豊島二冠が4連勝で初の名人そして三冠へ、マイナビ女子オープンなど5月下旬の注目対局を振り返る

豊島二冠が4連勝で初の名人そして三冠へ、マイナビ女子オープンなど5月下旬の注目対局を振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2019年06月05日

名人戦は挑戦者が強さを見せてストレートで奪取。マイナビ女子オープンは女王が防衛を果たしました。5月下旬の注目局を格言とともに振り返っていきましょう。

第77期名人戦七番勝負第4局

【第1図は△2四金まで】

第1図は第77期名人戦七番勝負第4局(▲豊島将之二冠△佐藤天彦名人)。先手優勢の終盤ですが、後手も上部脱出に望みを掛けています。図で飛車を逃げるようだと△3三玉で後手も粘り甲斐のある局面です。しかし、図で▲2五飛が決断の寄せ。△2五同金に▲3四歩が「玉は包むように寄せよ」の手堅い寄せ。上部へのルートさえ防いでしまえば寄せが分かりやすくなります。以下は確実に寄せて先手勝ち。豊島二冠が4連勝で初の名人、そして三冠へと駆け上りました。

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名人戦棋譜速報より

第12期マイナビ女子オープン五番勝負第4局

【第2図は▲4三銀まで】

第2図は第12期マイナビ女子オープン五番勝負第4局(▲里見香奈女流四冠△西山朋佳女王)。後手が苦戦の中盤でしたが、図は完全に逆転しています。ただし△7七桂成としてしまうと▲同銀で壁銀を解消されて寄せにくくなってしまいます。ここで△5五桂▲6八香△4六桂が「寄せは俗手で」「要の金を狙え」の格言に則った基本通りの寄せ。数を足して、金をはがせば自然に受けが難しくなっていく局面です。以下数手で先手の投了。西山女王が初のタイトル防衛を果たしました。

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マイナビ女子オープン中継ブログより

第30期女流王位戦五番勝負第3局

【第3図は△7五金まで】

第3図は第30期女流王位戦五番勝負第3局(▲里見香奈女流四冠△渡部愛女流王位)。1勝1敗で迎えた第3局。里見女流四冠の三間飛車に渡部女流王位は現代調の急戦。5筋が争点になったため、先手は中飛車に振り直しています。図から▲7八飛が「戦いの起こった筋に飛車を振れ」で、再び三間飛車に戻ってきました。以下△7六歩に▲7四歩△同金▲7六飛で、後手の駒を押し返して長い中盤戦となりました。大熱戦となりましたが、最後は里見女流四冠が制して復位まであと1勝としています。

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女流王位戦中継ブログより

第32期竜王戦ランキング戦1組決勝

【第4図は▲9七玉まで】

第4図は第32期竜王戦ランキング戦1組決勝(▲永瀬拓矢叡王△渡辺明二冠)。角換わり腰掛け銀から、ここは後手が勝ち筋に入っています。図で△9五歩が「端玉には端歩」の格言通りの寄せ。▲9五同歩と取らせてから△7六銀成で先手玉は一手一手となり、後手の勝ちが決まりました。なお、9筋の突き捨てを入れないと△7六銀成が詰めろにならず、逆転してしまいます。

渡辺二冠は1組優勝し、2位の永瀬叡王とともに決勝トーナメントに進みます。

第60期王位戦挑戦者決定リーグ白組5回戦

【第5図は▲2五同桂まで】

第5図は第60期王位戦挑戦者決定リーグ白組5回戦(▲谷川浩司九段△羽生善治九段)。相居飛車の力戦で、難しい勝負が続いています。ここで△7三桂が「桂は控えて打て」の自陣桂。先手は▲2九飛と引いて△3九角の筋を消しましたが、△6五桂▲6六金△6四銀直▲2四歩△5七角と強攻しました。難解な形勢でしたが、最後は羽生九段が競り勝ちました。

本局の勝利で羽生九段は1433勝目。大山康晴十五世名人の持っていた最多勝利数に並びました。

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谷川浩司九段 王位戦中継ブログより

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羽生善治九段 王位戦中継ブログより

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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