史上最年長での初タイトル獲得となった王位戦、渡辺VS豊島の銀河戦決勝、藤井七段の王将戦など9月下旬の注目対局を格言で振り返る

史上最年長での初タイトル獲得となった王位戦、渡辺VS豊島の銀河戦決勝、藤井七段の王将戦など9月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2019年10月08日

王位戦七番勝負は挑戦者が奪取。史上最年長での初タイトル獲得となりました。今回も注目局に現れた手筋を格言で振り返っていきましょう。

第60期王位戦七番勝負第7局

【第1図は▲7二成銀まで】

第1図は第60期王位戦七番勝負第7局(▲豊島将之王位△木村一基九段)。角換わり腰掛け銀の終盤戦で、後手の木村九段が優勢の局面です。ここで△3六金が「寄せは俗手で」の格言通りの寄せ。先手は歩があれば▲2三歩の攻めや▲3八歩の受けが利くのですが、歩切れなのが痛いのです。まさに「歩のない将棋は負け将棋」で小技の利かない先手は手段に窮しました。実戦は▲4二金から迫ったものの届かず、後手が勝ちきりました。
木村九段は7度目のタイトル挑戦で悲願の初タイトルです

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王位戦中継ブログより

第67期王座戦五番勝負第2局

【第2図は▲6一馬まで】

第2図は第67期王座戦五番勝負第2局(▲斎藤慎太郎王座△永瀬拓矢叡王)。角換わり腰掛け銀らしく激しい展開となりました。後手の攻めがつながるか際どい局面です。ここで△3三桂が「遊び駒は活用せよ」です。現状は盤上の竜、金に加えて持駒の角の3枚ですが、4枚の攻めになると厚みが加わります。また、手順に壁形を解消するので自玉の反動もそれほどありません。
以下は熱戦を制した永瀬叡王が2連勝となりました。

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王座戦中継ブログより

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王座戦中継ブログより

第27期大山名人杯倉敷藤花戦 挑戦者決定戦

【第3図は▲5四歩まで】

第3図は第27期倉敷藤花戦挑戦者決定戦(▲加藤結李愛女流初段△伊藤沙恵女流三段)。ここから△6九銀▲7九金打△7八銀成▲同金△6九銀がしつこい攻めで、「金なし将棋に受け手なし」です。以下▲7九銀と埋めましたが、△7八銀成▲同銀△7九金とされて受けに窮しました。
伊藤女流三段は7度目のタイトル挑戦です。ここまで快進撃を見せた加藤女流初段でしたが、初のタイトル戦登場はなりませんでした。

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倉敷藤花戦中継ブログより

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倉敷藤花戦中継ブログより

第27期銀河戦 決勝

【第4図は▲9七玉まで】

第4図は第27期銀河戦決勝(▲渡辺明三冠△豊島将之名人)。頂上決戦となった決勝戦。後手が大優勢でしたが、先手も猛追して激戦になりました。ここで△9五歩が「端玉には端歩」の寄せ。歩だけではなく後ろの香も働いてくるので、この手が詰めろになる場合は基本的に受けがないとしたものです。以下は先手の攻めをかわして後手が制勝。
豊島名人は意外にも全棋士参加棋戦初優勝です。

第69期大阪王将杯王将戦 挑戦者決定リーグ

【第5図は△4四同銀まで】

第5図は第69期大阪王将杯王将戦挑戦者決定リーグ(▲藤井聡太七段△三浦弘行九段)。タイトル経験のあるA級棋士6人と藤井七段が入った注目のリーグです。ここから▲4一銀△4二金▲6二飛成△7八桂成▲同玉△3一金▲5一角が「要の金を狙え」の寄せ。これで金を持たない後手は受けが利かなくなりました。
藤井七段は難関のリーグを白星発進。トップ棋士相手にどのような結果を出すか楽しみです。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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