女流棋界の頂上決戦。里見女流六冠に西山女王が挑戦する第9期リコー杯女流王座戦五番勝負の展望は?

女流棋界の頂上決戦。里見女流六冠に西山女王が挑戦する第9期リコー杯女流王座戦五番勝負の展望は?

ライター: 渡辺弥生女流初段  更新: 2019年10月30日

挑戦者となったのは西山朋佳女王

2019年9月9日(月)、東京・将棋会館の「特別対局室」で第9期リコー杯女流王座戦の挑戦者決定戦が行われた。ここまで勝ち上がってきたのは、前年の5月に初タイトル(女王)を獲得した西山朋佳女王と、タイトル戦登場回数6回の伊藤沙恵女流三段。将棋は序盤から馬を作り合う激しい展開に。最後は西山が一気に伊藤の玉を寄せ切り、里見香奈女流王座への挑戦権を獲得した。

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第9期リコー杯女流王座戦挑戦者決定戦での西山女王

史上初の女流六冠

女流王座を保持するのは、里見香奈女流六冠。女流王座のほか、清麗、女流名人、女流王位、女流王将、倉敷藤花を保持する、女流棋界の第一人者だ。27歳にしてタイトル獲得数は37期にのぼる。4月から5月にかけて行われた第12期マイナビ女子オープン五番勝負では、西山朋佳女王に敗れ、女王奪取とはならなかったものの、4月から6月にかけて行われた第30期女流王位戦五番勝負では渡部愛女流王位(当時)を破って女流王位に復位。8月から9月には甲斐智美女流五冠と第1期ヒューリック杯清麗戦五番勝負を戦い、3連勝で初代清麗のタイトルを獲得、史上初の女流六冠となった。

里見の今期4月からの女流棋戦における成績は12勝7敗、勝率0.6315。5月から9月にかけて7連勝している。これでも里見にしてはあまり勝っていない印象を受ける。しかし、7敗のうちの4敗は、西山との第12期マイナビ女子オープン五番勝負と、同じく西山と現在戦っている第41期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負でついたものだ(現在1勝1敗)。里見としては一番戦いたい相手が挑戦者となったに違いない。

また、男性の公式戦でも現在9勝10敗と、善戦している。調子はまずまずと見ていいだろう。

図1は甲斐との第1期ヒューリック杯清麗戦五番勝負第2局の中盤戦。先手が里見、後手が甲斐。里見が▲5六角と銀取りに打った手に、甲斐が△2三角と受けたところだ。受けと攻めのバランスの取れた里見だが、一度攻め出したら強烈。玉型が薄くて怖いところだが、里見はここで踏み込んだ。

【図1は△2三角まで】

図1以下の指し手
▲8三角成△同玉▲8五歩△7二玉▲8四歩△8二歩▲9二銀

▲8三角成が目の覚める一手だ。△8三同玉の一手に▲8五歩で銀の行き場がない。△8五同銀は▲同桂△8四歩▲9三桂成△同桂に▲2四香の田楽刺しがある。実戦、甲斐は▲8五歩△7二玉▲8四歩に△8二歩と玉を引いて頑張るが、最後の▲9二銀が手筋の一着で飛車成りが受からない。このあと飛車を成り込んだ里見が的確に後手玉を寄せ切った。

第3局も制した里見は、初代清麗の座に就いた。

二冠目を狙う、好調の挑戦者

挑戦者となったのは、西山朋佳女王。タイトル獲得数は女王2期、タイトル戦登場回数は3回。現役の奨励会三段として奨励会三段リーグ戦を戦っている、ただ一人の女性である。現在24歳だ。

西山の今期4月からの女流棋戦における成績は10勝2敗、勝率0.8333。4月から5月にかけて里見女流四冠(現女流六冠)と第12期マイナビ女子オープン五番勝負を戦い、3勝1敗という成績で里見の挑戦を退け、防衛。熱戦の末、最後は攻め合いを制するという、西山にとって内容の良い将棋が多く、西山がこうした大舞台にも場慣れしてきて、自然に力を出せるようになってきた印象を受ける。こちらも調子は上々だ。

図2は現在番勝負の真っ最中の、第41期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負第1局の中盤戦。先手が西山、後手が里見。里見が△5三馬と自陣に馬を引き付けたところ。ひとが気付かないようなところから手を作っていくのが西山の将棋の魅力。その破壊力は抜群だ。

【図2は△5三馬まで】

図2以下の指し手
▲7五歩△8四飛▲7四歩△8七飛成▲7三歩成△同銀▲7四歩△同銀▲7五歩△6五銀▲5五角△6四金▲6五飛

▲7五歩△8四飛に突いたばかりの歩を▲7四歩と突き出したのが良い手。△7四同飛と応じるのは、▲7八香△5四飛▲7四歩△同歩に▲8六桂で先手十分。里見は△8七飛成と飛車を成って勝負するが、▲7三歩成△同銀▲7四歩△同銀に▲7五歩が厳しい一着となった。この▲7五歩を△同銀と取るのは、▲8八香△7六龍▲5五角△7三歩▲7四桂△7二玉に▲7七銀で、龍の行き場がない。

本譜も、▲7五歩△6五銀▲5五角△6四金に▲6五飛と銀を取って、西山がペースをつかんだ。

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第40期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負第2局、昼休明け再開後の里見女流六冠

女流棋界の頂上決戦

里見と西山はこれまでに10度の対戦があり、里見の5勝、西山の5勝。番勝負での対戦は先に紹介した第12期マイナビ女子オープン五番勝負と、現在行われている第41期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負の2度で、西山がマイナビ女子オープン五番勝負を制している。まだ番勝負での対戦が少なく、これだけではどちらが有利とは言えないだろう。ともに三段リーグを戦った間柄でもあることを考えれば、勝負はまったくの互角。序盤から終盤まで大熱戦が見られるに違いない。

戦型は相振り飛車か、西山の振り飛車に里見が居飛車で対抗する、居飛車対振り飛車の対抗型になりそうだ。ふたりとも序盤の研究はもちろん、中終盤の強さは群を抜いている。女流棋界の頂上決戦に、ぜひ注目したい。

第9期リコー杯五番勝負第1局は、10月30日、高知県高知市「ザ クラウンパレス新阪急高知」にて開幕する。

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挑戦者決定戦後に行われた記者会会見での里見女流王座と西山女王

*写真は全て 撮影:常盤秀樹

渡辺弥生女流初段

ライター渡辺弥生女流初段

大学で将棋を覚えて以来、すっかりその魅力の虜になった。王様より飛車が大事な、振り飛車でしか勝てない居飛車党。

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