渡辺明棋王が広瀬章人竜王を退け7連覇、第44期棋王戦五番勝負を振り返る

渡辺明棋王が広瀬章人竜王を退け7連覇、第44期棋王戦五番勝負を振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2019年03月19日

渡辺明棋王広瀬章人竜王が挑戦した第44期棋王戦五番勝負。広瀬は竜王を獲得したばかり、渡辺は並行する王将戦での挑戦中で、ともに二冠を狙う、勝ちまくっている二人の対戦となった。両者がタイトル戦で顔を合わせるのは初。第1局開始前の対戦成績は広瀬から見て10勝9敗と拮抗している。

棋王戦五番勝負第1局

第1局は石川県金沢市「北國新聞会館」にて開催。広瀬が先手の相掛かりから、じっくりとした戦いになった。

【第1図は▲4四桂まで】

第1図の▲4四桂は部分的には厳しい攻めだが、ここで金を逃げずに△4三銀上が好手。▲3二桂成に△同銀を用意して、玉が攻めに近付かないようにしている。実戦は▲5五銀△同銀▲同角に△6三金が飛車の横利きも通す味の良い受け。手番を得てから△4七銀と反撃し渡辺が先勝。後手番で大きな1勝を得た。

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駒箱を開ける渡辺棋王 棋王戦中継ブログより

棋王戦五番勝負第2局

第2局は富山県魚津市「新川文化ホール」にて開催。角換わり腰掛け銀から双方間合いを計り、先手が仕掛けて戦いが始まった。

【第2図は△5九角成まで】

後手玉にどう手を付けたらよいか難しいが、▲7五歩が急所の攻め。次に▲7四歩と取り込めば▲7五桂の筋も生じる。実戦は△8七歩▲同金△5七金と食いついたが、▲同金△同成銀に▲7四歩が厳しく、先手優勢になった。△6七成銀と寄られても先手は受けの利く形なのが大きい。渡辺が2連勝で一気に防衛まであと1勝とした。

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五番勝負第2局 棋王戦中継ブログより

棋王戦五番勝負第3局

第3局は新潟県新潟市「新潟グランドホテル」にて開催。角換わり模様の出だしだったが、後手が角道を止めて持久戦を選ぶ。お互いにじっくりと陣形を組み上げたところで、後手が動いて戦いが始まった。

【第3図は△6六角まで】

ここでは▲7六金と逃げるのが自然だが、△5七角成▲6七金△4六馬となって大変だ。金を見捨てる▲6八金が意表の好手。△7五角と取らせて▲7四飛と打てば、後手の角は働きが悪い。最後は後手の堅陣を突き崩し、広瀬がシリーズ初勝利をあげた。

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シリーズ初勝利をあげた広瀬竜王 棋王戦中継ブログより

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渡辺棋王はストレートでの防衛はならなかった 棋王戦中継ブログより

棋王戦五番勝負第4局

第4局は栃木県宇都宮市「宇都宮グランドホテル」にて開催。第2局に続き角換わりとなったが、微妙に形をずらして後手が先攻した。

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五番勝負第4局 棋王戦中継ブログより

【第4図は△3三桂まで】

安全勝ちを目指すなら▲6六玉などが有力だが、渡辺は▲3三歩成から詰ましにいった。以下△3三同金▲2三歩△同竜▲3一銀△同玉▲4二銀△2一玉▲4三角△3二歩▲2二歩△同竜▲3一金△1二玉▲3四角成まで先手の勝ち。▲3四角成に△同金は▲2二馬、△2三歩にも▲2四桂△同金▲2二馬で詰む。思ったよりも詰ましにくく渡辺は冷や汗をかいたが、後手玉をピッタリ即詰みに討ち取った。

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7連覇を達成した渡辺棋王 棋王戦中継ブログより

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広瀬竜王の二冠目はならなかった 棋王戦中継ブログより

タイトルホルダー同士のシリーズは渡辺が3勝1敗で防衛。棋王の連覇を7に伸ばした。また、王将戦でもタイトルを獲得し、二冠に復帰して2018年度を終えた。

一時は八大タイトルを8人が分けあう群雄割拠の時代となった2018年度だったが、二冠の豊島、渡辺が抜け出す格好となった。豊島は三冠を目指して名人戦に挑戦するが、2019年度はどのようなシーズンになるだろうか。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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