深浦九段がA級順位戦プレーオフの立役者?6者が同率で並んだ歴史的なプレーオフなどを振り返る【2018年3月振り返り】

深浦九段がA級順位戦プレーオフの立役者?6者が同率で並んだ歴史的なプレーオフなどを振り返る【2018年3月振り返り】

ライター: 生姜  更新: 2019年01月07日

2018年振り返り

2018年の将棋界を1か月ごとに振り返っていくこのシリーズ。将棋界では4月から新年度が始まり、3月が年度末となります。今回のコラムは将棋界1年を締めくくる3月に起きた歴史的なプレーオフや、ふたりのタイトルホルダーがタイトルを防衛した対局を振り返っていきましょう。(肩書・段位はいずれも当時)

歴史的6者プレーオフ(2018年3月1日)

第76期A級順位戦ではまるで作ったような出来事が起こりました。リーグ表を見てみましょう。

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稲葉陽八段、羽生善治竜王、広瀬章人八段、佐藤康光九段、久保利明王将、豊島将之八段が6勝4敗で並んだのです。これだけ同率で並ぶのはこれまでにありませんでした。6者によるパノラマ式のトーナメントが組まれ、豊島八段が久保王将、佐藤九段、広瀬八段を破りましたが、羽生竜王に阻まれます。羽生竜王は続く稲葉八段にも勝ち、佐藤天彦名人への挑戦権を獲得しました。この歴史的プレーオフは今後語り継がれることになるでしょう。 この立役者(?)のひとりが深浦康市九段です。深浦九段は敗れると降級の可能性がありました。A級の残る対局は本局のみ。深浦九段が勝つと6者プレーオフ、久保王将が勝つと単独挑戦になるという状況でした。

【第1図は△1七桂まで】

図は深浦九段が勝ちになった局面。△1七桂から端を攻めたのが急所。▲1七同歩△同歩成▲同香△1六歩としつこく攻めて、堅そうに見えた先手玉はたちまち受けが利かなくなりました。以下は深浦九段が粘る久保王将を振り切って勝利。深浦九段は魂の残留を果たしたのです。一方で屋敷伸之九段と行方尚史八段、渡辺明棋王はB級1組に降級となりました。

久保王将、豊島八段を破り王将位を防衛(2018年3月14日・15日)

3月、豊島八段は9局も対局があり、豊島八段の月だったといっても過言ではないでしょう。王将戦とA級プレーオフが並行していたため、対局→移動日→対局→移動日というほとんど休みがない日程でした。その勢いに乗る豊島八段と王将戦を戦っていたのは久保利明王将。4勝2敗のスコアで防衛を果たしました。振り飛車党にはうれしいニュースだったと思います。このシリーズでは相振り飛車や乱戦も見られ、まさに双方の研究が垣間見えました。

【第2図は▲8七香まで】

防衛達成となった第6局を見てみましょう。図は▲8七香と力をためた局面。玉頭に圧力がかかって先手に流れが傾きそうですが、△7五桂▲同歩△8六歩▲同香△8五歩がうまい手順でした。4九馬を生かして香筋を止めています。この攻防が勝敗を分けました。現在の豊島八段は王位と棋聖のタイトルをふたつ持っていますが、この頃は惜しくもタイトルが取れない境遇でした。現在の活躍は皆さんもご存知ですね。

渡辺明棋王が踏ん張り6連覇達成(2018年3月30日)

A級から陥落し、不調説も流れていた渡辺棋王。その最中に棋王戦の防衛戦を戦っていました。挑戦者は永瀬拓矢七段。永瀬七段は安定して高勝率を残している実力者です。タイトルを持っていても不思議ではない実力というのは書き過ぎでしょうか。とにかく勝ちまくっていました。両者の調子を見てみると、永瀬棋王を予期した方も多いのではないでしょうか。渡辺棋王から見て○●○●という成績で迎えた第五局。興味深いのはここまで先手番を持ったほうがすべて勝っているということです。注目の振り駒の結果は渡辺棋王の先手。将棋は相居飛車の力戦形になりましたが、渡辺棋王の的確な指し回しが光りました。

【第3図は△5八金まで】

図は先手勝勢。ここで▲1二歩が決め手で、永瀬七段は7分考えてそのまま投了しました。後手玉は端が薄いのです。△1二同香に▲1三歩△同香▲1一飛△2一銀▲1二銀が一例で後手玉は持ちません。渡辺棋王は防衛を果たし、これで6連覇を達成。このまま記録を伸ばしていきそうにも感じます。

渡辺棋王は自身のブログに《ボロボロだった年度の最後にこのタイトルが残ってくれたことに感謝したいです》と記しています。ファンとしては胸が痛くなるような言葉ですが、同時にほっと安心をされたことと思います。若手の台頭が目立つ昨今の将棋界ですが、渡辺棋王もその壁として、この先も君臨することでしょう。

久保王将と渡辺棋王の防衛はタイトル保持者の貫録を示した格好といえるでしょう。次回は新年度となった2018年4月を振り返ります。佐藤天彦名人への挑戦を決めた羽生善治竜王が名人戦で歴史的な金字塔を打ち立てたのもこの月でした。

生姜

ライター生姜

1993年生まれ。将棋連盟モバイルを中心に活動する中継記者。2018年現在は最年少の記者。棋士の食事注文に肉生姜焼き定食があると反応する。

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