲同歩△8四飛となれば▲7四歩で図の局面に戻り、千日手模様です。

【図は63手目▲7四歩まで】

千日手の回避、広瀬竜王優勢へ

広瀬竜王は△8六歩▲同歩と8筋を突き捨てたあと、68手目△3六歩と千日手を回避。
糸谷八段は「広瀬竜王は勝ちにいこうとされていますね。実際、現局面は広瀬竜王が少しいいように思います」と感想を述べました。

【図は68手目△3六歩まで】

広瀬竜王は下図の桂を1分で打っており、寄せの構図を描けているようです。
豊島名人の攻め合いも継続が難しく、「これはちょっと差がつきはじめていますね」と控室談。

【図は88手目△6五桂まで】

揺れる見解

図は、97手目7七で銀桂交換されてから、△8八銀▲2二飛成と進んだ局面。
広瀬竜王の勝勢と思われていましたが、控室の見解が揺れ、難解極まりない終盤になると話され始めました。

【図は99手目▲2二飛まで】

先手玉は詰まない?豊島名人の寄せへ

どうやら先手玉には詰みがなさそうと検討されています。

【図は110手目△8六銀まで】

豊島名人は▲5一銀と銀捨てで寄せに入りました。

【図は133手目▲5一銀まで】

新竜王の誕生

図の局面で広瀬竜王が投了を告げました。終局時刻は19時56分、消費時間は▲豊島7時間59分、△広瀬7時間59分でした。

豊島名人がシリーズを4勝1敗で制し、竜王位を奪取。
勝った豊島名人は、史上10人目の竜王、さらに史上4人目の竜王・名人の座に就きました

【投了図は143手目▲3二金まで】

終局後インタビュー

広瀬前竜王へのインタビュー

―― 残念な結果になりましたが、本局はいかがでしたか?

48手目△2三金など工夫して、見慣れない形になりましたが、ほかの手があまり芳しくないように思いました。指せるような気はしていたんですけど、相手の玉が妙に粘っこいので、分からなかったです。

―― 千日手にはせず打開されました。見通しが立っていられましたか?

千日手にする順もあったと思うのですが、やれているように思っていたので・・・。

―― 今シリーズを振り返って、いかがですか?

難しい将棋が多く、そんな中で中終盤にこちらからミスをしてしまったのが勝敗を分けてしまったのかなと思います。

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敗因を淡々と振り返る広瀬前竜王

豊島新竜王へのインタビュー

―― 本局を振り返ってどうでしたか?

少し苦しくなったと思いながらやっていて、最後は何か負け筋があるような気もしていたんですけど、それでもまだ難しそうなので、なんとかチャンスがくるようにと思いながら指していました。

―― 封じ手のあたりではどのように感じられていましたか?

48手目△2三金と上がられて、戦える順があるように思ったんですけど、よく分からないまま指していて、二日目の昼食休憩でちょっと悪いと思いました。99手目▲2二飛が良くなかったかもしれません。

―― 勝ちが見えたかなと思ったのはどこでしょうか?

133手目▲5一銀と打ったあたりです。

―― これでシリーズを4勝1敗で制しました。

終盤の難しい将棋が多く、結果が残せたのは幸運だったように思います。

―― 竜王・名人を保持することについて、過去に羽生九段、谷川九段、森内九段がなられていますが、今の気持ちはいかがですか。

竜王・名人になられた方は偉大な棋士ばかりですので、自分がここまでできるとは思いませんでした。

―― 広瀬前竜王の印象は、シリーズ前と後で変わりましたか。

戦う前から終盤が正確で切れ味が鋭い将棋という印象があって、それは変わりません。ただ、序中盤でこちらが不利になることが多かったので、そのあたりの研究やセンスのよさを感じました。

―― 次の目標は?

今年はヒューリック杯棋聖戦と王位戦で防衛を失敗していて、まだ防衛したことがないので、来年は防衛を目標に頑張っていきたいと思います。

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豊島新竜王

新竜王祝賀会のご案内

12月11日に「指宿白水館」(鹿児島指宿市)で、12月17日に「ほほえみの宿 滝の湯」(山形県天童市)で、豊島将之新竜王の誕生をお祝いする祝賀会を開催します。

詳細は下記よりご確認ください。
豊島将之新竜王祝賀会(指宿)のご案内
豊島将之新竜王祝賀会(天童)のご案内

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第33期竜王戦が開幕 昇級者・降級者のまとめ

今回の将棋飯まとめ

【一日目】

午前のおやつ

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広瀬竜王:源氏巻三種食べ比べとブレンドコーヒー

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豊島名人:フルーツの盛り合わせ

昼食

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両対局者ともステーキ丼を注文

午後のおやつ

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広瀬竜王:まめ茶ペラとブレンドコーヒー

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豊島名人:笑小巻(えみこまき)とグレープフルーツジュース

【二日目】

午前のおやつ

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広瀬竜王:栗御門とざら茶

豊島名人はフルーツの盛り合わせとざら茶をオーダーしました。

昼食

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両対局者とも「うなとろ重」を注文

午後のおやつ

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広瀬竜王:シフォンケーキ(さらの木)とホットコーヒー

豊島名人は栗御門とアップルジュースをオーダーしました。

竜王戦ダイジェスト

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