初代清麗そして史上初の女流六冠誕生。ヒューリック杯清麗戦五番勝負を振り返る

初代清麗そして史上初の女流六冠誕生。ヒューリック杯清麗戦五番勝負を振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2019年09月12日

女流棋界に新しくタイトルが誕生した。その名もヒューリック杯清麗戦。六大タイトル戦だった女流棋界も七大タイトル制になった。

これまでの女流棋戦は負けたら終わりの一発トーナメント、もしくは予選後に通過した棋士によるリーグ戦で行われていたが、清麗戦は初の2敗失格制を採用した。1敗しても指すことができるため、女流棋士の対局数が一気に増えることとなった。

本棋戦は奨励会員、アマの参加はなく、女流棋士62名で行われた。6勝通過2敗失格の予選を抜けたのは4人。中村真梨花女流三段が6連勝で通過、里見香奈女流五冠、甲斐智美女流五段、頼本奈菜女流初段が6勝1敗で通過。本戦の組み合わせは里見─頼本、甲斐─中村となり、勝った里見、甲斐が第1期の五番勝負に臨むこととなった。

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本戦 里見香奈女流五冠VS頼本奈菜女流初段

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本戦 甲斐智美女流五段VS中村真梨花女流三段

本命視された里見の五番勝負進出はまず順当なところだろう。だが、予選で喫した1敗は甲斐によるもの。後がない状況で伊藤沙恵女流三段、渡部愛女流王位(当時)と手強いところを下したのはさすがだ。甲斐は伊藤、里見と女流棋界屈指の強豪を倒した後に中澤沙耶女流初段に敗戦。痛い1敗となったが、香川愛生女流三段らを倒して勝ち上がってきた。

五番勝負第1局

記念すべき第1局は東京の「グランドニッコー東京 台場」にて。先手となった甲斐は居飛車、里見は意表の3三金型三間飛車に構える。

【第1図は▲7七銀まで】

先手が粘っており、何とか▲7三歩のように反撃する猶予を得ようとしている。ここで△6七角が鋭い決め手だった。▲同金右と取らせて△7八銀成▲同玉△4八飛▲6八銀△5九竜まで一気に受けなしに追い込んで先手の投了。里見が史上初の女流六冠に向けて好スタートを切った。

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五番勝負第2局

続く第2局は鹿児島県指宿市の「指宿 白水館」にて。里見の先手中飛車から相振り飛車になった。

【第2図は△9三同香まで】

後手の模様が良い将棋だったが、先手がうまく戦機をとらえた。ここで▲5六角が好打。実戦は△2三角と受けたが、▲8三角成△同玉▲8五歩が鋭い強襲。一瞬角損となるが、駒を取り返しながら攻めが続くので問題ない。以下△7二玉▲8四歩△8二歩に▲9二銀が確実な手段で押し切った。里見が2連勝で一気に優位に立つ。

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五番勝負第3局

第3局は金沢の「ホテル日航金沢」にて。本局は甲斐の居飛車に里見はゴキゲン中飛車。超速3七銀戦法から激しい戦いとなった。

【第3図は▲7五同歩まで】

図からの△4八角には▲4九飛で先手を取らなくてはいけなかった。実戦は▲2九飛と逃げたため、△5三飛と急所の歩を払われて後手玉が安全に。以下は里見が手厚くまとめあげた。

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終局後のインタビューに答える里見初代清麗

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敗れた甲斐女流五段

記念すべき第1期五番勝負は第一人者の里見がストレートで制した。同時に女流棋界最多となる女流六冠の新記録も達成。次はいよいよ七冠完全制覇の期待が掛かるが、秋に行われる女流王将戦、女流王座戦では西山朋佳女王の挑戦を受ける。女流棋界二強の対決から目が離せない。

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里見香奈初代清麗誕生の記者会見の様子

*写真はヒューリック杯清麗戦中継ブログより

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渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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