藤井七段が順位戦負けなしの18連勝で歴代1位タイに。王将戦は絶好調の渡辺棋王が開幕戦を制す。【注目対局プレイバック 2019年1月上旬】

藤井七段が順位戦負けなしの18連勝で歴代1位タイに。王将戦は絶好調の渡辺棋王が開幕戦を制す。【注目対局プレイバック 2019年1月上旬】

ライター: 渡部壮大  更新: 2019年01月30日

2019年が始まりました。王将戦で始まり、2月には棋王戦も開幕します。順位戦も昇級者が決まり始めています。
(肩書・段位はいずれも当時)

第68期王将戦七番勝負第1局

【第1図は△2五歩まで】

第1図は第68期王将戦七番勝負第1局(▲渡辺明棋王△久保利明王将)。後手が△2五歩と取り込んだところで、次に△2六歩~△2七歩成~△3七とまで間に合ってしまうといけません。先手は陣形が万全で、戦いに持ち込みたいところです。第1図から▲3五歩△同歩▲6五歩△5五歩▲同歩△4四銀▲8五歩△同歩▲6六角と進行しました。▲3五歩、△5五歩、▲8五歩が「開戦は歩の突き捨てから」です。あちこちで歩がぶつかり、局面が激しい流れになりました。以下も難しい戦いが続きましたが、最後は玉頭戦を制して渡辺棋王が先勝しています。

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先勝した渡辺棋王 王将戦中継ブログより

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開幕戦を落とした久保王将 王将戦中継ブログより

第77期A級順位戦7回戦

【第2図は▲2三銀まで】

第2図は第77期A級順位戦7回戦(▲豊島将之二冠△広瀬章人竜王)。角換わり腰掛け銀の激しい攻め合いで、次に▲3二飛~▲6二飛成が実現すれば必死です。ここで△4一玉が「玉の早逃げ八手の得」の好手でした。これで意外にも後手への速い攻めがありません。実戦は▲3四歩と攻めましたが、構わず△5九飛▲7八玉△8六歩▲同金△8八歩▲同玉△6八角と攻め、広瀬竜王が押し切りました。ここまで負けなしの豊島二冠でしたが、ここでストップ。1敗で並びました。

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名人戦棋譜速報より

【第3図は▲5三桂成まで】

第3図は同日に行われた第77期A級順位戦7回戦(▲三浦弘行九段△羽生善治九段)。相掛かりから後手優勢の終盤戦です。ここでも△7一玉が勝ちを決める早逃げの好手。以下▲5二とに△5三銀▲同とで手を稼ぐことに成功し、△3八銀▲4八金△5八歩から鋭く寄せを決めました。九段としての再出発を快勝した羽生九段。広瀬竜王、豊島二冠、羽生九段と上位3人が1敗で並ぶ混戦となりました。8回戦では豊島─羽生戦、9回戦では広瀬─羽生戦と、直接対決を控えています。

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名人戦棋譜速報より

第4期叡王戦本戦

【第4図は▲4四歩まで】

第4図は第4期叡王戦本戦(▲渡辺大夢五段△菅井竜也七段)。ここで△2六香が厳しい攻め。▲4三歩成には△2八香成で一手勝ちです。実戦は▲2六同飛と取りましたが、△3八歩成で挟撃が実現しました。「玉は包むように寄せよ」です。以下▲4三歩成に△9六馬▲5八玉△7八馬▲4八金△3七金▲同金△同とと詰めろの連続で寄せきりました。

第77期順位戦C級1組

【第5図は△4四金まで】

第5図は第77期順位戦C級1組(▲藤井聡太七段△富岡英作八段)。次に△4七歩成が詰めろになるため、先手は単純なスピード勝負は勝てません。ここで▲2九飛が好手。△2八歩で飛車が取られてしまう形ですが、先手玉の逃げ道を作ったことが大きいのです。「終盤は駒の損得より速度」ですね。それから▲6三銀△同金▲7二角と鋭く攻めて左右挟撃を実現し、勝ちきりました。本局に勝った藤井七段は順位戦デビューから負けなしの18連勝。中原誠十六世名人の持つ記録に並びました。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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