渡辺明棋王が5期ぶりに王将復帰。ストレートで久保王将を破った第68期王将戦七番勝負を振り返る

渡辺明棋王が5期ぶりに王将復帰。ストレートで久保王将を破った第68期王将戦七番勝負を振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2019年03月01日

久保利明王将渡辺明棋王が挑戦した王将戦七番勝負。両者のタイトル戦は2010年度の第36期棋王戦以来で、その時は久保が3勝1敗でタイトルを防衛している。今期の渡辺は8割を超える勝率で、昨年の豊島将之八段(当時)に続き、絶好調の挑戦者を久保が迎え撃つことになった。

王将戦七番勝負第1局

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王将戦七番勝負第1局 王将戦中継ブログより

第1局は恒例となっている静岡県掛川市の「掛川城」で行われた。久保のゴキゲン中飛車の出だしから、角交換振り飛車の持久戦となった。

【第1図は△5八角成まで】

大詰めは第1図。互いの玉はまだ詰まず、玉頭の勢力争いが大事な局面だ。実戦は▲8三銀△同金▲同歩成△同玉▲8四歩△同玉▲6二角△8三玉▲8四歩△7二玉に▲5四桂が冷静な一手で、先手の勝ちが決まった。以下王手ラッシュとなったが、最後は8五に逃げ込んだところで後手の投了。久保の猛追を振り切った渡辺の先勝となった。

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好スタートを切った渡辺棋王 王将戦中継ブログより

王将戦七番勝負第2局

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王将戦七番勝負第2局 王将戦中継ブログより

第2局は久保の中飛車に渡辺は急戦。対して久保は角道を止めて、仕掛けの前後で間合いを計る戦いとなった。

【第2図は△5七銀まで】

渡辺がペースを握り、端も詰めて優位に立っている。ここで△9三角が巧打。▲7五歩で銀取りを受けたが、△7一金と引いて飛車が詰んでいる。▲3一飛成△同銀▲5二金と食いついたが、これでは苦しい。久保は粘りに粘ったが渡辺が押し切り2連勝となった。

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2連敗と苦しい久保王将 王将戦中継ブログより

王将戦七番勝負第3局

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王将戦七番勝負第3局 王将戦中継ブログより

第3局はこちらも恒例となっている栃木県大田原市の「ホテル花月」にて開催。久保のゴキゲン中飛車対渡辺の超速3七銀という流行の戦型となった。

【第3図は△9二同銀まで】

渡辺の端を絡めた仕掛けが成功し、居飛車がリード。第3図で▲6二銀が強烈な捨駒。対して△6二同金なら▲7一銀△同玉▲9二飛成が狙いとなっている。実戦は以下△7二金▲6一銀不成△9三銀▲同飛成△同桂▲9四歩と攻めて筋に入った。渡辺が鋭く攻めを決めて3連勝。

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渡辺棋王が3連勝で奪取に王手をかけた 王将戦中継ブログより

王将戦七番勝負第4局

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王将戦七番勝負第4局 王将戦中継ブログより

第4局は沖縄県那覇市の「琉球新報本社ビル」で開催。久保の三間飛車対渡辺の持久戦の出だしだったが、久保が右四間に振り直して居飛車系の将棋となった。

【第4図は▲1三銀まで】

渡辺が初日の段階で作戦勝ちとなる。第4図は終盤戦で、後手玉にも詰めろが掛かったが、△2二金▲5四歩△1三金が冷静な対応。駒を補充すれば先手玉は△6九金以下の詰めろになる。実戦は以下▲8六歩と手を戻したが、△同飛▲8七銀△6六飛▲同銀に△5六角が詰めろ飛車取りで勝負あり。渡辺が快勝で4連勝。ストレートで5期ぶりの王将復帰を決めた。渡辺は1年2ヶ月ぶりに二冠復帰。久保の失冠で40代のタイトルホルダーが消え、渡辺が最年長のタイトルホルダーとなった。

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ストレートで王将を奪取、二冠復帰となった 王将戦中継ブログより

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久保王将は「チャンスの少ない将棋が多かった」とシリーズを振り返った 王将戦中継ブログより

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。

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