新竜王・女流三冠の誕生、挑戦者決定戦二番勝負進出者が決まった棋王戦、渡辺三冠が高勝率キープなど12月上旬の注目対局を格言で振り返る

新竜王・女流三冠の誕生、挑戦者決定戦二番勝負進出者が決まった棋王戦、渡辺三冠が高勝率キープなど12月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2019年12月14日

竜王戦七番勝負が決着。挑戦者が史上4人目の竜王名人となりました。また、女流王座戦五番勝負も挑戦者が奪取し、女流三冠へと上り詰めました。

第32期竜王戦七番勝負第5局

【第1図は△3一玉まで】

第1図は第32期竜王戦七番勝負第5局(▲豊島将之名人△広瀬章人竜王)。角換わり腰掛け銀の駒組みですが、ここからの銀の動きが面白いものでした。図から▲4五銀△6三銀▲2五桂△2二銀▲3四銀△4二玉▲4五銀△2四歩▲5六銀△2三金▲4五銀。「銀は千鳥に使え」と言われるように、斜めに動けば元の場所に戻れるのが銀の特徴です。終盤は広瀬竜王が優位に進めていましたが、最後は逆転で豊島名人が勝利。4勝1敗で竜王を奪取しました。

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竜王戦中継ブログより

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竜王を獲得した豊島名人 竜王戦中継ブログより

第9期リコー杯女流王座戦第4局

【第2図は▲3六飛まで】

第2図は第9期リコー杯女流王座戦第4局(▲里見香奈女流王座△西山朋佳女王・女流王将)。ここで△4九馬と入って△7六歩を狙うのは普通ですが、ここで西山女王・女流王将は強手を見せました。それが△4五飛と飛車を切る手で、▲同歩に△5四馬で「馬は自陣に引け」です。この馬は中央~玉頭を制するのに大活躍し、終局まで存在感を見せていました。西山女王・女流王将は3勝1敗で女流王座も奪取。女流三冠となり、奨励会員として現状出場できる女流タイトルはすべて獲得しました。

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リコー杯女流王座戦中継ブログより

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株式会社リコー・古島正執行役員から花束が贈呈される西山新女流王座 リコー杯女流王座戦中継ブログより

第45期棋王戦挑戦者決定トーナメント

【第3図は△4四香まで】

第3図は第45期棋王戦挑戦者決定トーナメント(▲本田奎四段△広瀬章人竜王)。先手優勢の終盤戦ですが、▲5六馬のように駒を惜しんでいると後手にも反撃の手段を与えます。ここはズバッと▲6三馬が「終盤は駒の損得より速度」。以下△6三同金▲5二角△7二玉▲6三角成△同玉▲7五桂から後手玉を一気に寄せきりました。本田四段はデビューから1年で挑戦者決定戦に進出の快挙です。

第45期棋王戦挑戦者決定トーナメント

【第4図は△4三玉まで】

第4図は第45期棋王戦挑戦者決定トーナメント(▲佐々木大地五段△広瀬章人八段)。相掛かりから先手が一気に攻め込んで優勢です。ここで▲4九香が「下段の香に力あり」で痛打となりました。銀や角を取れる形の上に、さらに4三の玉まで射程に入れて先手の攻めが刺さっています。佐々木五段も快勝で挑戦者決定戦進出。棋王戦挑戦者決定戦二番勝負は本田四段と佐々木五段のフレッシュな顔合わせで、どちらが勝っても初のタイトル挑戦です(本田四段に1勝のアドバンテージあり)。

第5期叡王戦本戦

【第5図は▲7七同金右まで】

第5図は第5期叡王戦本戦(▲渡辺明三冠△佐藤天彦九段)。力のこもった中盤戦です。ここから△7三桂▲7六桂△7二桂と、自陣桂の連打となりました。「桂は控えて打て」です。以下後手が抜け出しましたが、一瞬のチャンスをとらえて先手が逆転。最後は際どく詰みを逃れて渡辺三冠が勝ち上がりました。今年度は最高勝率を更新する勢いで勝ちまくっている渡辺三冠。止める棋士は現れるのでしょうか。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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