父とともに将棋の道を歩む。鈴木環那女流二段のこれまでとこれから【女流棋士とデザート】

父とともに将棋の道を歩む。鈴木環那女流二段のこれまでとこれから【女流棋士とデザート】

ライター: マツオカミキ  更新: 2019年04月15日

ローソンのプレミアムロールケーキを食べながら、和やかな雰囲気で女流棋士にお話を聞くこのシリーズ。今回は鈴木環那女流二段のインタビューをお送りします。父の夢を叶えるために将棋を始めたことや、今年中に海外留学をする話など、これまであまり公表していなかったこともお話いただきました。

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鈴木女流二段が毎週通う「いつもの自分に戻れる場所」

――まずは、プレミアムロールケーキを召し上がってみてください。

ありがとうございます! この生クリーム、おいしいです。ローソンのUchi Caféシリーズは、研究会に差し入れで持っていくことも多くて。いろんな種類を買っていくのですが、プレミアムロールケーキは人気ですぐになくなってしまうので、私の分は残らないことがほとんどですけど(笑)。

――研究会の時は、皆さんでデザートを召し上がるんですか?

おやつの時間になったら、多い時は10人ぐらいでデザートを食べてます。将棋を指すのは頭を使うので、甘いものを食べることが、いい息抜きになってますね。

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――将棋の息抜きのために、他に何かやっていることはありますか?

「お笑い」が大好きなので、新宿のルミネtheよしもとに毎週通ってます。仕事がうまくいかなかった日や、ちょっと疲れちゃったなっていう時に、ふらっと行くんです。お笑いを観ているうちに、どんどん気持ちが軽くなって「あれ? なんか意外と大丈夫かも!」って思えるんですよ。思いっきり笑うことで、落ち込んでいる状態から、いつもの自分に戻してもらえる感じですね。

――劇場に行くってことは、相当お好きなんですね! お一人で行かれるんですか?

女流棋士仲間を誘うことが多いですね。飯野愛女流初段や、山口恵梨子女流二段、和田あき女流初段とか。一人で行くこともあるんですが、一人だとなぜか周りに気を遣ってしまって大声で笑えないので(笑)、誰かと一緒に行くことがほとんどです。

――鈴木女流の聞き手やイベントの時の話し方が聞きやすくておもしろいのは、お笑い芸人さんの話し方をよく見ているからなんですかね‥‥?

ちょっと恥ずかしくてあまり公に言いたくはないのですが(笑)、芸人さんの話し方を少しマネすることもありますね。

――やっぱり‥‥!

もちろん、はじめは「勉強しよう!」なんて思っていなかったのですが、観ているうちに「これはただおもしろいだけではなく、自分の仕事にも活かせるな」と思うようになって。お笑い芸人さんの話し方の技術は、本当にすごいです。1秒も無駄がないんですよ。

――特に、どんなことを参考にしていますか?

間の取り方や、お客さんとのやりとりとか。マネをして取り入れてみると、やっぱりお客さんにおもしろがってもらえることが多くて‥‥。って、あんまり言うと、今度聞き手やイベントに出て話す時のハードルが上がるので、恥ずかしいから本当は秘密にしておきたかったんですけどね(笑)。

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父の夢だった将棋の道を、父とともに歩み続ける

――鈴木女流のこれまでの経歴についてもお聞きしたいです。まず、どうして将棋を始めようと思ったんでしょうか?

小学3年生の終わり頃に、父から「将棋のプロになってみないか?」と言われたのがきっかけでした。

――お父様から、鈴木女流に?

そうなんです。もともと、父は将棋のプロ棋士になるのが夢だったらしいのですが、家族に反対されて途中であきらめたそうで。その夢を娘に託したいと思ったみたいなんです。

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――その時、鈴木女流は既に将棋が強かったんですか?

いえ、その時は、将棋の存在すら知らなかったんですよね‥‥。

――えっ、一度もやったことがない、ということですか?

そうそう、一度もやったことがない娘に向かって、父は「女流棋士になること」を提案してきたんです。ただ、私も父のことがすごく好きだったので「うん、いいよ! プロになってあげる!」って、笑顔で軽く答えちゃったんです(笑)。

――その時、お父様はどんな反応でしたか?

とっても嬉しそうでした。もともと無口な父だったのですが、私が将棋を始めてからは「環那が将棋を勉強している姿を見るのが好きだ」って、ずっと言ってましたね。私自身も、そんな父を見るのが嬉しくて。当時は、父の笑顔が見たくて将棋を指していたと思います。

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――将棋をやめたくなったり、お父様に反抗したりはしなかったんでしょうか。

一度だけ、父に「やめたい」と言ったことがありました。父はプロになる厳しさをよくわかっていたからこそ、将棋の指導はとても厳しかったんです。当時の私は大好きな父に叱られるのがつらくて「そんな風に怒られるのなら、もう将棋はやめる」と、小学6年生の頃に父に伝えました。父からは「本当にいいのか?」と言われたんですが、「いいの!」と言い放って、そこで将棋を一回離れたんです。

――どれぐらいの間、将棋から離れていたんですか?

