5度目の「竜王VS名人」の頂上対決が実現。広瀬竜王に豊島名人が挑戦する第32期竜王戦七番勝負の展望は?

5度目の「竜王VS名人」の頂上対決が実現。広瀬竜王に豊島名人が挑戦する第32期竜王戦七番勝負の展望は?

ライター: 相崎修司  更新: 2019年10月11日

将棋界の最高位を争う第32期竜王戦七番勝負が開幕する。今期は広瀬章人竜王豊島将之名人が挑戦するシリーズで、竜王戦において竜王対名人のカードが実現するのは5度目となる。

過去の頂上対決を振り返ってみると、最初に実現したのは1994年の第7期。佐藤康光竜王(肩書きは当時、以下同)に羽生善治名人(五冠)が挑戦したシリーズだ。前年の第6期では佐藤が羽生に挑戦し、自身初のタイトル獲得を実現したが、すぐさま羽生がリベンジに名乗りを上げた。結果は4勝2敗で羽生が奪回し、史上初の六冠王となる。翌年の第8期でも佐藤の挑戦を返り討ちにして、1996年2月の七冠達成へ至ることになる。

2度目は08年の第21期。渡辺明竜王に羽生名人が挑戦した。羽生はこの年の6月に永世六冠となっており、すでに通算6期獲得していた竜王戦でもあと1期で永世称号を得る状況だったので、このシリーズには前人未到の永世七冠がかかっていた。迎え撃つ渡辺も竜王を4連覇中で、こちらも連続5期の規定による永世竜王を目前としていた。「番勝負の勝者が永世称号を得るシリーズ」は将棋界史上初めてであり、しかもこの時は羽生の3連勝スタートから渡辺が3連勝で追いつき、最終第7局は「勝者に永世称号がかかる一局」となった。100年に一度あるかどうかの大勝負といわれたものである。

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第1局はセルリアンタワー能楽堂で行われる

この時は大熱戦を渡辺が制し、史上初の永世竜王有資格者となった。羽生は2年後の第23期でも挑戦したが2勝4敗で渡辺に屈し、またしても永世七冠はお預けとなった。このシリーズが3度目の竜王対名人の七番勝負である。羽生が永世七冠を実現するのは2017年の第30期まで持ち越しとなった。

2度にわたる頂上決戦で大敵を退け、渡辺は竜王戦9連覇を達成する。10連覇を阻止したのが13年の第26期に挑戦者として名乗りを上げた森内俊之名人だ。4勝1敗で渡辺を圧倒し、自身2度目の竜王・名人となった。竜王・名人の同時獲得を実現したのは羽生(94年12月~96年11月、03年5月~03年11月)、谷川浩司九段(97年6月~98年6月)、森内(04年10月~12月、13年11月~14年5月)の3名しかおらず、また竜王と名人の双方を獲得経験がある棋士も、他に佐藤康光九段の名を加えるのみである。

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5度目となる今期の頂上対決はどのような状況なのか。まず両者の直接対決は広瀬から見て8勝7敗とほぼ五分で、直近は広瀬が4連勝中だ。しかし過去のタイトル戦出場回数を見ると広瀬が5回なのに対し、豊島は9回で、大舞台の経験では豊島に一日の長があるか。ただし竜王戦と同条件である持ち時間8時間の2日制棋戦への出場回数は双方が4回と並んでいる。

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では、開幕直前の両者をどうみるか。今年度の広瀬はここまで8勝3敗(未放映のテレビ棋戦を除く)。勝率は高いが、対局数が少ないのが懸念材料になりそうだ。ただし9月以降は4勝1敗と勝率を維持しつつ実戦の数もこなし、七番勝負開幕に向けての調整は入念と言って差し支えないだろう。

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広瀬竜王

対する豊島は25勝12敗と、こちらは逆に対局過多による疲労が心配になる。事実、今期の竜王戦挑戦者決定戦三番勝負第2局ではらしからぬ見落としで好局を落としており「やはり疲れなのかな、普段の豊島さんなら絶対にあんな見落としはしない」という声があった。

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豊島名人

5月の名人奪取まではよかったが、その後に棋聖・王位と相次いでタイトルを失冠したのも気になる。ただし棋聖戦で敗れた渡辺明三冠には銀河戦決勝でリベンジしており、また王位戴冠を許した木村一基王位は挑戦者決定戦三番勝負で下した相手だ。豊島、渡辺、木村の他、永瀬拓矢二冠を加えての4名が今期竜王戦決勝トーナメントのベスト4を占めたという事実からして、竜王戦の挑戦権は非常に高いレベルで争われた結果と言えるだろう。

その争いを制した豊島は、絶好調とまでは言えないにしても、状態が悪いわけではないはずだ。そして二冠を失った屈辱を晴らすためにも、今度の七番勝負には特に期するものがあるだろう。

10月9日付の読売新聞朝刊に掲載された展望記事では、渡辺三冠が4勝3敗で広瀬竜王の防衛と予想している。また、対局者双方が角換わりの将棋が出現するとみている。第一人者同士による決戦を年末までお楽しみいただきたい。

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写真はすべて 撮影:常盤秀樹(第32期竜王戦七番勝負第1局より)

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相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2016年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、叡王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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