金銀逆形は悪形にならない!?雁木右玉の組み方(2)【玉の囲い方 第72回】

金銀逆形は悪形にならない!?雁木右玉の組み方(2)【玉の囲い方 第72回】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2019年06月12日

前回のコラムでは「雁木右玉」をご紹介しました。今回は、組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。それでは、雁木右玉に組むまでの手順の復習です。

初手から、▲7六歩、▲6八銀、▲6六歩、▲5六歩、▲4八銀、▲7八金、▲5八金、▲6七銀、▲5七銀、▲4六歩、▲3六歩、▲4八玉、▲4七金、▲3七桂、▲2九飛(第1図)。

【第1図は▲2九飛まで】

それでは、組む際の注意点を見ていきましょう。

3七桂の跳ねはやや危険

組む際の注意点:第2図をご覧ください。

【第2図は▲3七桂まで】

いま先手が▲3七桂と跳ねたところですが、この手はやや危険です。すかさず、後手に△3五歩と突かれると、▲同歩は△3六歩で桂を取られてしまいます。▲2六飛は△3四銀と上がられ、▲3五歩には△同銀で飛車当たりになってしまうため、先手からは歩を取れず、逆に後手からは△3六歩▲同飛△3五歩と大きな拠点を作る手がいつでもあります。

よって、△3五歩には▲4七金と上がるしかないですが、△3六歩▲同金に△3四歩でも先手の金が上ずらされて不満ですが、さらに強く△3五歩! ▲同金△3四銀!(第3図)と歩を捨てて銀をぶつける順があります。

【第3図は△3四銀まで】

第3図から▲3四同金は△同金で後手の形も乱れますが、それ以上に4七の金がいなくなったことが大きく、桂頭をカバーするのが大変ですね。

また、第3図から▲3六金と辛抱するのも、△3五歩▲2六金と先手は一歩得にはなりますが、金が玉頭から離れ、大きな拠点を作られてしまい、これも後手が十分になります。

後手が持ち駒に歩を持っていない場合では、心配はありませんが、歩を持たれている場合は▲4七金と上がってから、▲3七桂と跳ねないとこのように、すかさず桂頭の薄さを咎められてしまうことがあります。次に、第4図をご覧ください。

【第4図は△6四歩まで】

無事に先手は雁木右玉に囲うことはできていますが、ここから仕掛けるとなると非常に難しいです。第4図から▲4五歩と突いても、△同歩▲同桂に△2二銀と引かれると△4四歩の桂取りが残り、無理な仕掛けとなります。

先手陣は上部に厚く、後手から仕掛けてくるのは大変ですが、先手も仕掛けていくことは大変な局面になっています。後手は仕掛けずに千日手になっても不満はありませんが、せっかく先手になったのに組み上がって仕掛けられず、結果千日手ではつまらないですよね。

このように、戦いを起こすことが難しくなりますので、先手で使うのはあまりオススメしません。では、次に囲いの発展形を見ていきましょう。

金銀逆形の悪形は、この場合桂頭の守りを厚くする

囲いの発展形:第1図から、▲3八玉~▲4八銀と、銀で玉の脇を固めることもあります。通常の右玉は4七に銀、4八に金ですが、その逆ですね。普通、金銀逆形は悪形とされていますが、この場合は逆形になることによって桂頭の守りが厚くなり、前回のコラムでご紹介したような、△4五歩▲同歩△3五歩▲同歩△4六歩などの攻めを防いでいます。ただし、終盤に金銀逆形をついて、△5八銀と打たれる手などが生じることもありますので、そこは注意です。また、第5図をご覧ください。

【第5図は▲5六銀左まで】

▲6五歩と伸ばし、▲5五歩△同歩▲同角と一歩交換をして、▲5六銀左と上がった形です。こうなれば、角筋が通っているので、▲4五歩と仕掛ける手もでき、手詰まりにはなりません。ただし、早めに△6四歩と突かれたりすると6筋の位は取れませんので、なかなか第5図の形にするのは難しいところもあります。

玉の囲い方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。
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