一番コスパの良い寄せを考えよう。女流王位戦・石本女流初段VS藤井女流1級戦を解説【山口絵美菜女流1級の好局選】

一番コスパの良い寄せを考えよう。女流王位戦・石本女流初段VS藤井女流1級戦を解説【山口絵美菜女流1級の好局選】

ライター: 山口絵美菜女流1級  更新: 2019年12月23日

今回は女流王位戦予選より、石本さくら女流初段VS藤井奈々女流1級の将棋をご紹介します!

両者共に切れ味鋭い振り飛車党。相振り飛車の将棋に進行し、互いに金無双に組み合って第1図、△9三銀と上がったところ。壁銀を解消しつつ、飛車が移動しても8筋の歩を交換させない構えです。ここで先手の石本女流初段は▲2六飛と飛車をぶつけました。

【第1図は△9三銀まで】

こういった「大駒の交換を迫られる」状況は怖いものですが、「交換すべきか、せざるべきか」の基準はいたってシンプルです。それは「交換の後、どちらがより打ち込むスキが多いか」ということ。本局の場合、後手は2二角を使う目途が立っておらず、飛車交換をすると▲4一飛~▲2一飛成で、3三の銀や2二の角が身動きが取れなくなり芳しくありません。実戦は△2五歩と交換を拒否しました。

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第13期マイナビ女子オープン予選での藤井女流1級 撮影:常盤秀樹

進んで第2図は△4二角と、今度は後手から大駒交換を挑んだところ。先手が交換を拒否するとすれば▲7五歩ですが、飛車と角、2枚の利きを止めてしまって何とも味が悪いです。交換しますか?しませんか?

【第2図は△4二角まで】

実戦は交換しました。▲4二同角成△同金と進んだ局面は、次に△8七角と打ち込まれる傷があります。そこで一旦▲8六飛と回り、打ち込みをけしつつ8筋の歩交換を狙いました。交換したことにより、後手は守備の金が1枚離れてしまったというのもポイントです。

何か駒を交換したり、取ったりする際は「その後の形が綺麗かどうか」という点も考えられるようになるといいですね!

じりじりとした中盤が続いて第3図。ここでは歩を使った攻めの手筋があります。少し考えてみてください。

【第3図は△4三金まで】

先手は▲8三歩と叩きました。△同玉は▲8四銀です。なので△8三同銀と取りますが、そこで▲8二歩が継続手。覚えておいて損のない手筋です。△同玉には▲8四銀△同銀▲8三歩と叩いて攻めが続きます。実戦は▲8二歩を取らずに△9三桂と跳ねましたが、▲8一歩成として、玉のすぐそばにと金を作ることに成功しました。

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第13期マイナビ女子オープン予選での石本女流初段 撮影:常盤秀樹

ちなみに▲8一歩成に△同玉はやはり▲8四銀が激痛です。先手の石本女流初段が流れをつかみ、第4図は最終盤。▲5四銀に△6四金と引いたところです。

【第4図は△6四金まで】

将棋を習い始めて間もない方は駒に取りをかけられると逃げる手から考えがちですが、上達に向け、さらに一歩踏み込んで「逃げずに戦う」手を考えてみましょう。豊富な持ち駒を使ったいろんな指し手が見えるところですが、「一番コスパの良い」寄せは何でしょうか?小駒を使った指し手を考えてみてください。

実戦は▲6三歩と叩きました。△同金には▲8二金△6一玉▲6三銀成で寄り。そこで本譜は△5四金と根本の銀を取りましたが、▲6二歩成△同玉▲6六桂から挟撃体制を作り、石本女流初段が勝利しました。

挑戦者決定リーグが開幕したばかりの女流王位戦。どのような戦いが繰り広げられていくのか引き続きご注目ください!

山口絵美菜女流1級の好局選

山口絵美菜女流1級

ライター山口絵美菜女流1級

1994年5月生まれ、宮崎県出身の女流棋士。2017年に京都大学文学部を卒業し、在学中に研究した『将棋の「読み」と熟達度』を足掛かりに、将棋の上達法を模索している。
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。

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