5連覇を目指す里見女流王将VS二冠を狙う西山女王 第41期霧島酒造杯女流王将戦の展望は?

5連覇を目指す里見女流王将VS二冠を狙う西山女王 第41期霧島酒造杯女流王将戦の展望は?

ライター: 生姜  更新: 2019年10月04日

いよいよ10月5日(土)に第41期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負が開幕する。第1局の舞台は宮崎県都城市霧島創業記念館「吉助」。第22期から毎年恒例となっている。
*霧島酒造株式会社

今年の挑戦者は西山朋佳女王。今期は本戦で竹部さゆり女流四段、石本さくら女流初段、加藤桃子女流三段、伊藤沙恵女流三段を破った。女流王将戦には今期から参戦し、そのまま初挑戦を決めている。今回は挑戦者決定戦の模様を紹介しよう。

西山は振り飛車党。本局もクラシックな三間飛車を採用した。図1は伊藤が▲7七角と据えたところ。▲3三角成△同桂▲2四飛のさばきを狙っている。ここで西山の対応がうまかった。

【第1図は▲7七角まで】

図1以下の指し手
△2五角▲6八金右△4六歩▲1六歩△4七歩成▲1七桂△4三角

△2五角として飛車のさばきを防ぎながらの金取りが好手。▲6八金右に△4六歩の垂らしが厳しかった。これでと金の主張ができて後手も十分な形。▲1六歩~▲1七桂と角を取りにきたところで、ひらりと△4三角がまたにくい。▲3三角成△同桂▲2四飛なら△4八とで後手優勢だ。実戦は▲2四飛△2三歩▲2六飛と辛抱したが、これでは元気がない。

続いて最終盤の模様を。伊藤もその後粘り、図2は▲5二銀と肉薄した局面だ。△5二同金▲同成桂△同銀は▲6二金でおかしくなる。西山はチャンスと見て踏み込んでいった。

【第2図は▲5二銀まで】

図2以下の指し手
△6六角打▲9八玉△5二金▲同成桂△7七角成▲同金△8八飛!▲9七玉△8七飛成▲同金△8八銀▲同金△同角成▲同玉△7七銀まで西山女王の勝ち。

△6六角打が参考になる攻め方だ。伊藤も▲9八玉とテクニックを見せるものの、△5二金が正確無比の一着。銀が入れば先手玉を寄せきれるのを読みきっている。最後は豪快に△8八飛~△8七飛成で決めた。投了以下は▲7七同玉に△6七飛▲8八玉△8七金▲8九玉△6九飛成▲7九金△7七桂まで先手玉は詰んでいる。

ご覧のように西山は序中盤での好機を見逃さない高性能アンテナと、正確な速度計算を武器とする高性能マシーンが搭載されている。また、勢いのある早指しもファンは楽しみだろう。

対するは絶対王者里見香奈女流王将。里見は今期も圧巻の強さを見せ、現在女流六冠を保持している。ちなみに残る女流タイトルは女王のみ。女流七冠の期待も膨らむが、本人は目の前の防衛戦に集中していることだろう。

里見には心強いデータがある。それは女流王将戦で現在8連勝中であること。香川愛生女流王将(肩書は当時)を2連勝で破って奪取したあと、3年連続で挑戦者をストレートで破っているのだ。向かうところ敵なしといった強さを見せている。女流棋戦では現在7連勝中。その最中に公式戦も10局以上指しており、タイトなスケジュールをこなしている。

前期の防衛を決めた一戦を紹介しよう。加藤桃子初段(肩書は当時)との第2局から。

【第3図は△5五同歩まで】

図3以下の指し手
▲5三金△7二飛▲4三金△4二金▲同金△同飛▲5三金△7二飛▲4三金△4二金▲同金△同飛▲5三金△7二飛▲6五歩△7五角▲4三金△4二金▲同金△同飛▲7一飛

里見の苦心がうかがえる手順である。千日手にしてもう1局という選択肢もちらつく中で、強く打開の道を選んだ。この直後に加藤が誤り、里見が逆転勝ちを決めている。ディフェンディングチャンピオンらしく、しぶとさと終盤の勝負術は男性棋士顔負けだ。

joryu-oushou41_01.JPG
第40期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負第2局終局後の模様。里見女流王将は、加藤桃子奨励会初段(肩書は当時)の挑戦を2連勝で跳ね除けた。

joryu-oushou41_02.JPG
第40期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負第2局の里見女流王将。

過去の対戦は8局あり、里見4勝、西山4勝。戦型は5局が相振り飛車だった。残り3局は里見が居飛車を持って対抗形になっている。今期の三番勝負も相振り飛車か里見の居飛車で対抗形になりそうだ。

また、タイトル戦での対戦は今シリーズが2回目。今年5月に行われたマイナビ女子オープン五番勝負で西山が里見を3勝1敗で退け、女王を防衛している。両者の対戦はそれからない。恐ろしいことにここまでふたりとも他の女流棋士を寄せつけず勝ちまくってきた。

joryu-oushou41_03.JPG
第12期マイナビ女子オープン五番勝負第2局での西山女王。里見女流が挑戦者だったが、3勝1敗で西山が初防衛を果たした。

通算8期、5連覇を目指す里見女流王将と、二冠目を狙う西山女王。男性棋戦では防衛失敗というケースが目立っているが、今シリーズはどうなるだろうか。両者の熱戦に期待したい。三番勝負の模様は囲碁将棋チャンネルと将棋プレミアムで生放送される。

※写真は全て撮影:常盤秀樹

霧島酒造杯女流王将戦三番勝負の模様をチェック!

◆女流王将戦公式サイト
◆囲碁・将棋チャンネル
◆将棋プレミアム(※要会員登録・有料)

生姜

ライター生姜

1993年生まれ。将棋連盟モバイルを中心に活動する中継記者。2018年現在は最年少の記者。棋士の食事注文に肉生姜焼き定食があると反応する。

このライターの記事一覧

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています