棋士は対局中何を考えているの?頭の中を全部見せるイベント「ホンネ将棋」の様子をご紹介

棋士は対局中何を考えているの?頭の中を全部見せるイベント「ホンネ将棋」の様子をご紹介

ライター: 津持大和  更新: 2019年10月11日

「普段、棋士は何を考えて対局しているの?」将棋ファンなら一度は疑問に思ったことがあるでしょう。
常人では考えられないほど深くまで指し手を読むことができる棋士たちの脳内がどうなっているのか気になりますよね。
そんな問いに対して棋士が「ホンネ」で語るイベント「ホンネ将棋 in 第一生命 ~頭の中全部見せます!~」が9月22日に開催されました。

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イベントでは若手人気棋士である高見泰地七段、都成竜馬五段、佐々木大地五段、斎藤明日斗四段の4名が登壇。ホンネで語るトークショーや考えてることを喋りながら指す公開対局などが行われたので、その模様をお届けしていきます。

踏み込むか保険を掛けるか。対局中に考えていることは?

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佐々木五段の司会で始まったトークショーでは「対局中に何を考えているか」をテーマに様々なお話が展開されました。

会場が第一生命保険株式会社ということもあり、一番盛り上がった話題は、終盤に保険を掛けるかどうか。
相手玉を詰ませに踏み込むか、保険をかけて負けない立ち回りをするかは棋士によって分かれるようで、都成五段は「踏み込んで負けてしまうことが多くバランスの取り方が難しいです」と頭を抱えながら話していました。

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都成五段の師匠は「光速の寄せ」で有名な谷川九段

斎藤四段は逆に保険をかけるタイプでしたが、かけすぎてチャンスを逃してしまうこともあったそう。「最近はなるべく保険をかけずに勝負することを心がけています。」と対局中は意識的に攻めを考えているとのこと。指し手を読むだけではなく、攻める姿勢をどう相手に見せるかも対局中には考えているようです。

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攻めの姿勢を見せたいと語る斎藤四段

逆転勝ちが多いと言われる高見七段は、「いや~」とボヤいて「死んだ(負けた)ふり」をすると相手が間違ってくれることが多いと言いつつ、「悩んだら勝敗は割り切ってより複雑な局面に飛び込んでいく」ことを意識していると話していました。お互いに読みづらい局面を持っていくことを意識しているようです。
また、踏み込んで負けた棋士には「よく踏み込んだで賞」が欲しいとお願いしていました。

高見七段とは反対に、ボヤかないことを意識してますというのは佐々木五段。「メンタルが大事だから、いや~などマイナスなことを発するのは師匠(深浦康市九段)から禁止されている」とのこと。深浦九段と佐々木五段の強さは指し手だけでなく、メンタル面も関係しているのかもしれませんね。

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佐々木五段

このように棋士は、指し手はもちろんですが、指し回しの方向性や心理面も考えながら対局しているようです。将棋中継を見るときは次の一手を考えるだけでなく、「今、この棋士は何を考えているんだろう」といった視点から見てみるのも面白そうですね。

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司会の佐々木五段をフォローする都成五段が印象的でした

斎藤四段の秘術が炸裂!喋りながらとは思えない熱戦に

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トークショーの後は「考えていることを全て口に出しながら対局する」ホンネ公開対局が行われました。普段通りの服装の方がホンネを話しやすいからということで、4人はスーツから私服に着替えて登場。会場からは「可愛い~!」と多くの声が上がりました。

対局の先後は、第一生命保険がやっている「血管年齢測定」で決めることに。「昨日夜更かししちゃったから怖いな~」と斎藤四段は嘆きながらも診断へ向かいます。
案の定、斎藤四段は実年齢を大きく上回る結果に。先輩の佐々木五段に対して「これからは敬語使ってくださいよ」と急に先輩感を出し会場は笑いに包まれました。

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血管年齢を測る佐々木五段と見守る都成五段

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「敬語使ってくださいよ~」と言って会場を沸かせた斎藤四段と高見七段

「黙ってたらふたりとも負けにするからね」と解説役の高見七段と都成五段から発破をかけられながら対局開始。
この対局のために斎藤四段が温めてきたという秘術「向かい飛車」が綺麗に決まる展開になりました。

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解説は高見七段と都成五段。斎藤四段の饒舌っぷりに解説の二人もタジタジ。

【図は59手目▲7五銀まで】

穴熊に組んだ佐々木五段に対し「プーさん(穴熊)退治頑張るぞ!」と元気よく指し続ける斎藤四段。
「佐々木対策はバッチリしてきました。穴熊には端歩と桂馬をうまく使って攻めるのがポイントです。」と、斎藤四段はと1筋がポイントと解説しながら指し進め、チャラいと周りに茶化されながらも着実にリードを奪っていきます。

しかし、リードされても一気に崩れないのが佐々木五段の持ち味。「穴熊は固いので確実な攻めを意識していけば大丈夫。」と徐々に巻き返していき白熱した終盤戦へ突入します。

喋りながらとは思えないほどの熱戦に「両者とも駒が使えている。よく喋りながらこんなに指せるな。」と高見七段からは感嘆の声も。

【図は136手目△9六歩まで】

最終盤では、お互い秒読みに追われながら寄せの速度計算に入り、受けを間違えれば即詰みが続きます。この△9六歩の局面は斎藤四段が「俺の玉を詰ませてみろ!」と佐々木五段へ挑戦状を出した一手。
佐々木五段は▲9三歩成と踏み込むか、▲9六同銀と自陣を守るか迫られ「わからない...」と▲9六同銀を選択します。

【図は158手目△8八飛まで】

最後はその隙を見逃さず斎藤四段が佐々木五段の玉を討ち取り勝負あり。
「将棋ムズイ!素晴らしいゲームだ!」と斎藤四段は興奮しながら指し手を進める一方、「きみ、将棋知ってる?」と冷静に指し続ける佐々木五段の姿が印象的な一局になりました。

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「まさか勝てるとは思いませんでしたが、名局と言えそうな対局ができてよかったです。今日から振り飛車党になろうかな~。」と斎藤四段。
佐々木五段は「明日斗(斎藤四段)に負けるとは思わなかったので悔しいです。」と対局を振り返り、会場は大きな拍手に包まれました。

おわりに

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対局後にはサイン会や写真撮影会などが行われ、最後まで盛り上がった「ホンネ将棋 in 第一生命 ~頭の中全部見せます!~」
普段聞くことができない話や、喋りながらのホンネ対局では、いつもの棋士とまた違った一面が見れて将棋ファンにはたまらないイベントになりました。次回開催時にはぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

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高見七段と都成五段のホンネ将棋の模様などは後日AbemaTVで放送される予定です。

津持大和

ライター津持大和

1996年生まれの福井県出身。山本博志四段の影響を受けて居飛車党から三間飛車党に転身。ゲーム、カードゲーム、野球、カフェが好き。将棋イベントとゲーム大会によく出没します。

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