「タイトル制覇はゴールじゃなかった」目標を見失った清水市代女流六段がみつけたもの【女流棋士とデザート】

「タイトル制覇はゴールじゃなかった」目標を見失った清水市代女流六段がみつけたもの【女流棋士とデザート】

ライター: マツオカミキ  更新: 2019年03月15日

女流棋士とデザート

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ローソンのプレミアムロールケーキを食べながら、和やかな雰囲気で女流棋士にお話を聞くこのシリーズ。今回は清水市代女流六段のインタビューをお送りします。タイトルをすべて制覇した後に目標を見失った話や、対局の時に思い出す小説の言葉などを教えてくださいました。

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「対局はぜいたくな時間」と語る理由とは?

――プレミアムロールケーキを食べていただきながら、お話を聞かせてください。

よろしくお願いします。これ、美味しいですよね! 将棋連盟の理事を務めているのですが、理事室にこもってばかりだと頭が疲れてくるので、気分転換にローソンへ行って、買ってきて食べています。

――煮詰まってる時は、気分転換に甘いものが食べたくなったりしますよね。

そうそう。それと、理事会は全員が熱意を持って役員を務めているので、会議では議論が白熱することもあります。そういう時に皆でデザートを食べて息抜きすると、全体の雰囲気がやわらかくなり、自然と笑顔になります。甘いものは、重い空気を解消するお助けマンです(笑)。

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――常務理事としては、どのようなお仕事をされているんですか?

今は、経営企画室で開発や渉外を担当しています。企業を訪問したり、新しい商品を開発したり。苦労は多いですが、新商品やイベントを作り上げた時の喜びも大きく、充実感があります。ただ、やることがたくさんありすぎるので、プライベートでのんびりする時間はここしばらく取れてないですね‥‥。

――お休み、ないんですか‥‥!

やっぱり、公務がない日も頭の中は経営や商品開発のことばかりになってしまって、自分の時間はなかなか‥‥。

――ストレス発散や、疲れを癒す時間も、あまり取れなかったり?

そうなんですよ。だから今は、対局の日が自分にとってぜいたくな時間になってます。公務のことは一切考えず、盤上だけに集中できるので。将棋を研究する時間は昔に比べたら確実に減ってしまったけれども、一局に対する集中力はどんどん高まっていて、対局への想いは強くなっていますね。

清水女流六段の将棋を支えた「小説の言葉」

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――お休みはほとんど取れていないとのことですが、もしも完全なオフが取れるとしたら何をしたいですか?

本を読みたいですね。日当たりのいい縁側で、好きな小説をずーっと読んでいたい。

――どんな小説がお好きなんですか?

時代小説をよく読みます。池波正太郎さんの大ファンなので、池波さんのシリーズはだいたい読破しました。有名どころだと『鬼平犯科帳』『剣客商売』など。どの主人公も完全無欠のヒーローやヒロインではなく、少し癖があったり欠点があったりするんですが、そんな主人公に自分を重ねて読んでいることも多いです。

――例えば、印象に残っているシーンはありますか?

『鬼平犯科帳』の主人公・長谷川平蔵が賊に襲われて窮地に陥るシーンで「それにふさわしい情緒へ落ち込まず笑いたくなくともまず笑ってみるのが良いのだ」と言うんですが、当時読んだ時は「自分の将棋でも活かせるな」と感じました。

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不利な局面になった時に「もう無理だ」と思ってしまうと、良い手を探す気力がなくなっちゃうじゃないですか。だから、そういう時こそ「チャンスだ」と思うようにしよう、って。

――実際に不利な局面になった時に、セリフがそのまま浮かんでくるのでしょうか?

そうです。それで救われたことが、もう何度もありますね‥‥。この言葉のおかげで、苦しい局面から逆転できたこともあります。

――趣味の読書ですら、将棋に活きてくるんですね‥‥!

本当ですね、職業病かもしれない‥‥(笑)。ただ、同じ小説でも、読むタイミングによって感動する部分や活かす方向性が全然違うんですよ。

――読むタイミング、というと?

例えば、読んだ当時は「対局に活かそう」と思ったセリフでも、今また読み直したら「経営に活かそう」と思うかもしれません。タイトルを目指している時期、タイトルホルダーの時期、理事になってから、それぞれのタイミングで感銘の受け方が異なるので、同じ小説を何度も読み返して楽しんでいます。

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「タイトルを取ってからがスタート」目標を見失った時に考えたこと

――ずっと女流棋士として第一線でご活躍されてきてますが、何が清水女流六段のモチベーションになっているのでしょう?

