アマ竜王、アマ名人が揃って予選落ち。ハイレベルな大会で史上4人目の連覇を達成したのは?第35期アマチュア王将戦

アマ竜王、アマ名人が揃って予選落ち。ハイレベルな大会で史上4人目の連覇を達成したのは?第35期アマチュア王将戦

ライター: 渡部壮大  更新: 2018年12月07日

第35期アマチュア王将戦の全国大会が12月1日に東京都港区「チサンホテル浜松町」で、2日目は翌2日に「将棋会館」にて行われた。地区予選代表選手17人にアマチュア銀河戦から4人、そして今年の全国大会上位者から6人が招待された。アマ王将戦の地区予選は在住を問わないことが特長で、遠征する強豪も多く予選から非常にレベルの高い戦いが繰り広げられる。

amaousho2018_01.jpg

全国大会に出場できる人数が最も少ない大会だけあって、予選の密度が濃い。2勝通過2敗失格のおなじみのシステムだが、今年全国タイトルを取って招待された選手でさえ、予選落ちをしてしまうレベルだ。

amaousho2018_02.jpg

最も厳しい組はアマ竜王の桐山隆さん、アマ名人の鈴木肇さんに加え、2度アマ王将を取っている中川慧梧さん、昨年のアマ竜王の藤原結樹さんが揃った5組。1敗同士で桐山さんと鈴木さんのアマタイトルホルダーが激突することになった。結果は鈴木さんが逆転勝ちを収めたが、3回戦で中川さんに敗れ予選通過ならず。アマ竜王、アマ名人が揃って予選落ちとなった。

amaousho2018_03.jpg

1勝1敗の予選3回戦で前アマ王将の森村賢平さんと、元奨励会三段の折田翔吾さんが対戦。昨年の決勝のカードが予選通過を懸けて行われる事態になった。結果は森村さんが勝って予選通過。銀河戦でプロを立て続けに破る活躍を見せている折田さんですら予選落ちとなってしまった。

amaousho2018_04.jpg

予選3回戦の支部名人の禰保拓也さんと、元アマ名人の浅田拓史さんは珍しい相入玉からの点数勝負となった。大幅に予定時間を超える熱戦となったが、最後は点数が足りないと判断した禰保さんが潔く投了。

初日から厳しい戦いが繰り広げられ、ベスト4は山口直哉さん(東関東)─横山大樹さん(朝日アマ名人)、森村賢平さん(前アマ王将)─小山怜央さん(北関東)と、ビッグネームが出揃った。

amaousho2018_05.jpg

2日目は将棋会館地下の銀河スタジオに場所を移して行われる。山口さんと横山さんの対戦は相掛かりに。山口さんは8年前にアマ王将戦で優勝経験がある。横山さんは数々のアマタイトルを獲得しているが、意外にもアマ王将戦では3位に一度入ったのみで優勝はまだない。

【第1図 △7二玉まで】

横山さんが優位に立ったが、山口さんがうまい勝負手を連発して逆転に成功。図は先手が勝ちになっている。ここで山口さんは秒読みの中▲8六香と指そうとしたが、ギリギリで▲6一角を着手。勝ちを読み切ったつもりで5手先の手を指そうとしてしまったそうだ。▲6一角からは△8二玉▲8三角成△同玉▲8六香△8五歩▲同香△8四歩▲6一馬以下先手の勝ち。

【第2図 ▲6七金まで】

森村さんは昨年の、小山さんは一昨年のアマ王将。両者は昨年もこの準決勝で激突している。相穴熊で森村さんが優勢の時間が長かったが、小山さんのすさまじい粘りで戦いが終わらない。図はすでに177手目の局面だ。

実戦は素直に△6七同角成としたため、▲7三角△9三玉▲7四銀成と押さえて寄り筋に入った。代えて△9五玉▲5七金△8六玉と根性の粘りを見せれば後手玉は捕まらず、点数勝負は先手に分がありそうだが、まだ100手以上続いていただろう。

amaousho2018_06.jpg

amaousho2018_07.jpg

決勝は森村さんの石田流からお互いに美濃囲いへ。森村さんが銀冠を完成する途中で果敢に動いて戦いが始まった。

【第3図 △7七歩成まで】

山口さんは自信ありと見ていたが、ここで▲6一竜が好手。△4三銀に▲7三歩でと金を作り先手の壁を削りにいく。形勢は際どく、以下も難しい終盤戦が続いたが、最後は自玉の不詰みを読み切った森村さんが制勝。大会史上4人目の連覇を成し遂げた。

森村さんは「苦しい将棋が多く、連覇は運が良かったとしか。今年の銀河戦は2回戦で負けてしまったので、次はもっと勝ちたい」と話した。

amaousho2018_08.jpg

アマ王将戦の模様は準決勝第1局(山口直哉さん─横山大樹さん)が2019年1月26日(土)の20時~。準決勝第2局(森村賢平さん─小山怜央さん)が2月23日(土)20時~。決勝戦が3月30日(土)20時~に囲碁・将棋チャンネルにて放映される。

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

このライターの記事一覧

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています