池永天志四段ら関西若手棋士による「西遊棋新人イベント」開催レポート

池永天志四段ら関西若手棋士による「西遊棋新人イベント」開催レポート

ライター: 山口絵美菜  更新: 2019年06月07日

今回は関西将棋会館で行われた西遊棋新人イベント「新たな花が芽吹くとき~この一瞬を見逃すな~」の模様をお届けします!

西遊棋実行委員会は関西若手将棋ユニット。今回のイベントはそんな西遊棋の「新人」である西田拓也四段・池永天志四段・古森悠太四段・武富礼衣女流初段・藤井奈々女流1級が企画・運営から力を注いだ手作りのイベントです。昨年夏、池永四段が実行委員長となり始動しました。

ファンの方との和気あいあいとした指導対局

イベント開会に先立ち、午前中は抽選で選ばれた25名のファンの方との「ぐるぐる将棋」。小さなお子さんを指導するときにはしゃがんだり、ゆっくりと丁寧に話したりと和気あいあいとした雰囲気の中で指導対局が進みました。

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ぐるぐる将棋の様子

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藤井奈々女流1級

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実行委員長の池永天志四段

「新人のことを知って、楽しんでください」山崎八段のあいさつでイベント開幕

そして午後。関西将棋会館五階に舞台を移し、いよいよ西遊棋新人イベントの開幕です!特別ゲストである山崎隆之八段が「自分が新人の時は先輩についていくばかりでした。今日はバラエティに富んだイベントなので、より新人のことを知って、楽しんでください」と開会のあいさつをすると、「今日は暖かい目で見守ってください」と武富女流。会場には70人近くのファンの方が詰めかけていました。

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開会のあいさつをする山崎隆之八段

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イベント開幕

クイズ大会前半は山崎八段、西田四段、古森四段、藤井女流が登壇

一つ目のプログラムは「クイズ大会」。デビューから間もなく、なかなか知られていない新人のことを掘り下げて知ってもらおうという企画です。クイズは次の一手と同じ方式で「赤・青・黄」の三択で出題され、最後まで正解した一人には西遊棋のオリジナルマグカップをプレゼント。クイズ大会前半は山崎八段、西田四段、古森四段、藤井女流が登壇しました。

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まずは第一問「西田四段が初めて武富女流とあったのはどこでしょう?」(選択肢:赤「バッティングセンター」青「猫カフェ」黄「カラオケ」)「一問目から難しいですねー!」と山崎八段。悩ましい選択肢に「ここで、たまたまあったわけではなくて、4人で待ち合わせていった場所です」と西田四段がヒント。正解は黄「カラオケ」で、この後もほんわかしたテンポで各々が問題を出していきました。

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サイン会初の池永四段、サイン第一号は『りゅうおうのおしごと!』の白鳥士郎さん

クイズ大会と同時に、4階ではサイン会。武富女流の前には長蛇の列ができ、はつらつと会話をしながら揮毫のリクエストにこたえていきます。一方池永四段はこの日が初のサイン会。記念すべきサイン第一号は西遊棋が監修を務めるライトノベル『りゅうおうのおしごと!』の著者である白鳥士郎さん。「りゅうおうのおしごと!でお願いします!」とのリクエストに慎重に書き進めていく池永四段。途中ハンコを入れている巾着がサンリオキャラクター「けろけろけろっぴ」の柄であることを突っ込まれると「これが何か知りませんでした」とぼそり。終始マイペースで、ひょうひょうとした独特な雰囲気でした。

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参加者と会話をしながらサインをする武富礼衣女流初段

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初めてのサイン会となった池永天志四段

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「世界一どうでもいい問題・・・」とはにかむ武富女流

その頃クイズ大会は大詰め。全問正解で残っているファンの方はわずかという状況。「藤井女流のお誕生日はいつでしょう?」という問題が出され、正解はイベント当日の「3月31日」。会場からはお祝いの拍手が送られました。続いて「古森四段が初めて覚えた囲いは何でしょう?」(選択肢:赤「矢倉」青「elmo囲い」黄「美濃囲い」)という問題。古森四段は振り飛車党のため、黄色を選んだ人が多かったものの、正解は赤の「矢倉」。「初めは居飛車党で矢倉に組んでいましたが、手数がかかるので途中で攻めつぶされることが多くて・・・振り飛車に変えました」と古森四段。難問が多いものの正解率が高く「皆さんよくご存じですね」と山崎八段。

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盛り上がるクイズ大会

続いて出題者を池永四段、武富女流に交代し、クイズ大会は後半戦に突入。「武富女流がよく見る動画は?」(選択肢:赤「大食い」青「アンパンマン」黄「はじめてのおつかい」)という出題に「世界一どうでもいい問題・・・」とはにかむ武富女流。クイズ大会で出題する問題はみんなで協力して作成したもので、一番時間がかかったそう。ちなみに正解は黄色の「はじめてのおつかい」で、武富女流は「是非皆さんにおすすめしたいです!すべての邪心が浄化されます!」と熱弁していました。

西田四段にレクチャーする兄弟子の糸谷哲郎八段

4階では西田四段と藤井女流によるサイン会。扇子への揮毫をリクエストされた西田四段が勝手がわからず、手伝いに駆け付けていた兄弟子の糸谷哲郎八段がレクチャーするという場面も。