‥‥1日、です。

――1日!(笑)

はい、たった1日だけ(笑)。次の日に学校から帰ってきたら、父が家で待っていて、少し元気がない様子で「将棋、やらないのか‥‥?」って聞いてきたんです。しょんぼりしている父を見たら、なんだかすごく切なくなっちゃって、「やるやる!」と(笑)。将棋から離れたのは、後にも先にもあの1日だけでした。

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そうして、最初は父のために始めた将棋でしたが、続けるうちにいつの間にか「父のため」よりも「自分がただ好きだからやっている」という感覚が強くなっていきました。そこからは、自分はたまらなく将棋が好きで、自分がプロになりたいから目指しているんだ、と思うようになったんです。

――その後、14歳にプロになられるわけですが、これまでで一番苦しかった時期ってありますか?

そうですね‥‥、強いてあげるとしたら、私が27歳の時に大好きな父が亡くなった時でしょうか。いつも一番応援してくれて、負けた時は私よりも悔しがってくれた父がいなくなってしまった時は、将棋の対局中でもふと考えてしまうほど、苦しい時期でした。

でも、1年くらい経った頃に、少しずつ前を向けるようになったんです。気持ちも少しずつ整理できて、「私は父が歩みたかった道を歩んでいる。だとしたら、今でも父は私と一緒に歩んでくれているはずだ」と感じるようになりました。そう思えるようになってからは、以前にも増して将棋を好きになって、楽しめるようになった気がします。

秋に海外留学へ。「大好きな将棋」を世界中の人と共有したい

――鈴木女流がこれから女流棋士として目指すものは、何でしょうか。

プロなので、将棋で勝たなければならないとは思っています。ただ、今最も力を入れて取り組みたいのは、海外の人に将棋の魅力を伝えることです。海外普及にあたって、自分の中に「実現したい自分」のイメージがかなり鮮明にあるんですよ。

――実現したい自分のイメージ、とは?

着物を着た私が、英語で大盤解説会をしているイメージです。自分の中ではもはや、そのイメージこそが「絶対に果たすべき使命」のような感覚があります。英語で将棋の魅力を伝えたい、海外にもっと普及したい。そのために、今年の秋に海外の大学へ短期留学する予定です。

――留学されるんですか!

はい。1年半前からマンツーマンの英会話教室に通って、本格的に勉強してきました。でも、英会話教室だけだと、せっかく新しい言葉やジョークを覚えても、使える相手が先生だけなんですね。それじゃあもったいないから、「英語を話す環境を自分でつくろう!」と思って。

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もともと英語が好きだったこともあって、「自分の大好きな将棋と英語を組み合わせて仕事がしたい」と思っていました。現在31歳なのですが、30歳になる時に「30代はどんな風に過ごそう?」と考えた結果、10代の頃からずっと勉強してみたかった英語に、本腰を入れて取り組みたいと思ったんです。

――自分の目標を実現するための、大きな一歩を踏み出すのですね。

そうですね。将棋の実力を伸ばすことはもちろんなんですが、英語も掛け合わせて、将棋の素晴らしさを、もっと世界に広めていきたい。「自分の大好きなものを、たくさんの人と共有したい」というのが、私が今最もやりたいことです。ですから、今年、ちょっと海外に行ってきますね! 大盤解説会で着物姿の私が英語でペラペラと解説している姿を、皆様にお見せできるように頑張ります!

まとめ

ハキハキと明るく話す鈴木女流二段のお話から、「将棋が大好き」という気持ちがひしひしと伝わってきました。取材後も「勝ち負けよりも、美しい一手を見ることにおもしろさを感じるんです。美しい絵画を見ているような。特に藤井聡太七段の棋譜とか、もう素晴らしすぎて‥‥」と、将棋の魅力について楽しそうにお話してくださったのが印象的でした。それと、「プレミアムロールケーキ」を差し入れてくれたローソンクルーのあきこちゃんへ向けて、素敵なメッセージもいただきましたよ。

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取材協力鈴木環那女流二段

1987年11月5日生まれ。千葉県富津市出身。(故)原田泰夫九段門下。 2002年10月1日、女流2級。2012年5月10日、女流二段に昇段。

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ローソン×日本将棋連盟 コラム

マツオカミキ

ライターマツオカミキ

2014年からライターとして活動する平成元年生まれ。28歳にして初めて将棋に触れました。将棋を学びながら、初心者目線で楽しさをお伝えします!普段は観光地や企業、お店を取材して記事を執筆中。

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