ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2019年08月19日
王位戦七番勝負は挑戦者が1勝を返しました。両者は竜王戦挑戦者決定三番勝負でも激突し、夏の十番勝負となりました。豊島将之名人、木村一基九段の熱い対決です。
【第1図は▲4四桂まで】
第1図は第60期王位戦七番勝負第3局(▲豊島将之王位△木村一基九段)。矢倉から豊島王位の攻めに木村九段の受けと、お互いに棋風通りの展開です。「4枚の攻めは切れない」と言われていますが、先手の攻めは3枚。いくら先手は堅陣で攻めに専念できるとはいえ、切れ模様です。ここで△6一銀が手堅い受け。対して▲3二金打なら大駒を取ることができますが、△5一玉▲3一金に△3九飛から反撃されて後手優勢です。本譜は▲5四歩と取り込んで歩が4枚目の攻め駒となるかですが、うまく後手が攻めを余して制勝。木村九段が待望の1勝をあげました。
敗れた豊島王位 王位戦中継ブログより
1勝目をあげた木村九段 王位戦中継ブログより
【第2図は▲5九香まで】
第2図は第1期ヒューリック杯清麗戦五番勝負第1局(▲甲斐智美女流五段△里見香奈女流五冠)。記念すべき新タイトル戦の第1局です。里見女流五冠が三間飛車からうまくさばいてペースをつかみました。ここで△6九銀が「要の金を狙え」の基本手筋。以下▲7三歩に△2九竜の強手で、際どい終盤戦を乗りきっています。里見女流五冠が初の女流六冠に向けて好スタートを切りました。
里見女流五冠が白星発進 ヒューリック杯清麗戦中継ブログより
【第3図は△5四歩まで】
第3図は第32期竜王戦決勝トーナメント(▲豊島将之名人△渡辺明三冠)。勝てば挑戦者決定三番勝負に進出する一戦で、絶好調の複数冠同士が、この大一番でも当たりました。図は△5四歩と打たれたところですが、「駒は取られる瞬間が最も働いている」と言います。▲7一歩成△同飛に▲4三歩成△同金上▲同飛成が鋭い強襲。以下△4三同金▲4四歩△4二金▲4三金から、一気に押し切ってしまいました。結局後手は5五の銀を取る余裕はなく、豊島名人の切れ味が光った一局です。
勝った豊島名人 竜王戦中継ブログより
敗れた渡辺三冠 竜王戦中継ブログより
【第4図は△3六竜まで】
第4図は第32期竜王戦決勝トーナメント(▲木村一基九段△永瀬拓矢叡王)。横歩取りから先手の木村九段が形勢をリードしています。ここで▲3八香が「下段の香に力あり」の好打。同じようでも▲3九香は△4六竜▲同歩△1四角の時に飛車が狭いのが気になります。実戦は▲3八香に△2六竜と辛抱しましたが、▲3四歩が厳しく先手勝勢となりました。木村九段はこれで通算5回目の挑戦者決定三番勝負進出です。
木村九段が挑戦者決定戦へ 竜王戦中継ブログより
【第5図は▲5八同金まで】
第5図は第32期竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局(▲木村一基九段△豊島将之名人)。相掛かりから先手が金損する定跡手順へ。うまく局面をまとめた後手が優勢になりました。図は決めどころで、△8七歩成▲同飛△7六香▲同玉△7五歩▲8六玉△6五角まで先手投了。「遊び駒は活用せよ」で、最後に9二の角を綺麗にさばきました。豊島名人が初の竜王挑戦に前進しました。
三番勝負第1局は豊島名人の勝利 竜王戦中継ブログより
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段