対ヒネリ飛車「タコ金」の組み方とは?第11期棋王戦本戦 谷川九段VS田中八段戦で指された形

対ヒネリ飛車「タコ金」の組み方とは?第11期棋王戦本戦 谷川九段VS田中八段戦で指された形

ライター: 一瀬浩司  更新: 2019年10月21日

今回のコラムも、ヒネリ飛車に対する囲いをご紹介します。「タコ金」と呼ばれるものです。今回は囲いと呼ぶかは微妙なところですが、どんなものかを見ていきましょう。

対ヒネリ飛車「タコ金」の組み方の特徴

囲いの特徴:第1図をご覧ください。

【第1図は▲9七角まで】

昭和60年12月3日、第11期棋王戦本戦、▲谷川浩司九段ー△田中寅彦八段戦(肩書は当時)です。
後手、田中九段の陣形は前回ご紹介した4三金型舟囲いの途中と同じ形ですね。ここから△4四歩~△4三金とすればそうなりますが、田中九段はおもしろい金の見せ方をしていきます。

第1図から、△4四金▲6六歩△5五金(第2図)。

【第2図は△5五金まで】

金を4四~5五と繰り出していくのがおもしろい指し方です。いまではあまり見られなくなりましたが、昔正月になると子どもたちが上げていた凧のように、金が舞い上がっていくように見えませんか? そうです。「凧」のような動きをするので「タコ金」と名付けられました。海の生物「蛸」のことではありませんでした。

さて、第2図ですが、後手の狙いはもちろん△6六金です。しかし、▲6七銀と上がられると、その狙いが防がれ、▲5六歩で追い返される形になってしまいます。そうなると、後手は△5四金と引くことになり、5五に上がった一手が無駄になってただの手損になるように思えますよね? ですが、実は後手の狙いは簡単に防がれてしまう△6六金ではなく、▲5六歩と突かせることでした。
どういうこと? と思われるでしょうが、一例として、第2図から▲6七銀△1四歩▲5六歩△5四金▲1六歩△4四歩▲3九玉△4五歩(第3図)と進んだ(実戦の進行とは違います)局面をご覧ください。

【第3図は△4五歩まで】

5六に歩を突かせたことによって、6七の銀が攻めに参加しにくくなっていますよね。ヒネリ飛車では▲5六銀~▲6五歩と攻めてくる順がなかなか迫力ありますが、5六に銀が進出できないとなかなか攻めの態勢を作るのが難しくなります。後手の陣形は金が離れて銀一枚の囲いにはなっていますが、5四の金が6筋を強化しており、先手の仕掛けに備えています。歩を取りにいくのではなく、相手を仕掛けにくくすることが真の狙いでした。

それでは、いつも通り先手側の駒だけを配置して(今回も実際は後手番ですが、見やすいように先手側の配置で進行させています)、囲いに組むまでの手順を見ていきましょう。

対ヒネリ飛車「タコ金」の組むまでの手順

囲いを組むまでの手順:初手から、▲2六歩、▲2五歩、▲7八金、(△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩)▲3八銀、▲9六歩、▲4六歩、▲7六歩、(△7四飛)▲7七金、▲6九玉、▲6八銀、▲7八玉、▲4七銀(第4図)。

【第4図は▲4七銀まで】

ここまでは、前回の4三金型舟囲いと同様の手順ですね。
タコ金は、ここから金を繰り出していきます。第4図から、▲6六金、▲5五金(第5図)。

【第5図は▲5五金まで】

金を天王山に進出した第5図までをひとまず一区切りの形としておきます。次回は組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。

玉の囲い方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。
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