女流棋士になりたての頃はタイトルを取ることが目標でしたので、それに向かってがむしゃらに進んでましたね。それが苦しいなんて感じたこともなく、当たり前だと思っていて、ひとつ上の目標に向かって、一段ずつステップアップしてきたと思います。ただ、目標を見失って、どうすれば良いかわからなくなった時期もありました‥‥。

――清水女流六段にも、そんな時期が‥‥。

その苦しかった時期が、当時あった四つのタイトルを制覇した後でした。それまではタイトルに向かって走ってきましたが、全冠制覇した瞬間、自分がどこに向かって進めばいいのか、盤に向かった時に何を求めればいいのか、わからなくなってしまったんです。

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だけど、目標を見失っている間にも、取材が1日に4~5本あったり、普及のお仕事があったりで、やるべきことは次々と現れる。そうして自分自身を振り返る時間もないままに、気が付いたらタイトル防衛戦の時期になっていて‥‥。そんな機械的な生活が続いて、自分の中が真っ白になってしまったんです。

――自分の心の整理がつかないまま、走り続けるのは大変なことですよね。

それで少し体調を崩したり、成績も下がったりして、「もしかしたら一生勝てないんじゃないか」と思ってしまったり。

――そこから、どのように気持ちを切り替えられたんでしょう?

周りの方々からいろいろと教えを受けて、ふとしたきっかけで「タイトルを目標にするのではなく、自分を高めることを目標にしよう」と思うようになりました。そうして少しずつ、前に進むことができたと思います。

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――一方で、「自分を高めること」だと目標が大きすぎて、モチベーションが下がってしまいそうな気もしますが‥‥。

たしかに、自分の比較対象が常に自分なので、甘くなってしまいがちなのが難しいところです。そうならないためにも、自分の弱い部分をしっかり見つめて、ひとつずつクリアしていくことにしたんです。

――「自分を高める」を目標にしたことは、将棋にも良い影響を与えましたか?

そうですね。一番大きかったのは、負けた後の気持ちの持ち方です。それまでは、負けたらズーンと奈落の底まで落ちてしまうような感じで、一局にかける想いが強すぎました。しかし、将棋指しならば、対局はまた必ずやってきます。だから「負けも次の糧にしよう」と、すごくポジティブに考えられるようになりました。

――負けた後も、落ち込みすぎずに前を向けるというか‥‥?

ううん、やっぱり落ち込むんですけどね(笑)。負けた悔しさって、ずっと引きずりますから。‥‥今でも、20年前の対局で負けた時の悔しさとか、簡単に思い出せちゃうぐらい。

――20年も引きずるものなんですか‥‥!

そうなんです。だからこそ、悔しさを忘れるのは無理なので、もはや「悔しさと付き合っていこう」と思えるようになりました。万が一同じ局面がやってきた時に、次はもっと良い手を指せるようにしよう、と。

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――良い意味であきらめることで、前を向けたんですね。

はい。その時から、タイトル獲得はゴールではなく、むしろスタートだったんだなと思うようになりました。そこで、目標を「タイトル獲得」から「自分を高めること」に変更したからこそ、長く続けてこられたのかもしれません。

――最後に、これから女流棋士として目指したいものはありますか?

目の前の一局に、全力投球で臨み続けたいと思います。私は定跡系が苦手で、割と個性的な将棋が多いと言ってもらえることも多いので、自分らしい将棋を皆さんに一局でも多くご覧いただけるように努めたいと思います。

理事としては、タイトルを取った経験も活かして、女流棋士の皆さんのお役に立てればと思います。また、ファンあっての将棋界ですので、ファンの方々に恩返しができるよう、喜んでいただける商品もつくっていきたいです。叶えたいことがたくさんあるので、引き続き全力で進みたいと思います!

まとめ

やわらかい笑顔でチャーミングな雰囲気の、女流棋界のレジェンド・清水女流六段。「道なき道を進むのが、ワクワクして好きなんです」ともおっしゃっていて、その強い精神力があるからこそ、四冠や女性初の理事など、ずっとご活躍されてきているのだろうと感じました。また、「プレミアムロールケーキ」を差し入れてくれたローソンクルーのあきこちゃんには、素敵なメッセージをいただきましたよ。

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取材協力清水市代女流六段

1969年1月9日生まれ。東京都東村山市出身。(故)高柳敏夫名誉九段門下。 クイーン名人・クイーン王位・クイーン王将・クイーン倉敷藤花の資格を保持している。 タイトル戦登場数は70回、獲得は女流名人10期、女流王位14期、女流王将9期、倉敷藤花10期 の合計43期。 現在、日本将棋連盟常務理事を務めている。

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マツオカミキ

ライターマツオカミキ

2014年からライターとして活動する平成元年生まれ。28歳にして初めて将棋に触れました。将棋を学びながら、初心者目線で楽しさをお伝えします!普段は観光地や企業、お店を取材して記事を執筆中。

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