第65期棋聖戦第2局、島VS羽生戦でも見られた相居飛車左美濃右四間飛車の組み方【玉の囲い方 第85回】

第65期棋聖戦第2局、島VS羽生戦でも見られた相居飛車左美濃右四間飛車の組み方【玉の囲い方 第85回】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2019年08月01日

前回までのコラムでは、対矢倉における「左美濃急戦」をご紹介しました。今回も対矢倉における左美濃つながりでもうひとつ、「左美濃右四間飛車」を見ていきます。それでは、どのようなものか? そちらを見ていきましょう。

左美濃右四間飛車とは?

囲いの特徴:第1図をご覧ください。

【第1図は△7三桂まで】

平成6年12月22日、第65期棋聖戦五番勝負第2局、▲島朗八段ー△羽生善治棋聖戦(肩書は当時)です。羽生九段が、後手側から見て右から四つ目に飛車を回っていますね。陣形は左美濃の形です。3三の角筋も通っており、5四の銀、7三の桂も活用し、飛車角銀桂とまさに攻めの理想形となっていますよね。

対して、先手の島九段は、金銀四枚に囲って迎え撃つ態勢となっています。角が8八で壁に見えますが、7七ですと7三の桂が6五や8五に飛ばれたときに当たってくるので、対右四間飛車の囲いとしては、よくある形です。

第1図からは、▲3五歩△同歩▲3八飛△6五歩(第2図)と戦いが始まっていきました。

【第2図は△6五歩まで】

この対局は、先手が銀を7七に上がりませんでしたが、もし相手が矢倉に組んできたらどうなるでしょうか? そちらも見ていきましょう。第3図は、後手が先手の陣形を見ずに一目散に矢倉に囲った形です。

【第3図は▲4五歩まで】

いま、▲2五桂と銀取りに跳ね、△2四銀に▲4五歩と突いた局面です。まだ、歩がぶつかったばかりで駒の損得は生じていませんが、すでに先手必勝と言っても過言ではない局面になっています。第3図から、△4五同歩は▲2二角成で玉を取って、ハイ、それまで。よって、後手はこの歩を取ることはできませんが、例えば△5四歩ですと、▲4四歩△5三金に▲4三歩成(8八の角で王手!)でこれも後手壊滅です。△3一玉と角筋を避けても▲4四歩△5四金▲4三歩成ですし、適当な受けがないことをご確認してみてください。

右四間飛車に対して矢倉に組んでくるのは、▲2五桂(△8五桂)と跳ねたときに銀取りになり、その銀が逃げると4筋(6筋)が手薄になるので、ありがたいケースが多いです。

なお、第3図の後手の陣形ですが、豆腐のようにもろく崩れてしまうので、「豆腐矢倉」と呼ばれるそうです。皆さまも、この豆腐矢倉のような陣形に組まないよう、気をつけて序盤を指してください。それでは、これまで通り先手側の駒だけ配置して、相居飛車における左美濃右四間飛車に組むまでの手順を見ていきましょう。

左美濃右四間飛車に組むまでの手順

囲いに組むまでの手順:初手から、▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲4六歩、▲4七銀、▲5六銀、▲4八飛(第4図)。

【第4図は▲4八飛まで】

いろいろ組み方はありますが、まずは銀を5六に繰り出し、4八に飛車を回っていつでも▲4五歩と仕掛ける手を見せて相手をけん制します。ここから、玉を囲っていきます。第4図から、▲6八玉、▲7八銀、▲7九玉、▲5八金右、▲3六歩、▲3七桂(第5図)。

【第5図は▲3七桂まで】

左美濃に囲い、桂も活用してひとまず陣形は完成です。次回のコラムでは、左美濃右四間に組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。

玉の囲い方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。
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