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西田拓也四段

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「鉄人」と色紙に書いた藤井奈々女流1級

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兄弟子の糸谷哲郎八段からレクチャーを受ける西田拓也四段

そして5階ではクイズ大会最終盤。「池永四段の座右の銘は?」(選択肢:赤「明日は明日の風が吹く」青「諦めたらそこで試合終了」黄「時は金なり」)という出題で、正解は赤。この問題で正解者が一人に絞られ、クイズ大会は終了しました。

トランプにゆだねられる「トランプ将棋」

続いてのプログラムは「トランプ将棋」。対局者が交互にトランプを引き、そこに書いて空いた数字の筋にある駒を動かすというもの。西田四段と池永四段の解説のもと、武富女流対藤井女流の対局が始まりました。序盤からJOKER(何を動かしてもいい)を二連続で引いた武富女流に「ここで出るのはむしろ引きが弱い」と西田四段。動かせる駒がトランプにゆだねられ、局面は混とんとしていきます。

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武富礼衣女流初段と藤井奈々女流1級によるトランプ将棋の対局

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解説をする西田拓也四段と池永天志四段

そして最終盤「王手をかけると逃げられるので、必至の形を作るのがポイント」と解説。序盤こそ好調だった武富女流ですが、終盤になって動かしたい駒がない筋の「1」を連発。そうするうちに藤井女流がと金を量産し、武富女流に詰めろをかけました。藤井女流がトランプを引き「ごめんね、れいちゃん」とポツリ。掲げられたカードはなんとJOKERで、トランプ将棋は藤井女流の勝ちとなりました。終局後「私に敗着ありました?」と感想戦を始める武富女流。「誕生日のななちゃんに花を持たせたことにしておきます」とコメントし、急遽西田四段と池永四段もトランプ将棋をすることに。先手の西田四段が引いたカードはなんとJOKER。西田四段が▲7八飛を着手すると会場がどよめいたものの、3手目に引いたのは「2」のカード。飛車が不在の飛車先を▲2六歩と突くしかなく、数手後「やっぱり飛車戻そうかな」と▲2八飛と振りなおす展開に。トランプに振り回されてしまうのもこの将棋の醍醐味です。

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お買い上げの方にはポストカードやキーホルダーが

5階がトランプ将棋で盛り上がっている間、4階は山崎八段と古森四段のサイン会。同時に物販にもたくさんの色紙が並んでいました。お買い上げの方には今回のために作られたポストカードやキーホルダーがもれなくついてくるという計らいも。キーホルダーは出演棋士の好きな駒になっていて、裏面にはそれぞれの似顔絵がパッケージされているという充実ぶり。

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古森悠太四段

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山崎隆之八段

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今回のイベントのために作られたポストカードやキーホルダー

「最近見た中で一番いい」と山崎八段。池永四段対古森四段対局

そしていよいよ最後のプログラム。池永四段対古森四段の対局です。持ち時間は10分30秒の早指しで、日本将棋連盟モバイルでの中継も行われました。ともに小林門下の同門対決で「小林門下最強決定戦ですね」と解説の山崎八段。「どちらが上座につくんでしょう」と話していると、古森四段が上座へ。池永四段が先手となり、居飛車対振り飛車の対抗形へ。

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池永天志四段と古森悠太四段による対局

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そこで「特別ゲストがいます」と登場したのは先日抜群の成績で三段リーグを抜けた出口若武新四段。翌日4月1日付で棋士デビューする西遊棋の新メンバーです。大きな拍手に迎えられ「初めてのイベントです」と出口四段。山崎八段にリードされつつ、両対局者の印象などてきぱきと解説していました。

続いて山崎八段が西田四段とバトンタッチ。二枚飛車VS二枚角の中盤戦を解説し、糸谷八段・室田伊緒女流二段に交代すると「初めてここで西遊棋の新人イベントをしたのを覚えてますか?」と室田女流。「その時もゲストは山崎さんだった気がします」と糸谷八段。

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糸谷哲郎八段と室田伊緒女流二段による解説

西遊棋の昔話に花が咲き、そうこうするうちにのっぴきならない局面に。室田女流が山崎八段と交代し、森門下の兄弟弟子での歯に衣着せない解説へ。馬に働きかけた▲5六歩に「こうですかね?」と糸谷八段が△4五馬を示すと「僕は素直に取ります」と山崎八段。

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「素直だったんですね・・・私はねじ曲がってるので」と話す中、古森四段が選んだのは糸谷八段推奨の△4五馬。「古森さんがねじ曲がっているということですね?」(山崎八段)「いや、まっすぐな思いで選んだのでしょう」(糸谷八段)。そして最終盤で出口四段と藤井女流に交代。

「どうしましょう・・・あまり聞き手をやったことがないので」と動揺する藤井女流に「僕も解説は初めてです」と出口四段。初々しいやり取りが続く中、池永四段が受けを連発し局面は混沌。長い終盤戦が続き、詰むやつまざるやという局面を古森四段が読み切って、勝利を収めました。「最近見た中で一番いい将棋ですよ」と山崎八段。

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解説を行う藤井奈々女流1級と出口若武新四段

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熱戦となったメイン対局

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イベントは大盛況

大熱戦のメイン対局の後は抽選会が行われ、イベントは大盛況のうちに幕を下ろしました。

個性的なメンバーがそろう西遊棋からますます目が離せませんね!ぜひイベントに足を運んでみてください。お待ちしています!

山口絵美菜

ライター山口絵美菜

1994年5月生まれ、宮崎県出身の女流棋士。2017年に京都大学文学部を卒業し、在学中に研究した『将棋の「読み」と熟達度』を足掛かりに、将棋の上達法を模索している。
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。

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