棋士会って知っていますか?活動内容と知られざる裏話【棋士会対談・前編】

棋士会って知っていますか?活動内容と知られざる裏話【棋士会対談・前編】

ライター: マツオカミキ  更新: 2019年10月24日

棋士会の中村九段×遠山六段対談

「棋士会」って、知っていますか? 「名前は聞いたことがあるけれど、何をやっているかは知らない‥‥」という方も多いかもしれません。「実はかなり熱い想いを持って活動しているので、もっと知ってほしい!」という棋士会の会長・中村修九段と副会長・遠山雄亮六段に、棋士会の目的や活動から知られざる苦労話まで、くわしくお聞きしてみました!

「棋士会」の認知度の低さを、どうにかしたい‥‥!

――今回の対談は、遠山六段の持ち込み企画なんですよね。

遠山 そうなんです。棋士会の認知度って、とても低いなと思っていて。もっと棋士会の活動を知ってもらえたらと思い、今回の企画をお願いしました。

中村 そうですね。今の棋士会は秘密結社みたいなものですから(笑)。

遠山 (笑)。私は今年の6月から棋士会の副会長に就任しましたが、実は自分が入るまで、棋士会がどのような活動をしているのかイマイチわかっていなかったんです。でも、実際に棋士会の中に入ってみると、いろいろな想いを持って活動しているのだと実感しました。そのあたりを、お伝えできたらと思っています。

――具体的に、棋士会はどのような活動を?

中村 今は、チャリティイベントがメインですね。棋士会がスタートした時は、棋士に対する講習会も頻繁に開いていたようです。

遠山 過去の記録を見ると、当時はかなりの頻度で講習会をしていたんですよね。

中村 ただ、講習会に参加してほしい棋士が棋士会講習の存在を知らなくて、来てもらえないパターンが多かったとかなんとか‥‥(ごにょごにょ)。

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遠山 (笑)。本当は今も、若手の棋士や女流棋士向けの講習会を開きたいんですが、人手が足りず、なかなか実現には至っていないです。棋士や女流棋士って、特に何の研修もなくいきなりプロに放り出されてしまうので、一般の企業でいう新入社員研修のようなものがあったら良いのかな、と。

中村 社会常識みたいなものは、プロになってからメディアに出るうちに、失敗もしながら鍛えられているのが現状ですからね。でも、敬語の使い方とか、聞き手の時の話し方とか、そういう講習があると良いなと思います。

遠山 以前、話し方講習は開いていたことがありましたよね?

中村 あれは、家内がやってました、少しだけ。

遠山 中村九段の奥様はアナウンサーですからね。プロから話し方を教えてもらえるのは良いなと思います。

イベントの出演者集めから、自分たちでひとつずつ

――現在はチャリティイベントがメインということですが、チャリティイベントはどのような経緯で始めたのでしょうか。

中村 棋士会は関東と関西に分かれているんですけれども、私と遠山六段が役員を務める関東の方は、東日本大震災を機に、震災関連のチャリティイベントを毎年開催しています。棋士会は基本的にファンの方々や企業からの寄付などで運営が成り立っていますので、ある意味活動の制約がないんです。だからこそ、チャリティイベントも積極的に続けられています。

遠山 今年は10月19日(土)に仙台で、20日(日)には日立でイベントを開催する予定です。イベントに参加してもらう棋士や女流棋士は、中村九段が必死に人集めをしてくださって‥‥。

中村 無理矢理みんなに頼み込むので、パワハラだと言われないか不安です(笑)。

遠山 (笑)。

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遠山 棋士会には事務局がないので、基本自分たちでやらなくちゃいけないんですよね。棋士会に入ってみて、思った以上に事務手続きが多いなと思いました。

中村 例えば、イベントに出てくれる棋士や女流棋士を探すことに加えて、出演者の交通手段や宿泊場所の確保なんかを旅行会社とやり取りしたり。

遠山 しばらくの間、そのような事務作業も含めて、中村九段が1人で関東の棋士会を支えてこられましたもんね。

中村 前会長の佐藤康光九段が、2017年に日本将棋連盟の会長になって棋士会を退任されたのを機に私が棋士会の会長になり、そこから2年ぐらい1人でした。正直なところ、私は会長の器ではないので、一時的に引き受けたつもりだったんですが‥‥(笑)。でも、遠山六段が入ってくれたから、今後はいろいろと変わってくると思うんだけどね。

将棋ファンと将棋界への想いが、棋士会の原動力

――遠山六段は6月に副会長に就任されましたが、会長である中村九段から打診されたのですか?

中村 これは、言っていいのかな?

遠山 大丈夫ですよ(笑)。

中村 実はね、たくさん打診したんですよ。いろんな棋士に声をかけて。でも、お願いしようと思っていた人が将棋連盟の理事になってしまったり、断られてしまったりで、なかなか。そんな時、ちょうど遠山六段が将棋連盟のモバイル編集長を退任されたので、お声がけさせていただいて。

遠山 3月末でモバイル編集長を退任して、5月に棋士会のお話をいただきました。突然、すごくラフな感じで声をかけられて(笑)。

中村 そうだったかな(笑)。

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遠山 「編集長やめたんだよね?」って聞かれて、「そうです」と答えたら「最近暇になった?」って聞かれて。「少し時間ができました」って言ったらすぐに「副会長、どう?」って。意表を突かれてびっくりしました(笑)。

中村 ラフすぎましたかね、すみません(笑)。

遠山 いえいえ、中村九段らしいなと思いました(笑)。

中村 一応、タイミングを見て声をかけたつもりだったんですよ。モバイル編集長を辞めたって聞いたから、「ここだ!」と思って。

遠山 その時は棋士会のことをよく理解していなかったので、最初は迷いもあったのですが、調べているうちに将棋界に必要な存在だと思うようになりました。スポーツには当たり前に選手会があって、選手会がしっかりしている競技は、発展を遂げているな、と。だからこそ将棋界がもっと発展するために、私も棋士会に貢献できたらと思いました。

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中村 引き受けてくれて良かった。

遠山 それと、中村九段、そして関西にいる棋士会・副会長の畠山鎮八段と糸谷哲郎八段とだったら、一緒に仕事をするのも楽しいし、自分も成長できると感じたのも大きいです。3人とも、将棋ファンを大事にする気持ちがすごいんですよ。関西の2人は一緒に仕事をしたこともあったので、その想いもよく知っていました。中村九段とは実はこれまであまり接点がなかったのですが、お話する中で将棋界を良くしたいという想いと、将棋ファンを大事にする気持ちの強さにも惹かれ、自分の経験も活かして棋士会を発展させていきたいと思ったんです。

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後編では、これまでの棋士会の活動で苦労したこと、イベント内容は中村九段のひらめきによって企画されている話、棋士会のTwitterが予想外の盛り上がりを見せた話など、引き続き裏話をお話いただいてます! お楽しみに。

棋士会の中村九段×遠山六段対談

マツオカミキ

ライターマツオカミキ

2014年からライターとして活動する平成元年生まれ。28歳にして初めて将棋に触れました。将棋を学びながら、初心者目線で楽しさをお伝えします!普段は観光地や企業、お店を取材して記事を執筆中。

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