矢倉右玉の組み方(2)【玉の囲い方 第70回】

矢倉右玉の組み方(2)【玉の囲い方 第70回】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2019年06月06日

前回のコラムでは、「矢倉右玉」をご紹介しました。今回は、組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。それでは、矢倉右玉に組むまでの手順の復習です。初手から、▲7六歩、▲6八銀、▲7七銀、▲5六歩、▲4八銀、▲7八金、▲4六歩、▲4七銀、▲3六歩、▲3七桂、▲4八玉、▲3八玉、▲4八金、▲2九飛(第1図)。

【第1図は▲2九飛まで】

それでは、組む際の注意点を見ていきましょう。

組む際の注意点:第2図をご覧ください。

【第2図は▲6六歩まで】

初手から、▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩に▲6六歩と突いた局面です。矢倉に組むには、特に問題はありませんが、(なお、プロの対局では左美濃急戦などを警戒して、▲6六歩を突く指し方は激減しました)矢倉右玉に組むときは▲7七銀でなくてはなりません。なぜなのかを、分かりやすく局面を進めて見てみましょう。第3図が駒組みを進めた一例です。

【第3図は△1四歩まで】

もし、6六の歩が6七なら、▲6六銀△2二玉▲5五歩△同歩▲2五桂△2四銀▲5五銀など、左銀を使って攻撃態勢を作ることができますが、第3図では、歩がジャマをして7七の銀を6六へ進めることができません。

▲6八銀~▲5七銀とすれば、前回ご紹介した▲所司和晴七段ー△青嶋未来五段戦のような銀が二枚並ぶ形にはできますが、これでもやはり6六の歩が角筋を止めてしまい、▲4五歩と仕掛けにくくなってしまっていますよね。

第3図から▲6五歩と伸ばすのも、△7三桂とされると6五の歩が目標になってしまいます。6六~6五と二手かけたのが、マイナスになってしまうのであれば、6七のまま進めるほうがはるかによいですよね? なので、矢倉右玉に組む場合は、▲6六歩を突かないということが大切になってきます。また、第4図をご覧ください。

【第4図は△6五桂まで】

後手が玉の囲いを後回しにして、急戦を仕掛けてきましたところです。第4図から、▲6六銀も▲6八銀も、△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△7六飛とされて、早くも一本取られた形になってしまいます。

矢倉右玉は手数が掛かりますので、後手の急戦にも気をつけなくてはなりません。早い動きを見せてきた場合は、右玉はあきらめて矢倉などで迎え撃つほうがよいでしょう。

また、矢倉右玉は後手のほうが安全に組みやすいです。例えば、第2図の局面から後手が矢倉右玉を目指した場合は、先手は▲6六歩と角筋を止めてしまっているので、急戦を仕掛けていくことが難しくなっています。まずは、後手番のときに指してみるのがよいかもしれません。それでは、次に囲いの発展形を見ていきましょう。

囲いの発展形:第5図をご覧ください。

【第5図は▲5六銀直まで】

第1図から、▲6六銀、▲5五歩△同歩▲同銀、▲6六銀、▲5七銀、▲5六銀直と進めた局面です。手数は掛かりますが、角筋が通り、5六の銀もよい形でいつでも▲4五歩や、▲2五桂と攻め掛かっていけます。▲5七銀と引いてから、5筋の歩は角で交換していくのも、もちろんあります。▲6六銀~▲5五歩とガンガン攻めたり、▲6六銀~▲5七銀とじっくり手厚く構えたりと、矢倉右玉はさまざまな指し方ができます。自分から動きたいけど、右玉もやってみたい。そういう方にはオススメな戦法です。

玉の囲い方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。
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