絶好調の渡辺明棋王が二冠達成に王手。永瀬拓矢七段が高見叡王への挑戦権獲得まであと1勝【注目対局プレイバック 2019年2月上旬】

絶好調の渡辺明棋王が二冠達成に王手。永瀬拓矢七段が高見叡王への挑戦権獲得まであと1勝【注目対局プレイバック 2019年2月上旬】

ライター: 渡部壮大  更新: 2019年02月19日

注目対局を振り返るこのシリーズ。今回は棋王戦や王将戦が行われた2月上旬の注目対局を振り返っていきます。絶好調の渡辺明棋王、果たしてタイトル戦でも勝ち星を重ねることができたのでしょうか?

第44期棋王戦第1局

【第1図は▲4四桂まで】

第1図は第44期棋王戦第1局(▲広瀬章人竜王△渡辺明棋王)。先手の▲4四桂は「要の金を狙え」の攻めですが、ここで後手に好手がありました。実戦の△4三銀上が「桂頭の銀定跡なり」です。持駒の銀を使うことの多い格言ですが、この場合は盤上の銀を使っての受けです。▲3二桂成に△同銀を用意することで、自玉の安全度を確保しています。実戦は▲5五銀△同銀▲同角と攻めを続けましたが、△6三金が飛車の横利きも通す一石二鳥の受けで、後手がリードしています。以下は渡辺棋王が勝ちきって開幕局を制しました。

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7連覇へ好スタートをきった渡辺棋王 棋王戦中継ブログより

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初戦を落とした広瀬竜王 棋王戦中継ブログより

第68期王将戦七番勝負第3局

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第68期王将戦七番勝負第3局 王将戦中継ブログより

【第2図は△4二金まで】

第2図は第68期王将戦七番勝負第3局(▲渡辺明棋王△久保利明王将)。ゴキゲン中飛車対超速3七銀戦法の定跡形です。図から▲3五歩△同歩▲9五歩が「開戦は歩の突き捨てから」です。9筋の突き捨ては少し早いようですが、すでに先手は桂と歩を手にしているため、後の▲9三歩からの端攻めを見越しています。実戦も端攻めを実現させて先手良しとなりました。渡辺棋王は3連勝で、王将復位に近付きました。

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王将奪取へ王手をかけた渡辺棋王 王将戦中継ブログより

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久保王将は0勝3敗とカド番に立たされた 王将戦中継ブログより

第44期棋王戦第2局

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第44期棋王戦第2局 棋王戦中継ブログより

【第3図は△1九角成まで】

第3図は棋王戦第2局(▲渡辺棋王△広瀬竜王)。角換わりから双方馬を作り合って終盤戦に入るところです。ここで▲2二歩は確実ですが、玉から遠く遅い攻めです。▲2二馬と突進するのが「終盤は駒の損得より速度」です。馬と金の交換になりますが、龍を作れば速い攻めが望めます。後手も▲2二馬に対し△2四歩▲同飛△4六馬と馬を好位置にひきつけて難しい戦いです。以下も熱戦が続きましたが、渡辺棋王が制して防衛まであと1勝としました。

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防衛(7連覇)に王手をかけた渡辺棋王 棋王戦中継ブログより

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広瀬竜王は2敗目を喫した 棋王戦中継ブログより

岡田美術館杯第45期女流名人戦第3局

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女流名人戦中継ブログより

【第4図は△4九飛成まで】

第4図は岡田美術館杯第45期女流名人戦第3局(▲伊藤沙恵女流二段△里見香奈女流名人)。後手が桂損ながら飛車を成り込んでいよいよ終盤戦です。ここで堂々と▲3三とが「と金の遅早」です。△3九角を打たれて▲5八飛で飛車は攻めに使えませんが、攻めはと金を使って間に合わせようということです。▲5八飛に△5五歩▲6七銀引△4六歩と攻めましたが、▲3六角と投入してあくまでもと金の活用を間に合わせようとします。後に▲4三歩と垂らす手を組み合わせ、先手が堅陣を生かして押し切りました。伊藤女流二段は連敗を止める大きな1勝です。

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伊藤女流二段は連敗を止めた 女流名人戦中継ブログより

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里見女流名人は10連覇へ足踏み 女流名人戦中継ブログより

第4期叡王戦挑戦者決定戦第1局

【第5図は▲7六歩まで】

第5図は第4期叡王戦挑戦者決定戦第1局(▲菅井竜也七段△永瀬拓矢七段)。ゴキゲン中飛車からの相穴熊戦です。図は▲7六歩と角に当てたところ。実戦は「相穴熊では角より金」の格言通り、△3九角成と切りました。駒損ですが、以下▲3九同金△7九歩成で、桂香を取り返せる形です。以下大熱戦となりましたが、先に金をはがした効果は大きく後手に分のある戦いとなりました。第1局を制した永瀬七段が挑戦まであと1勝としました。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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