ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2019年07月17日
ヒューリック杯棋聖戦五番勝負は渡辺二冠が制し、初の棋聖を奪取。三冠に復位を果たしました。王位戦七番勝負が始まり、豊島王位は防衛戦が続きます。竜王戦決勝トーナメントも佳境で、今期の挑戦者は誰になるでしょうか。
【第1図は△8八歩まで】
第1図は第90期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第4局(▲豊島将之棋聖△渡辺明二冠)。後手の雁木に先手が仕掛けましたが、一転して長い戦いになりました。図は終盤戦に入ったところです。ここで▲8五飛が「飛車は十字に使え」の気持ち良い転換。▲8一飛成を狙いながら、8九にも利かす攻防手です。以下は難解な戦いが続きましたが、一分将棋の競り合いを制して渡辺二冠が勝利。3勝1敗で棋聖奪取を決めました。
初防衛ならず 豊島将之前棋聖 ヒューリック杯棋聖戦中継ブログより
棋聖を奪取した渡辺明新棋聖 ヒューリック杯棋聖戦中継ブログより
【第2図は△4五歩まで】
続いてもう一例飛車のさばきを見ていきます。第2図は第60期王位戦七番勝負第1局(▲豊島将之王位△木村一基九段)。駒得しながら一方的に攻めている先手が優勢の局面です。ここで▲2四歩△同歩に▲5四桂が軽手。どの道△4六歩は価値の高い手になるので、それなら桂を捨てて後手の玉頭に空間を空けようというわけです。△5四同歩に▲2四飛で気持ちのよいさばきが実現しました。▲2一飛成、▲5四飛のどちらも厳しく、先手勝勢です。以下も押し切って、豊島王位が完勝となりました。
先勝した豊島将之王位 王位戦中継ブログより
敗れた木村一基九段 王位戦中継ブログより
【第3図は△7九飛まで】
第3図は第67期王座戦挑戦者決定トーナメントの準決勝(▲羽生善治九段△豊島将之二冠)。羽生九段が意表の先手四間飛車を選び、豊島二冠が急戦に出ました。対抗形らしく長い戦いとなりましたが、ここから▲8三歩成△7六歩▲7三歩成と、双方と金攻めに出ました。「と金の遅早」とは言いますが、どちらもかなり遠くからと金を作っています。結果的に先手のと金は働かず、後手がと金をうまく活用して競り勝ちました。二冠に後退した豊島二冠ですが、三冠復位を目指します。
【第4図は▲6八玉まで】
第4図は第32期竜王戦決勝トーナメント(▲久保利明九段△藤井聡太七段)。藤井七段が押し気味に進めていましたが、久保九段の強靭な粘りで決めきれず、図は逆転模様です。双方一分将棋で難解な競り合いの中、△5一歩が「大駒は近付けて受けよ」の手筋。取れば△4一金打のように竜取りで受けることができます。実戦は▲2二銀で後手玉に迫り、際どく先手の勝ち筋でしたが、最後は長手数の詰みを逃し藤井七段の勝ちとなりました。
敗れた久保利明九段 竜王戦中継ブログより
熱戦を制した藤井聡太七段 竜王戦中継ブログより
【第5図は▲3四歩まで】
第5図は第27期銀河戦本戦Bブロック最終戦(▲渡辺二冠△糸谷哲郎八段)。先手は1八飛の横利きが強く、見た目よりは安全です。攻めても勝てない後手は△4四玉と▲6二馬や▲5四歩を先受けしました。対する▲5四歩も手筋ですが、さらに△3五玉が「中段玉寄せにくし」です。▲5三歩成に△2七銀と打って、攻防に利いている飛車を取りにいきました。以降も熱戦が続きましたが、結局相入玉で持将棋となりました。指し直し局は渡辺二冠(収録時)が制し、決勝トーナメント進出を決めています。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段