永瀬叡王が3連勝で王座奪取、自身初の二冠に 第67期王座戦五番勝負を振り返る

永瀬叡王が3連勝で王座奪取、自身初の二冠に 第67期王座戦五番勝負を振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2019年10月04日

若きタイトルホルダー同士のシリーズとなった第67期王座戦五番勝負。斎藤慎太郎王座が初の防衛を飾るか、永瀬拓矢叡王が二冠に飛躍するか。

第67期王座戦五番勝負第1局

第1局は神奈川県秦野市「元湯 陣屋」にて。永瀬が先手で角換わりの相早繰り銀から中盤千日手となった。波乱の幕開けだ。指し直し局は斎藤の矢倉に永瀬が急戦を仕掛ける。形勢は難解だったが、斎藤は時間の少なさに苦しめられる。

【第1図は▲6七金まで】

図から△5二飛と大砲を気持ちよく活用。先手は居玉が直接攻められてしまった格好だ。以下▲3三金△同銀▲2四歩から勝負に出たものの攻めは届かず、手番を得た後手に寄せきられてしまった。まずは永瀬が好スタートを切った。

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王座戦中継ブログより

第67期王座戦五番勝負第2局

第2局は大阪府大阪市「ウェスティンホテル大阪」。斎藤が先手(第1局は千日手だったため)で角換わり腰掛け銀へ。本局は双方一分将棋の熱戦となった。

【第2図は▲6九歩まで】

図では後手の攻めがつながるかの勝負どころ。捕まえ損なうと上部脱出される危険があるが、△9七桂成の成り捨てが軽手だった。▲9七同玉は△7八竜だし、▲同香も△9九飛と空いたスペースに飛車を打ち込む手が厳しい。実戦は▲9七同桂だが、△9九竜と竜を活用しながら香を拾うことができた。先手は7、8筋に歩が残っているため、後の香打ちが厳しい狙いとなっている。以下は攻めをつないで後手制勝。永瀬が2連勝で二冠に迫る。

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あとがなくなった斎藤王座 王座戦中継ブログより

第67期王座戦五番勝負第3局

第3局は兵庫県神戸市「ホテルオークラ神戸」にて。永瀬が先手で矢倉を目指し、斎藤が急戦を目指す。本局も第2局に続き、双方一分将棋の大熱戦となった。

【第3図は△5九竜まで】

図は終盤戦。△5九竜と竜を金取りで近付けながら、5筋にも利かしたところだ。先手は持駒が桂だけで手を作るのが難しそうだが、ぼんやりと▲8三竜が厳しかった。間接的に4三の玉を射程に入れており、後手はうまい受けが難しい。実戦は△6九銀と一発詰めろで利かしたが、▲7九金と引かれて後続が難しい。後手は△4八竜と取っても▲6八桂で攻めが続かない。難解な終盤戦を抜け出した永瀬が以下は制勝した。

永瀬は3連勝で叡王に続き王座も奪取。二冠とともに八段昇段も決めた。

今年度はここまで叡王戦、名人戦、ヒューリック杯棋聖戦、王位戦、王座戦とすべて挑戦者が奪取を決めているが、八冠を分けあう時代のように実力が拮抗していることを示しているだろう。渡辺明三冠は安定した強さを見せているが、続く安定勢力となる棋士が現れるか注目である。

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二冠を決めた永瀬新王座 王座戦中継ブログより

王座戦五番勝負を振り返る

【第1局ダイジェスト】千日手からの指し直し、波乱のスタート
【第2局ダイジェスト】逆転劇となった第2局
【第3局ダイジェスト】一進一退の攻防戦

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渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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