藤井聡太七段VS村田顕弘六段戦でも使われた対ヒネリ飛車「銀冠」の組み方をご紹介

藤井聡太七段VS村田顕弘六段戦でも使われた対ヒネリ飛車「銀冠」の組み方をご紹介

ライター: 一瀬浩司  更新: 2019年11月28日

今回のコラムも、ヒネリ飛車に対する囲いをご紹介します。こちらも、これまで対ヒネリ飛車のコラムを読まれてきた方にはびっくりされるでしょうが「銀冠」です。 え? ヒネリ飛車に対して銀冠? と思われるかもしれません。だいたいのケースで銀は4二に上がるし、どうやって組むの? こう思われるでしょう。実はこれ、最近指され始めた囲い方なのです。以前は論外だと思われていた指し方が、実は有力ということがこの銀冠によってわかりました。では、どうやって組んでいくのか、こちらを見ていきましょう。 囲いの特徴:第1図をご覧ください。

【第1図は△2三銀まで】

令和元年6月18日、第78期C級1組順位戦、▲村田顕弘六段ー△藤井聡太七段戦です。後手の藤井七段は、村田六段のヒネリ飛車模様に対し、銀冠を目指しました。第1図から、村田六段が▲8六歩△同歩▲8五歩と動いたため、△5四飛▲6八銀△8七歩成と玉が4二のまま局面は進んでいきました。
さて、第1図に至る十数手前の局面が第2図です。

【第2図は▲3六飛まで】

ここでは、△3三金と金で歩を守る一手だと従来は思われてきました。※なお、第2図で△4四角は▲3四飛のとき3五に打つ歩がないので歩を食い逃げされてしまいます。

しかし、藤井七段は△8四飛と飛車で受けます。この手は将来8筋を交換したときに無駄な一手になってしまいますし、例えば△6四歩など、四段目に歩を突くと飛車の横利きが消えて歩を取られてしまいます。なので、「無筋」の受け方だと長らく思われていました。

ですが、以下▲4八玉△4二玉▲3九玉△1四歩▲1六歩△3三角▲7六歩△2二銀▲7五歩△2四歩▲7七桂△2三銀(第1図)と進んでみると、2三の銀が3四の歩を守って後手は三段目の歩を突けるようになりました。また、先手陣は2筋に歩がないので、△2五歩~△2六歩と場合によっては伸ばしていくこともできます。実際、藤井七段も第3図のように2筋を伸ばして攻めていきました。

【第3図は▲5八金まで】

ここから、△1五歩! ▲同歩△同香▲1七歩△2四飛▲2八歩△7七角成! ▲同角△2七桂と、藤井七段が強攻し、以下2筋を破って勝ちきりました。

では、いつも通り先手側の駒だけを配置して(今回も実際は後手番ですが、見やすいように先手側の配置で進行させています)、囲いに組むまでの手順を見ていきましょう。 囲いを組むまでの手順:初手から、▲2六歩、▲2五歩、▲7八金、(△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩)▲3八銀、▲9六歩、▲7六歩、▲2六飛(第4図)。

【第4図は▲2六飛まで】

第4図は、△7四飛と寄られたと仮定して、飛車を浮きましたが、もちろん、飛車を寄ってこなければ浮く必要はありません。第4図から、▲6八玉、▲7七角、▲8八銀、▲8六歩、▲8七銀、▲7九玉、▲8八玉(第5図)。

【第5図は▲8八玉まで】

藤井七段は玉を6八のまま戦いましたが、入城までの手順を載せておきます。次回は、組む際の注意点と発展形について見ていきます。

玉の囲い方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。
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